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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
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英語の発音指導は、どこまで直せばいいのか

英語教育ニュースレター Vol.15

生徒の発音は、どこから直せばいいのか。1995年の研究では、訛りが強いと評価された英語が、聞き手にはきちんと書き取られていました。訛りの強さと、聞き取れるかどうかは別ものです。だから直すのは、相手が書き取れなかった語だけでよい。その手順と、明日使える帯活動2本・教室英語4本をまとめました。

監修:原田高志(原田英語.com)

08.24.2026 Vol.15

おはようございます。

今日は、生徒の発音をどこまで直すかの話です。

直さなくていい、という話ではありません。直す場所の選び方を変える話です。「母語話者の音に近づける」をやめて、「相手が聞き取れたかどうか」で選ぶと、直す場所は数個に絞れます。

根拠になる1995年の研究と、明日そのまま使える手順を並べました。

TODAY'S PICK

イギリスも、小学校から中学校への引き継ぎでつまずいていました

British Council『Language Trends England 2026』(2026年7月24日公開)

ブリティッシュ・カウンシルが、イングランドの語学教育について毎年出している調査の2026年版です。小学校・中等学校・私立校あわせて1,000校を超える学校の教員に聞いています。24回目の調査です。

イングランドの小学校は、フランス語・スペイン語・ドイツ語などから、どれを教えるかを学校ごとに決めます。日本のように「全国どこでも英語」ではありません。

そのため中等学校の1年生には、別々の言語をやってきた生徒が集まります。目を引く数字が2つ出ています。

  • 小学校でやった言語ごとにクラスを分けられない … 中等学校の7割超
  • 生徒全員が、小学校でやった言語をそのまま続けられる … 公立の中等学校のわずか2%

つまり、ほとんどの生徒は中等学校に入った時点で、別の言語を一から始め直しています。小学校の側も、半数以上が「中等学校と語学のことで連絡を取っていない」と答えました。

ほかにも動きがあります。中等教育修了時の試験(GCSE)で選ばれる言語は、スペイン語がフランス語を抜いて最多になりました。授業でAIを使っているのは、公立校より私立校のほうが多い、とも報告されています。

日本の中学1年生の4月と、同じことが起きています。小学校で英語をやってきたはずなのに、何をどこまでやったかが生徒によって違う。だから結局、アルファベットから始め直すことになります。

イギリスはやってきた言語がばらつき、日本はどこまで進んだかがばらつく。形は違いますが、詰まっている場所は同じです。

4月にできることは1つあります。アンケートで「小学校で何をやりましたか」と聞くのをやめることです。

かわりに、15分だけ、実際に英語を書かせて、言わせてください。知っている単語を、書けるだけ書かせる。言える挨拶を、全部言わせる。

その紙を取っておけば、来年の担当が誰になっても、そのまま渡せます。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

通じたかどうかを、生徒自身に確かめさせる2本です。どちらも黒板だけでできます。

聞き取れた語だけを書き取る、ペアの5分

対象 中1〜高3 時間 5分 準備 黒板のみ

  1. 教科書から1文を選ばせる。8語から12語くらいのものがよい
  2. ペアの片方が、相手に見せずにその1文を読む。2回まで
  3. 聞くほうは、聞き取れた語だけを書く。分からなかったところは空けたままにさせる
  4. 紙を見せ合い、空いていた場所を教科書で確かめる。役を交代してもう一度
  • 💡 空いた場所が、そのペアで直す場所です。教師が全部の音を直すより数が絞れます。読み手にとっては、自分の英語が相手に届いたかどうかが、紙の上に見えます。

1文の中で、強く読む語を1つだけ決める

対象 中2〜高3 時間 5分 準備 黒板のみ

  1. 黒板に1文を書く。I didn't say she took my bag. のような、短くて語数のある文がよい
  2. 強く読む語を1つだけ選ばせ、その語に丸を付けさせる
  3. 選んだ語を強くして、ペアの相手に読む。相手は、どの語が強かったかを当てる
  4. 同じ文で丸の位置を変えて、意味がどう変わるかを日本語で言わせる
  • 💡 どの語を強く読むかで、伝わる中身が変わります。音を1つずつ直す前に、どの語を強く読むかを決めさせるほうが、相手には早く届きます。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

発音を直すときの4本です。自信を折らずに、直す場所だけを名指しします。

通じたことを、まず本人に返すとき

I understood every word. That was clear.

全部聞き取れました。はっきりしていましたよ。

通じたかどうかは、話した本人には分かりません。聞き手だけが言えます。直す前に、届いた事実を先に渡します。

直したいが、自信を折りたくないとき

I understood you. Let's make one word clearer.

言いたいことは分かりました。1語だけ、はっきりさせてみましょう。

「通じた」と「直す」を1文につなげます。直す対象を1語に絞ると、生徒はその場でやり直せます。

聞き取れなかったとき

Say that again a little more slowly, and look at me.

もう一度、少しゆっくり言ってください。こちらを見て。

「発音が違う」と言わずに、条件だけを変えさせます。速さと口の向きを変えるだけで通じることが、よくあります。

直す場所を、生徒自身に決めさせるとき

Choose one word you want to say better, and practise only that one.

うまく言いたい語を1つ選んで、それだけ練習してください。

全部を直させると、どれも直りません。選ばせると、その1語は次の授業でも本人が覚えています。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けEdcafe AI

授業で使う教材をAIで作る、教師向けの道具箱です。小テスト、単語カード、読解の課題、スライド、指導案、生徒と話すチャットボット、記述の採点まで作れます。無料のプランがあり、月100回までの生成、チャットボット3つ、採点ツール3つ、1つあたり40人までが使えます(料金ページ)。

使いどころ:🎓 発音の授業なら、チャットボットに「生徒の英文を、直しすぎずに返す係」をさせてください。指示文はこの2行で足ります。①まず、送られた英文をそのまま書き写す(勝手に直さない)②そのうえで、直す語は1つだけ選び、理由を1文で書く直す語を1つに縛るところが、いちばん大事です。全部直させると、返ってくる文が長くなり、生徒が読みません。

生徒向けMemrise

語学学習のアプリです。母語話者が実際に話している短い動画が入っていて、教科書の吹き込みとは違う速さと訛りで同じ表現を聞けます。AIを相手にした話す練習の機能もあります。無料で始められ、有料プランで機能が増えます。150以上の言語に対応しています。

使いどころ:🎓 生徒には「意味が分かる表現」を選ばせて、その動画だけ見せてください。知らない表現で聞き取れないのは当たり前で、練習になりません。知っている表現が、速く読まれると別の音に聞こえる。そこを体験させるのが目的です。1日3本、5分で十分です。

NEWS FLASH

今日のニュース

教室のまわりで動いたこと3本です。

JAPAN · 08.21

AI英単語学習「うぐ単」ベータ版が無料公開。英検準1〜5級の約5,000語

教育測定研究所(EduLabグループ)が、AIを使った英単語学習「うぐ単」のベータ版を公開しました。扱うのは英検準1級から5級までの約5,000語です。ベータ期間中は、UGUIS.AIの無料会員登録で使えます。特徴は出題の選び方で、AIが「すでに知っていると推測される単語」を候補から外し、いま学べば定着しやすい単語を優先して出します。1回10問で、数分で終わります。教室では、単語テストの範囲を配る前に「もう知っている語」を各自で外させる使い方ができます。

JAPAN · 08.20

東京書籍の「教科書AIワカル」が、キッズデザイン賞を受賞

教科書に沿って学びながら、分からないところを生成AIに何度でも質問できるサービスです。第20回キッズデザイン賞の感性・創造性育成部門を受賞しました。中学校英語の教科書「NEW HORIZON」(令和7年度版)と、中学校数学の教科書に対応しています。作りとして書かれているのは、AIがすぐに答えを出すのではなく、対話をしながら生徒が自分で理解にたどり着けるようにするという点です。家で生徒がAIを使うのを、止めることはできません。だとすれば、答えをすぐには渡さない道具が出てきたことは、教室にとっても悪い話ではありません。

JAPAN · 08.03

英検の「6級」「7級」、導入を延期

日本英語検定協会が7月31日、新設を予定していた6級・7級の導入を延期すると発表しました。2026年度第3回検定から、小学生をおもな対象として始める予定でした。理由として挙げられているのは、中央教育審議会で次期学習指導要領の審議が進んでいることです。小学校段階を含む外国語教育の目標や内容が議論されており、6級・7級のレベル設定や出題内容がそこに関わるためだとしています。新しい導入時期、問題形式、検定料は、審議の動きを見て決め直すとのことです。小学生に受験を勧めていた学校は、保護者への伝え方をそろえ直しておく必要があります。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

世界の英語を聞かせる。自分の英語を直す。その2つに使える無料ツールを4つ。

IDEA(International Dialects of English Archive)

世界中の英語の訛りを録音で集めた資料庫です。1998年にポール・マイヤーが始め、135の国と地域から約1,800の音声、170時間を超える録音が入っています。話し手はまず決められた文章を読み、そのあと4分ほど自由に話します。読む文章が決まっているぶん、訛りの違いを取り出して聞けます。無料で公開されています。

Speech Accent Archive

ジョージ・メイソン大学が公開している音声の集まりです。英語を母語とする人も、しない人も、まったく同じ段落を読みます。読んだ音はていねいに書き起こされていて、聞きながら文字で確かめられます。クリエイティブ・コモンズのライセンスで公開されており、非営利なら出典を示して使えます。

Accent Bias in Britain

ロンドン大学クイーンメアリー校とヨーク大学が、イギリスの研究助成(UKRI)を受けて行った研究の公開サイトです。5つの訛りで行われた模擬面接を、1,000人を超える一般の人に評価させました。結果はサイト上で図として見られます。訛りが評価を左右するかどうかを、生徒と考える材料になります。

BBC Learning English|Pronunciation

BBCの英語学習サイトの、発音を扱う場所です。Tim's Pronunciation Workshop は全75回で、語と語がつながる音、消える音、変わる音を1回1つずつ扱います。The Sounds of English は、英語の子音と母音を1つずつ映像で見せる案内です。無料で、そのまま授業で流せます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

英語の音が動いた話を2つ。授業の余り3分で話せます。

name が「ナーメ」だった時代があります

英語のつづりと発音がずれているのは、1400年から1700年ごろに起きた母音の大移動のせいです。大母音推移(Great Vowel Shift)と呼ばれています。

動いたのは長い母音です。name はもともと [aː]、いまは [eɪ]。time は [iː] から [aɪ] へ、house は [uː] から [aʊ] へ移りました。ローマ字読みに近い音から、いまの音へ動いたことになります。

困ったのは、つづりのほうです。英語のつづりの標準化は15世紀から16世紀に始まりました。音が動いている最中に、書き方をそろえる作業が進んだことになります。英語のつづりが発音とこれほど食い違っている最大の理由が、この母音の移動です(Wikipedia|Great Vowel Shift)。

「なぜ name はナーメと読まないのか」と聞かれたら、「もとはナーメに近い音だった。音が動いて、つづりが取り残された」と答えられます。つづりを覚えられない生徒には、覚えにくいのは本人のせいではない、と言える話でもあります。

動画で見る

大母音推移がなぜ英語のつづりを狂わせたかを解説 (RobWords) 英語史を専門に扱う人気チャンネルです。英語の解説で、日本語字幕はありません。

r を発音しないイギリス英語は、あとから生まれました

car や park の r を、イギリス英語では読まず、アメリカ英語では読む。学校で必ず出てくる違いです。古いのは、r を読むほうです。

母音のあとの r が落ちる例は、15世紀半ばのイングランドの文書にぽつぽつ現れます。広まるのはずっとあとで、1770年代にはロンドン周辺の改まった話し方でも r を落とす形がふつうになりつつありました。19世紀の初めには、イギリス南部の標準的な発音は完全に r を落とす形になっています。アメリカの多くの地域は、この変化が届かず元の r を残しましたWikipedia|Rhoticity in English)。

生徒には、この順番をそのまま話してください。アメリカ英語の r は、新しい訛りではなく古い形です。どちらが正しいかではなく、どちらも通じます。

QUOTE

今日の名言

英語は誰のものか、を1文で書いた作家がいます

“I feel that the English language will be able to carry the weight of my African experience. But it will have to be a new English, still in full communion with its ancestral home but altered to suit new African surroundings.”

英語は、私のアフリカでの経験の重さを運べると思う。ただしそれは新しい英語でなければならない。生まれた土地とつながったまま、新しいアフリカの環境に合うよう作り変えられた英語だ。

チヌア・アチェベ(ナイジェリアの作家、1930-2013)。英語で書くことについて論じたエッセイより

アチェベは英語で小説を書いた作家です。アフリカの作家が英語で書くことをめぐる議論のなかで、こう書きました。英語は借りているだけの言葉ではなく、使う側に合わせて形を変えてよい。生徒が「自分の英語は訛っている」と言ったときに、返せる一文です。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

訛りが強いと評価された英語が、正確に書き取られていました

発音の指導は、母語話者の音に近づけることを目標にしてきました。教科書の吹き込みを真似させ、違うところを直す。生徒のほうも「発音が悪いから通じない」と言います。

この考え方には根拠があります。音を正しく出せば伝わる。だから正しい音を教える。順番として自然です。

では、訛りの強さと、相手が聞き取れるかどうかは、同じものなのでしょうか。

ところが

1995年、Murray J. Munro と Tracey M. Derwing が Language Learning 誌(45巻73〜97ページ)で報告しました。英語を母語とする聞き手に、英語を第二言語として話す人たちの録音を聞かせ、同じ録音について3つのことをさせました

  • 聞こえたとおりに書き取らせる(どれだけ正しく取れたか)
  • 訛りの強さを、段階で評価させる(どれくらい母語話者と違って聞こえるか)
  • 分かりやすさを、段階で評価させる(聞き取るのにどれくらい苦労したか)

結果はこうです。この3つは互いに関係していましたが、同じものではありませんでした。②で「訛りが強い」と評価された英語が、①ではきちんと書き取られている。そういう例が出てきます。訛りが強いことは、聞き取れないことを意味しませんでした。

2005年、John Levis が TESOL Quarterly 誌で「母語話者らしさより、通じることを優先しよう」と書きました。2026年、同じ雑誌に Dustin Crowther のレビューが載ります。その主張がその後どこまで研究され、どこまで教室で実行されたかを整理したものです。同じ問いが、20年たっても研究され続けています。

⚠ 1995年の研究は、限られた人数の聞き手と話し手を調べたものです。日本の中高生を対象にしたものではありません。分かっているのは、訛りの強さと聞き取れるかどうかを、別々に測る必要がある、というところまでです。

この結果は、発音を直さなくてよい、という意味ではありません。直す順番が変わるという意味です。

母語話者の音を目標にすると、直す場所は無限に出てきます。全部の音が少しずつ違うからです。聞き取れたかどうかを目標にすると、直す場所は数個に絞れます。相手が書き取れなかった語だけが、直す対象になります。

今日の帯活動の1本目(聞き取れた語だけを書き取る)が、そのまま道具になります。空いたところを直す。埋まったところは、訛りがあっても触りません。

明日の授業でやること|通じなかった場所だけ直す

  1. 生徒に1文を読ませ、聞き手役が聞き取れた語だけを書く。教師が読み手になってもよい
  2. 書き取れなかった語だけを丸で囲む。訛りが気になっても、書き取れた語には触らない
  3. 丸が付いた語を、教師が1回だけ読み、生徒がそのまま繰り返す。説明は付けない
  4. 同じ文をもう一度読ませ、丸が減ったかどうかだけを確かめる

この号で触れたリンク

明日やることは1つです。生徒に1文読ませて、聞き手が書き取れなかった語だけを直してください。書き取れた語は、訛っていても直さない。

そこで出てくる語は、たぶん2つか3つです。全部直そうとするより、その2つか3つのほうが身につきます。

またあした。

Vol.15 08.24.2026

よくある質問

発音は直さなくていい、という話ですか。

違います。直す順番の話です。1995年の研究が示したのは、訛りの強さ聞き取れるかどうかが別々の物差しだということです。全部の音を母語話者に近づけるより、相手が聞き取れなかった場所から直すほうが早い、という順番になります。

紹介されている研究は、日本の生徒を調べたものですか。

違います。英語を母語とする聞き手が、第二言語として英語を話す人の録音を聞いて評価した研究です。日本の中高生を対象にしたものではないので、そのまま当てはめることはできません。