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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
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英語のインプットとアウトプット|口に出さない組が書けた研究

英語教育ニュースレター Vol.38

中3でCEFR A1レベル相当以上に届いた生徒は54.6%。ただし、このうち22.0ポイントは英語担当の先生が判断した生徒です。令和7年度の調査を、内訳から読み直します。号の最後は、その形を一度も口に出さなかった組が、書くテストで練習した組と並んだ1993年の研究。説明のあと、言わせる前にはさむ5問の作り方まで書きました。帯活動2本、教室英語4本、無料の素材4つつきの第38号です。

監修:原田高志(原田英語.com)

今日はインプットとアウトプットの順番の話です。その文法の形を一度も口に出さなかった学習者が、書くテストで練習した組と並んだ研究があります。文部科学省の調査の数字も、内訳まで開けてみます。第38号です。

09.16.2026 Vol.38

おはようございます。文部科学省の「英語教育実施状況調査」を、内訳まで開けるところから始めます。中3でCEFR A1レベル相当以上に届いた生徒は54.6%。このうち32.6ポイントは英検などを実際に取得した生徒で、残りの22.0ポイントは英語の先生が判断した生徒です。

最後の「常識がひっくり返る話」は、その文法の形を一度も口に出さなかった組が、書くテストで練習した組と並んだ研究です。帯活動2本、教室英語4本、無料の素材4つをつけました。第38号です。

TODAY'S PICK

中3の54.6%は、何を数えた54.6%か

文部科学省「令和7年度『英語教育実施状況調査』の結果について」(調査実施基準日は令和8年2月1日)

中学3年生でCEFR A1レベル相当以上の英語力を持つ生徒は54.6%でした。前の年は52.4%です。国の目標は令和9年度までに6割。数字だけを見れば、あと5.4ポイントです。

内訳を開くと、見え方が変わります。英検などを実際に取得している生徒は32.6%。残りの22.0%は、英語担当の先生が「A1レベル相当の力はある」と判断した生徒です。前の年は取得27.8%、判断24.5%でした。取得が4.8ポイント増え、判断が2.5ポイント減っています。

判断の根拠は、複数回答で聞かれています。いちばん多いのは2技能または3技能を測る試験のスコアで52.9%。次がCAN-DOリストに基づく自校のパフォーマンステストで49.6%。公式な記録としては認定されない試験のスコアが41.2%、MEXCBTのCBT問題の解答状況が2.5%、AIツール等による判定が2.0%、その他が15.3%でした。

自分の学校の数字を出すとき、先に決めることが1つあります。何を根拠に「A1レベル相当」と判断するかです。

全国でいちばん多く使われている校内の根拠は、CAN-DOリストに基づく自校のパフォーマンステスト(49.6%)でした。CAN-DOリストを整えることが、そのまま数字の中身になります。外部検定の受験者が少ない学校ほど、ここが効きます。

高校の数字も、同じ調査に出ています。高3でA2レベル相当以上が52.4%(目標6割)、B1レベル相当以上が23.9%(目標3割)。中学校の英語担当教師でCEFR B2レベル相当以上は58.5%で、前の年の46.2%から上がりました。ただし令和7年度からは特別支援学級と、特別支援学校の中学部・高等部が調査対象に加わり、調査実施基準日も12月1日から2月1日に変わっています。前の年と並べて読むときは、この2つを頭に置いてください。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

黒板だけで回る2本。どちらも、答えを英語で言わせません

2つの場面から、指で選ぶ

対象 中1〜高2 時間 5分 準備 黒板のみ

  1. 黒板の左に1、右に2と書く。その下に日本語で場面を2つ書く。1は「男の子が女の子を追いかけた」、2は「女の子が男の子を追いかけた」
  2. 先生が英文を1つ読む。生徒は声を出さず、指で1か2を示す
  3. 全員の指が上がってから、正解だけを言う。理由は聞かない
  4. 同じ形で5文。5文目だけ、そう思った理由を1人に日本語で聞く
  • 💡 声に出させないので、迷った生徒が一目で分かります。指が遅れた生徒の数だけ、その形をもう一度読んでください。

同じ語、違う順番

対象 中2〜高3 時間 3分 準備 黒板のみ

  1. 使う語がまったく同じ2文を、黒板に並べて書く。The dog chased the cat. と The dog was chased by the cat.
  2. 先生がどちらか1文を読む。生徒は追いかけたほうの動物を、dog か cat の1語だけで答える
  3. 5回くり返す。3回目から読む速さを上げる
  4. 最後は生徒が読み手になり、隣の人に同じことをする
  • 💡 日本語に訳させないこと。訳し始めた生徒は、語順ではなく単語の並びで当てにいきます。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

英語で答えさせる前に使う4本

英文を聞かせたあと、まだ話させたくないとき

Don't answer in English yet. Just point.

まだ英語で答えなくていいです。指で示してください。

答え方を軽くすると、聞くほうに力が残ります。英語で答えさせるのは、意味が取れたと分かってからで間に合います。

2つの場面から選ばせるとき

Which one happened first? One or two.

先に起きたのはどっちですか。1か2で。

選択肢を2つに絞ると、当てずっぽうでも半分は当たります。だから同じ形を5回続けて聞いてください。

聞き取れた語が少なくて止まっている生徒に

You only need one word to answer this.

この問題は、1語分かれば答えられます。

全部聞き取ろうとして固まる生徒がいます。聞く範囲を先に狭めてあげると、手が動きます。

語順で意味が変わる文を出したとき

Same words, different order. Who is doing it?

語は同じで、順番だけ違います。しているのは誰ですか。

単語をヒントに意味を当てる癖を、その場で止められます。順番を見ないと答えられない問い方にするのがこつです。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けEdpuzzle

動画に設問を差し込んで、生徒に配る道具です。YouTubeの動画でも、自分で撮った動画でも使えます。生徒が答えるまで動画が止まるので、聞き流したまま先へ進むことがなくなります。Question Generator という機能があり、動画の中身から設問の案を出します。先生は無料で使い始められますが、保存できる教材の数に上限があるので、終わった教材を消しながら回してください。

使いどころ:🎓 Question Generator が出した設問を、そのまま使わないでください。英語で答えさせる設問が並びます。2択に書き換えて「この人が最初にしたことは? 1か2」の形にすると、今日の帯活動と同じ使い方ができます。書き換えるのは3問で十分です。

生徒向けYouTubeの自動字幕

YouTubeの字幕は、音声認識が作っています。日本語と英語を含む67の言語に対応しています。Google自身が、機械学習で作るので品質にばらつきが出ると書いています。発音、なまり、方言、雑音で間違えます。だからこそ、答え合わせの道具として使えます。字幕を消して1回、出してもう1回。生徒が自分で確かめられます。

使いどころ:🎓 生徒に渡す手順は3つです。①字幕を消して1回見る ②何の話だったかを日本語で1行書く ③字幕を出してもう一度見て、その1行を直す。宿題に出すなら、直した跡が残る②と③をノートに書かせてください。

NEWS FLASH

今日のニュース

次の学習指導要領と、9月の締め切り3本

JAPAN · 08.04

中学校の文法事項を絞り、国が語彙のリストを作る

中央教育審議会の外国語ワーキンググループが、取りまとめ案を出しました。いまの語彙数の目安は、小学校600〜700語、中学校1,600〜1,800語、高校1,800〜2,500語です。取りまとめ案は、複数のコーパスを参照して国が基盤語彙リストを作り、教科書会社にそのリストの語を使うよう推奨する、としています。指導すべき語彙数は精選も含めて見直します。中学校の文法事項は、使用頻度の高いものを本文で明示して焦点を絞ります。中学校の「社会的な話題」は「身近な社会的な話題」に変わります。教室では、どの語が残りそうかを考えるより、同じ語に何回出会わせたかを数えるほうが先です。

JAPAN · 08.06

英検のデジタル証明書が、合否にかかわらず無償になります

日本英語検定協会が、2026年9月中旬以降、「英検デジタル証明書」の無償発行の対象を広げると発表しました。発表文には「すべての方が、合否にかかわらず、デジタル合格証明書またはデジタル英検CSEスコア証明書を無償で取得できるようになります」とあります。対象は2018年度以降の受験者です。スマートフォンやパソコンの画面で表示・提出でき、大学の出願でも使えます。3年生の面談では、紙の証明書を探させる前にこの話をしてください。

UK · 09.23締切

ブリティッシュ・カウンシルの無料研修、9月23日で申し込みが終わります

TeachingEnglish のオンライン研修が、無料で受けられます。9月23日で申し込みが締め切られるのは、Communicative Tasks、Understanding Language Systems、Teaching English in Primary、Integrating Digital Technologies、Inclusive Classrooms、How to Teach Pronunciation、Gender in Language Education の7つです。How to Adapt Resources と Teaching English to Refugees and Displaced Learners は、2027年3月24日まで申し込めます。今日の号と重ねるなら、Understanding Language Systems が近いところにあります。

動画で見る

リスニングの指導について話す、教師向けの動画 (British Council | TeachingEnglish) 上の研修と同じ、ブリティッシュ・カウンシルの公式チャンネルにあります。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「英語を聞いて、意味が取れたかをその場で確かめる無料の素材」

Games to Learn English

絵と音だけで答えさせる小さなゲームが並んでいます。Monster Vocab は、英語を聞いて正しい絵をクリックする形です。Numbers は、聞いた数字のところへキャラクターを動かします。書かせないので、意味が取れたかどうかだけが見えます。教室のスクリーンに映して、全員で1問ずつ進める使い方が向いています。

ESL Fast

やさしい英語の会話と短い読み物に、音声が付いています。サイトには「2,500本以上の会話に音声がある」と書かれていて、無料です。1本が短いので、授業の始めに1本聞かせて、内容を2択で確かめる形が作れます。レベルが段階で分かれているので、同じ話題のまま難しさだけを上げられます。

Learning Chocolate

絵と音で語の意味を確かめるサイトです。月の名前、天気、体の部分、着るもの。まとまりごとに並んでいます。聞いて絵を選ぶ、絵を見て綴りを打つ、という順で進みます。小学校で耳から入れてきた中1に、文字を足していく場面で使えます。

Lingua.com

短い英文と、内容を確かめる選択問題が組になっています。A1からC2までレベル別に並び、無料で読めるものと有料のものが混ざっています。1本ずつPDFで落とせるので、印刷してそのまま配れます。家で読ませて、次の授業の最初に選択問題だけをやり直す形が作れます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

授業の余り3分で話せる2本

test は、金属を溶かす素焼きの皿でした

test が英語に入ったのは14世紀の終わりごろです。もとは古フランス語の test で、さらにさかのぼるとラテン語の testum。意味は「素焼きの鍋」でした。金属の純度を調べるとき、金属を入れて溶かす小さな皿のことです。

そこから「正しいかどうかを調べる」という意味が出ます。1590年代のことでした。学力を測るという意味で使われ出したのは、1905年ごろ。500年あまりかけて、皿から答案用紙まで来ています。

いまの英語では put it to the test で「試してみる」。stand the test of time なら「時間の試練に耐える」。どちらの言い方にも、溶かして中身を見るあの皿が残っています。

answer は、もともと「誓って言い返す」でした

answer は古英語の andswaru です。and- は「〜に対して」、swaru は swerian(誓う)から来ています。つなげると「相手に対して、誓って言うこと」。もとは、かけられた疑いに誓って言い返すことだったと考えられています。

「問題の答え」という意味になるのは1300年ごろです。それまで、答えるとは誰かに言い返すことでした。

この名残は、いまの英語にもあります。answer for なら「〜の責任を取る」。生徒が黒板の前で言う answer とは、ずいぶん距離があります。

QUOTE

今日の名言

耳が2つで、口が1つ

“The reason why we have two ears and only one mouth is that we may listen the more and talk the less.”

耳が2つで口が1つなのは、もっと聞き、あまり話さないようにするためだ。

ゼノン(ストア派の創始者)。ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』第7巻23節より。英訳はR・D・ヒックス

生徒に英語を話させる時間を増やそうとすると、聞かせる時間が削られます。どちらを先に置くかで、結果が変わった研究があります。次がその話です。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

その形を一度も口に出さなかった組が、書くテストで並びました

使わせないと使えるようになりません。英語の授業でいちばん広く共有されている考え方だと思います。文法を説明したら、口に出させる。ペアで言わせる。書かせる。出した回数だけ、その形が身につく。

だから授業の後半は、たいてい出力の時間になります。前半で説明し、後半で言わせる。教科書の練習問題も、ほとんどが書かせる形か、言わせる形です。

聞くだけ、読むだけの活動は、その前に置かれます。本番の前の準備という位置づけです。

ところが

1991年の春、イリノイ大学でスペイン語を学ぶ2年目の3クラスを比べた研究があります。Bill VanPatten と Teresa Cadierno の報告で、The Modern Language Journal 77巻1号45〜57ページに載りました。最後まで残ったのは17人、17人、15人です。扱ったのは、語順が入れ替わるスペイン語の目的語の代名詞でした。

伝統型は、説明のあと練習して口に出します。入力処理型は、説明のあと聞いたり読んだりして、その文がどういう意味かを答えたり、内容に「そう思う」「そう思わない」で答えたりするだけ。この組は、その形を一度も口に出していません。もう1組は何もしません。

聞いて意味を取るテストの素点の平均は、入力処理型9.4、無指導4.6、伝統型4.5。事前テストは入力処理型2.5、無指導2.6、伝統型1.9でした。伝統型と無指導のあいだに差はありません(p=.96)。口に出す練習をしても、聞いて意味を取る力は上がっていません。

書かせるテストは、伝統型9.3、入力処理型8.3、無指導4.2。統計上の差は伝統型と無指導のあいだにしか出ず(p=.0167)、伝統型と入力処理型のあいだには差がありませんでした

出力の時間を削ってください、という話ではありません。2013年のメタ分析は、30本の論文にある35の比較を集めて、理解中心の指導と産出中心の指導はどちらも大きな効果があったとまとめています(Shintani・Li・Ellis、Language Learning 63巻2号296〜329ページ)。しかも時間を置いて測ると、産出のテストでは産出中心の指導のほうが上でした。

変えられるのは順番です。説明のあと、いきなり言わせない。その形が分かったかどうかだけを確かめる問いを5つはさむ。当たった生徒から口に出す練習へ進める。当たらなかった生徒には、もう5問聞かせる。1993年の研究で入力処理型の組がしていたのは、これだけです。

明日の授業でやること|明日の授業で、説明のあとに入れる4手

  1. 今日の形を1つ決める。その形が分かると意味が変わる2文を黒板に書く。The dog chased the cat. と The dog was chased by the cat.
  2. 先生がどちらかを読み、生徒は追いかけたほうの動物を1語で答える。これを5回
  3. 5回中4回以上当たった生徒から、口に出す練習に進ませる
  4. 当たらなかった生徒には、同じ形をもう5問聞かせてから進ませる

この号で触れたリンク

今日の号で数えてほしいものが1つあります。説明が終わってから、生徒が最初に口を開くまでの時間です。そのあいだに、意味が取れたかを確かめる問いが何問入っているか。0問なら、明日は5問はさんでみてください。

またあした。

Vol.38 09.16.2026

よくある質問

英語のインプットとアウトプットは、どちらを増やせばいいのですか。

どちらか一方に決める話ではありません。2013年のメタ分析(Shintani・Li・Ellis、Language Learning 63巻2号296〜329ページ)は、30本の論文にある35の比較を集めて、理解中心の指導も産出中心の指導も、どちらも大きな効果があったと報告しています。時間を置いてから測ると、産出のテストでは産出中心の指導のほうが上でした。変えるのは量ではなく順番です。口に出させる前に、形が分かったかを確かめる問いを5つはさむ。まずはこれだけで足ります。

聞いて2つから選ばせる活動は、当てずっぽうで当たってしまいませんか。

2択なら半分は当たります。だから1問で判断しないでください。同じ形を5回続けて出し、4回以上当たった生徒だけを次に進ませます。でたらめに選んで5回中4回以上当たる確率は18.75%です。残りの生徒には、もう5問。この数え方なら、分かっている生徒と当てずっぽうの生徒を分けられます。

自分の学校のCEFR A1レベル相当の割合は、どう出せばいいのですか。

令和7年度の調査では、全国の54.6%のうち32.6ポイントが外部検定の取得者で、22.0ポイントが英語担当教師の判断でした。判断の根拠でいちばん多かったのは2技能または3技能を測る試験のスコア(52.9%)、次がCAN-DOリストに基づく自校のパフォーマンステスト(49.6%)です。外部検定の受験者が少ない学校ほど、CAN-DOリストと校内のパフォーマンステストを先に整えてください。