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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
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テストの返却は、点数かコメントか|1988年の研究

英語教育ニュースレター Vol.18

答案に点数を書き、その横にコメントも添える。多くの教室でやってきた返し方です。1988年にイスラエルで行われた実験では、コメントだけを返した組がいちばん高い結果を出しました。帯活動2本、そのまま使える教室英語4本、無料で手に入る公式の過去問4選つきの第18号です。

監修:原田高志(原田英語.com)

08.27.2026 Vol.18

おはようございます。

今日は答案の返し方の話です。点数を書き、その横にコメントも添える。ていねいな返し方だとされてきました。

1988年に、点数だけ・コメントだけ・その両方の3つをくらべた実験があります。いちばん高かったのは、コメントだけの組でした。最後の「常識がひっくり返る話」に、数字と、明日そのまま使える手順まで書いてあります。

TODAY'S PICK

英語を学ぶ最大の目的、2番目に多かった答えは「特にない」でした

ICT教育ニュース(2026年8月26日)。ラグザスが運営する Mirai Bridge の調査

ラグザスが運営する Mirai Bridge が、「AI時代における英語学習の目的や海外就労に関する意識調査」の結果を公表しました。答えたのは高校生・大学生300人です。

「将来、海外で働いてみたいと思うか」には、47.7%が前向きに答えました。

目を引くのは、そのあとの設問です。AIが広まったいま、英語を学ぶ最大の目的は何かを聞いた結果が、こう並びました。

  • ①就職・転職 … 20.7%
  • ②特にない … 15.7%
  • ③国際的な仕事 … 15.0%
  • ④海外旅行 … 14.3%
  • ⑤外国人との交流 … 12.7%
  • ⑥TOEIC・資格 … 9.3%
  • ⑦趣味 … 6.7%
  • ⑧留学 … 5.7%

2番目に多かったのが「特にない」です。6人か7人に1人が、そう答えています。

これを「意欲が低い」と読むと、打つ手がありません。目的は、まだ決まっていないだけだと読むほうが実際に近いはずです。就職も留学も、高校生には遠い話です。

目的が決まっていない生徒に効くのは、近い目的です。今週の授業で言えるようになる1文。来月の英検で受ける1つの級。次の教科書の1ページ。

遠い目的を語る時間を減らして、近い目的を1つ渡す。今日の帯活動2本は、どちらもその形にしてあります。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

点を付けずに返す2本です。どちらも準備は要りません。

よく出た間違いを3つだけ黒板に出す

対象 中1〜高3 時間 5分 準備 準備なし

  1. 前の授業で書いた英文を、生徒に自分のノートから探させる。30秒
  2. その回に多かった間違いを3つだけ黒板に書く。誰の文かは言わない
  3. 生徒は自分の英文が3つのどれかに当たっていないかを見て、当たっていれば直す。2分
  4. 直した生徒に手を挙げさせ、3つのうちどれだったかだけを言わせる
  • 💡 誰の文かを言わないので、返されるのは間違いの種類だけです。当たっていなかった生徒も、3つを読むあいだに自分の文を読み直します。直した内容は聞かないでください。聞いた瞬間に、答え合わせの時間に戻ります。

隣の英文に、点ではなく一言を書く

対象 中2〜高3 時間 6分 準備 黒板のみ

  1. お題を1つ黒板に書き、3分で英文を3文書かせる
  2. ノートを隣の人と交換し、いちばん良いと思った1文に線を引かせる
  3. その1文の下に、英語で一言だけ書かせる。黒板に I like this word. / This is clear. / This one is easy to read. の3つを出しておく
  4. ノートを返し、書かれた一言を声に出して読ませる
  • 💡 生徒に点を付けさせないのが、この活動のいちばん大事なところです。5点満点で採点させると、書いた本人は数字しか見ません。一言だけなら、どの1文が良かったのかが残ります。

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

答案やノートを返す場面の4本です。点数の話に戻さない言い方を選びました。

点数を書かずに返すとき

There is no score on this one, so read my comment instead.

これには点数を付けていません。かわりにコメントを読んでください。

点数が無いことを先に言わないと、生徒は数字を探して紙をひっくり返します。「かわりに」を付けると、次に見る場所がその場で決まります。

コメントを読んだあと、そのまましまわれそうなとき

Tell me one thing you will change before you write it again.

もう一度書く前に、変えることを1つ言ってください。

コメントを読んだかどうかは、口に出させれば分かります。1つに限ると、全部直せない生徒も答えられます。

間違いの場所だけを渡したいとき

I marked one line, and I want you to find out why.

1行だけ印を付けました。理由は自分で見つけてください。

直し方まで書いて返すと、生徒は写して終わります。場所だけ渡すと、そこで考える時間が生まれます。見つからない生徒には、あとから1語だけ足してください。

生徒どうしで点数を比べ始めたとき

Don't tell me your score, tell me what you fixed.

点数ではなく、直したところを教えてください。

点数の話を止めるより、別の答えを求めるほうが早いです。何度か使うと、返却のあとに出てくる言葉が変わります。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けCoGrader

英作文をルーブリックに沿って採点し、生徒への具体的なコメントまで作るサービスです。AIが出した点数とコメントは、そのままでは生徒に届きません。教師が確認して直したものだけが渡る作りになっています。Google Classroom と繋がり、PDF・DOCX を読み込めます。個人の教師は月100本まで無料です。手書きの答案を撮った画像の読み込みは有料プラン、Canvas や Schoology との連携は学校向けプランの機能です。

使いどころ:🎓 使い方を1つに絞ってください。点数を消して、コメントだけを残す使い方です。出てきたコメントは長いので、1人につき1つだけ残して、あとは削ります。残す1つは「次に何を変えるか」が書いてあるものにしてください。「よく書けています」は残しても何も起きません。紙で集めている学校は、手書きの読み込みが有料プランの機能である点に注意してください。

生徒向けうぐ単(UGUIS.AI)

教育測定研究所が2026年8月1日にベータ版を出した英単語の学習機能です。英検準1級から5級まで、選ばれたおよそ5,000語が対象になっています。覚えて終わりにせず、使えるところまで語彙を定着させることを狙っています。UGUIS.AI に無料で会員登録していれば、追加の料金なしで使えます

使いどころ:🎓 生徒に渡すときは、級を先に決めてください。いま受ける級より1つ下から始めさせます。上の級から始めると、知らない語ばかりが並んで手が止まります。教師の側は、生徒が止まった語を聞いておいて、次の授業の最初の1分でその語だけを扱ってください。アプリの中だけで終わらせないほうが残ります。

NEWS FLASH

今日のニュース

評価と研修にかかわる3本です。

JAPAN · 08.03

全国学力・学習状況調査の分析で、英語は「理由を説明する力」に課題

文部科学省 国立教育政策研究所が2026年8月3日、2026年度の全国学力・学習状況調査の分析結果を公表しました。英語で正答率が低かったのは、「話すこと」の設問19が正答率25.8%・無解答率17.0%、「書くこと」の設問10(2)が正答率28.4%・無解答率14.4%です。指摘されたのは、自分の考えを理由とともに書いたり話したりする力と、学習した表現を実際の場面で使う力でした。国語でも「根拠を示して自分の考えを表現する力」に課題が出ています。教科をまたいで同じところが弱い、ということです。無解答率の高さのほうが気になります。書けないのではなく、書き始められないのだとしたら、打つ手は別のものになります。

JAPAN · 08.25

通訳者の訓練法で英語4技能を鍛える短期講座が、9月と10月にあります

通訳者養成校のインタースクールが、短期講座「通訳者から学ぶ!英語4技能『読・書・聴・話』」を開きます。オンラインは9月27日と10月4日、いずれも9:30〜11:00 と 11:30〜13:00 の2枠。大阪校に通う形もあります。扱う訓練法には、ディクテーション、シャドーイング、リプロダクション、スピーチなどがあります。対象は業務で英語を使う人や、高い英語力を身につけたい人。どれも教室でそのまま帯活動になる訓練法です。自分で受けてみると、生徒に指示を出すときの言葉が短くなります。

JAPAN · 08.26

東京外国語大学と筑波大学が、日本語教師の養成拠点への参画機関を募っています

文部科学省の委託事業として、東京外国語大学と筑波大学が進める「日本語教師養成・研修推進拠点」が、参画機関を広く募集しています。対象は関東・甲信越の1都9県(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬、新潟、山梨、長野)。事業の期間は2028年3月31日までです。大学・日本語教育機関・自治体・民間企業が対象になっています。中学・高校にも、日本語の支援が要る生徒がいます。英語の授業でつまずいているのか、日本語のほうでつまずいているのか。校内で相談できる先を1つ知っておくと、判断が早くなります。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「無料で手に入る、公式の過去問とサンプル問題」。作問と小テストの材料になる4つです。

英検 公式サイト「過去問・試験内容」

日本英語検定協会が、級ごとのページで過去問を無料で公開しています。2級のページに並んでいるのは直近3回分で、2026年度第1回、2025年度第3回、2025年度第2回です。1回分につき、問題冊子・リスニング原稿・リスニング音源(MP3)・解答がそろいます。ダウンロードできるのは本会場と準会場F日程(2〜5級のみ)で実施したぶんです。音源まで無料で付くので、そのまま小テストに使えます。

大学入試センター「過去の試験情報」

大学入学共通テストの正解・実施結果は令和3年度分から、試験問題は直近3年分が、年度ごとに並んでいます。本試験のほかに、追試験・再試験の問題と正解も出ています。この追試験のぶんを使ってください。本試験のほうは、生徒が塾や問題集で先に解いていることがあります。

国立教育政策研究所「全国学力・学習状況調査」

調査問題・正答例・解説資料が、年度ごとに無料で公開されています。令和8年度分は2026年4月23日・24日と5月29日に、報告書と調査結果資料は2026年8月3日に出ました。中学校英語のサンプル問題もあります。いちばん使えるのは「授業アイディア例」です。どの設問で何ができていなかったかと、そこを埋める授業の形が、対にして書かれています。

Cambridge English|Free resources

ケンブリッジ大学英語検定機構が公開している無料の教材です。英語のレベルを短時間で測るオンラインテスト、文法・語彙・リスニングなどの175以上の練習活動、そして無料のサンプルテストと語彙リストが並びます。英検や共通テストとは設問の作り方が違います。同じ技能を別の形で問う問題を1つ混ぜると、生徒が形に慣れきってしまうのを防げます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

教室にまつわる語を2つ。授業の余り3分で話せます。

pupil は、生徒と瞳が同じつづりです

pupil には意味が2つあります。「生徒」と、目の「瞳孔」です。もとは同じラテン語の家族から、男性形と女性形に分かれて、別々の意味で英語に入りました。

「生徒」のほうは、ラテン語の pūpillus(孤児、未成年者)から来ています。もとをたどると pūpus(子ども、男の子)です。

「瞳孔」のほうは、ラテン語の pūpilla。意味は「瞳孔、少女、人形」です。名前の由来は、人の目をのぞきこんだときに映る、小さな自分の姿でした(Wiktionary|pupil)。

人形のように小さな像が見える。だから pūpilla。

生徒に話すときは、目をのぞきこむ話から始めてください。そのあとで「同じ語が、生徒という意味にもなります」と足すと、2つの意味が1つの絵で収まります。辞書を引いて意味が2つ並んでいるのを見た生徒に、その場で返せる話です。

gymnasium は、ドイツ語では高校のことです

gymnasium が英語に入ったのは1590年ごろです。ラテン語の gymnasium、さらにギリシャ語の gymnasion(運動をする公共の場所)から来ています。

もとになった動詞は gymnazein(体を鍛える)。その中に gymnos(裸の)が入っています。つまり、字のとおりに読むと「裸で鍛える」ですOnline Etymology Dictionary|gymnasium)。

古代ギリシャの gymnasion は、体だけの場所ではありませんでした。体と頭の両方を鍛える場でした。そのためドイツ語は15世紀にこの語を取り入れて、「高校」の意味で使っています。英語のほうは運動の意味だけが残りました。

gym という短い形が出てくるのは1871年で、アメリカの学生が使い出した言い方です。

同じ語から出ていて、国によって体育館になり、高校になった。語がどちらの意味を選んだかは、その国が何を大事にしたかで決まっています。

QUOTE

今日の名言

フィードバックの値打ちを、どこで測るか

“The only important thing about feedback is what students do with it.”

フィードバックについて大事なのは、生徒がそれをどう使うかだけです。

ディラン・ウィリアム(教育評価の研究者)。Educational Leadership 誌 第73巻7号(2016年4月)「The Secret of Effective Feedback」より

書いた側ではなく、受け取った側が何をしたかで測る、という言い方です。書くのに10分かけたコメントでも、生徒が読んで終わりなら0です。次に答案を返すとき、返したあとの3分を空けてみてください。その3分で何が起きたかが、そのコメントの値打ちです。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

点数とコメントを両方書いた組は、コメントだけの組に届きませんでした

答案に点数を書く。その横に、直すところを一言添える。点数だけよりも、ずっとていねいな返し方です。多くの教室で、これが理想の形とされてきました。

理由もはっきりしています。点数がなければ、生徒は自分の位置が分かりません。コメントがなければ、次に何をすればいいかが分かりません。だから両方書く。

では、両方書いた組がいちばん伸びたのでしょうか。この3つを直接くらべた実験があります。

ところが

1988年Ruth Butler(ルース・バトラー)が、British Journal of Educational Psychology 誌(第58巻第1部、1〜14ページ)で報告しました。

イスラエルの小学5年生・6年生の12学級を、3つの条件に無作為に割り当てています。

  • 点数だけ … 数値の成績を返す
  • コメントだけ … 一人ひとりに合わせた言葉を返す
  • その両方 … 点数とコメントを返す

課題は2種類でした。答えが1つに決まるものと、いくつも出てよいもの。それを2回の場面でやらせています。

学校の成績が高い層と低い層から無作為に選んだ132人について、興味と出来ばえを、事前・実施中・そしてもう評価が来ないと分かっている第3の場面で測りました。

結果はこうです。2種類の課題でも、成績が高い層でも低い層でも、興味と出来ばえがいちばん高かったのは「コメントだけ」の条件でした。次の評価が来ると分かっている場面でも、来ないと分かっている場面でも、同じでした。

⚠ 私が確かめられたのは、論文の要旨に書かれているところまでです。各条件の数値までは、原典を読まないと分かりません。日本の中高生を調べた研究でもありません。

点数をやめよう、という話ではありません。点数とコメントを一緒に返した回に、コメントの分が乗らなかった、という話です。

数字が紙の上にあると、生徒はまずそこを見ます。隣の人と見せ合うことも起こります。そこまで済んでから、コメントの番が来ます。

成績を付ける課題は、学期に何回もあります。ただ、毎回の小テストや英作文まで点数を付ける必要はありません。点数を書かない回を作れば、その回のコメントは最初に読まれます。今日の教室英語の1本目(There is no score on this one, so read my comment instead.)が、その合図になります。

動画で見る

ディラン・ウィリアムが、学びに効くフィードバックについて話しています (Education Scotland) スコットランド政府の教育機関が公開している映像です。形成的評価の一部としてのフィードバックが話されています。

明日の授業でやること|点数を書かない回を、月に1回作る

  1. 小テストか英作文を1つ選び、点数を書かずに返すと先に伝える。「これは記録に残しません」まで言う
  2. コメントは1人1つだけ書く。書く内容は「次に何を変えるか」に限る。ほめ言葉は足さない
  3. 返したあと、直す時間を3分取る。この3分は回収も評価もしない
  4. 3分の終わりに、変えたところを1つだけ隣の人に言わせる。教師は聞いて回るだけにする

この号で触れたリンク

明日やることは1つです。次に返す小テストか英作文を1つ選んで、点数を書かずに返してください。

コメントは1人1つ。返したあとに3分だけ空ける。授業を1つ足すのではなく、いま使っている返却の時間を組み替えるだけです。

またあした。

Vol.18 08.27.2026

よくある質問

点数を付けるのをやめたほうがよい、ということですか。

違います。1988年の実験で分かったのは、3つの返し方をくらべたとき、コメントだけを返した組の興味と出来ばえがいちばん高かったことです。成績を付けること自体をやめた実験ではありません。毎回の小さな課題まで点数を付ける必要があるかを、返すたびに考えるところまでが、この研究から言えることです。

この研究は、英語の授業を調べたものですか。

違います。イスラエルの小学5年生・6年生を対象に、答えが1つに決まる課題と、答えがいくつも出てよい課題を使って行われた実験です。日本の中学校・高校の英語の授業に、そのまま当てはめることはできません。