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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
NEWSLETTER Vol.5 標準 読了 12分

中高英語教師のニュースレター Vol.5|中学生の英語力低下

英語教育ニュースレター 第5号

中学生の英語力が落ちているという文科省調査、都立高校のスピーキング模試、Duolingo英語テストのアイビーリーグ全校採用。そして「間違いはその場で直すのが一番親切」という思い込みをひっくり返す研究まで。明日の授業にそのまま使える形でまとめました。

監修:原田高志(原田英語.com)

08.14.2026 Vol.5

おはようございます。今日いちばんお伝えしたいのは、「生徒の間違いは、その場でさりげなく言い直してあげるのが一番親切」という思い込みをひっくり返す研究です。そのさりげなさこそが、生徒に気づかれないまま終わっているかもしれません。ほかに、中学生の英語力低下を示した文科省調査と、明日そのまま使える帯活動を2本。

TODAY'S PICK

「英語で授業」が広がったのに、英語力は下がっていた

文部科学省・国立教育政策研究所「経年変化分析調査」(2025年7月公表、2026年に入り話題に)

文部科学省と国立教育政策研究所の「経年変化分析調査」で、中学生の英語力に落ち込みが見られました。とくに「書くこと」「話すこと」の一部の問題で、2021年度の同一問題より正答率が下がったと報じられています。

小学校での英語教科化、中学校での「英語で授業」の原則化。それらが進んできたなかでの結果だけに、現場に波紋を広げています。

数値は調査によって幅がありますが、「書く」「話す」という、自分で英語を組み立てて出す力が落ちている点は、複数の報道で共通しています。

「英語で授業をする時間」を増やすことと、「生徒が自分で英語を組み立てて出す機会」を増やすことは、別のことです。教師の英語を聞く時間が長くなっても、生徒が話したり書いたりする時間が比例して増えるとはかぎりません。

2学期の計画を立てるとき、今日、生徒が自分の言葉で英語を組み立てた時間は何分あったかを数えてみてください。聞く時間と、話す・書く時間は、別の数字として持っておいたほうがよさそうです。

WARM-UPS

今日の帯活動(5分でできる)

準備ゼロか黒板だけで回せる、5〜6分の帯活動2本です

友達の一言を、勝手に言い換える

対象 中2〜高校 時間 5分 準備 準備不要

  1. 1人目が、自分の週末や昨日の出来事について英語で1文話す
  2. 2人目は、その内容を聞いたまま繰り返すのではなく、別の言い方で言い換える(例:I was tired. → I didn't have much energy.)
  3. 3人目はさらにそれを違う言い方で言い換える。3〜4人続けたら、最初の文と見比べる
  4. 「意味が変わらないまま、どこまで形を変えられるか」を確認して締めくくる
  • 💡 同じ意味でも表現が何通りもあることを、自分の口で確かめる活動です。語彙の言い換え問題の下地づくりにもなります

3語しばりで即興30秒スピーチ

対象 中1〜高校 時間 6分 準備 黒板のみ

  1. 黒板に、関連のなさそうな単語を3つ書く(例:rain、phone、Friday)
  2. 生徒はペアで交代しながら、その3語を全部使って30秒だけ即興で話す
  3. 聞いている側は、3語が本当に全部使われたかをチェックする係になる
  4. 余裕があれば、単語を入れ替えて2セット目を行う
  • 💡 文法の正確さより「止まらずに3語を使い切る」ことを目標にすると、発話量そのものが増えます

CLASSROOM ENGLISH

そのまま使える教室英語

そのまま使える教室英語、5本です

生徒の答えを、クラス全体に広げたいとき

Does anyone see it differently?

違う見方をした人はいる?

正誤をすぐに判定する代わりに、視点の多様性を引き出す一言です。

間違いを、本人に自分で直させたいとき

Try that again — you're almost there.

もう一度言ってみて。もう少しで正解だよ。

答えをすぐに与えず、自己修正のチャンスを1回残す言い方です。

グループワークの残り時間を告げるとき

Last thirty seconds. Wrap up your sentence.

残り30秒。文を締めくくって。

「終わりです」ではなく、締めの動作そのものを促す具体的な指示です。

発言のあと、理由も引き出したいとき

Interesting. What makes you think that?

面白いね。どうしてそう思ったの?

正誤を判定する前に、思考の過程を尋ねる一言です。

ざわついた教室の集中を、静かに取り戻したいとき

Eyes up here for one second, please.

ちょっとだけこっちを見て。

"Be quiet" ではなく、視線を戻すことだけを頼む、角の立たない言い方です。

AI TOOLKIT

AI × 英語指導

教師向け1つ、生徒向け1つ

教師向けBrisk Teaching

Google ドキュメント・スライド・Classroom の上にそのまま重なって動く、無料のAI拡張機能です。文章の読解レベルをワンクリックで変えられるので、同じ英文を習熟度別に3段階そろえる、といった使い方ができます。

使いどころ:🎓 Chrome拡張機能を追加したあと、生徒に読ませたい英文をGoogleドキュメントに貼り、「Change reading level」から学年を選ぶだけで、やさしい版が新しいドキュメントとして生成されます。

生徒向けQuizlet(Magic Notes機能)

定番の単語学習アプリですが、写真やPDFを読み込ませると、AIが自動で単語カードと小テストを作ってくれる Magic Notes という機能があります。教科書のページをそのまま単語カード化できます。

使いどころ:🎓 教科書のページをスマホで撮影してアップロードすると、その回で出てくる単語だけを抜き出したフラッシュカードが自動で作られます。宿題として、その日のうちに1回だけ復習させると効果的です。

NEWS FLASH

今日のニュース

教室にそのまま持ち込める、英語教育まわりのニュース3本です

JAPAN · 08.14

都立高校のスピーキングテスト、自宅受験の模試が今月からスタート

東京都立高校入試のESAT-J(英語スピーキングテスト)に向けて、本番と同じ形式・時間配分で自宅受験できるオンライン模試が始まりました。8月から11月にかけて計4回。1回3,300円で、A〜Fの6段階評価とスコアレポートが付きます。

本番の形式に慣れておく値打ちは、内容の指導と同じくらい大きいと思います。

GLOBAL · 08月

Duolingo英語テスト、アイビーリーグ8校すべてが受け入れへ

大学の英語力証明に使われるDuolingo英語テストが、ハーバードやイェールを含むアイビーリーグ全8校ほか、世界6,000校以上で受け入れられるようになったと報じられています。

TOEFLやIELTSより低コストで短時間です。海外進学を考える生徒の選択肢が広がりました。

GLOBAL · EDUCATION

英ブリティッシュ・カウンシル、「言語に配慮した教育」の重要性を報告

ブリティッシュ・カウンシルが2026年8月に公表した「Language Trends England 2026」で、学習者の言語的背景に合わせた指導と評価の必要性が指摘されました。

日本の教室でも、生徒それぞれの背景知識や得意分野に配慮した課題設定のヒントとして読めます。

FREE TOOLS

無料の学習ツール4選

今号のテーマは「話す・発音を鍛える無料ツール」です

EnglishCentral

2万本以上の動画を教材に、動画のセリフをそのまま声に出して発音を採点してもらえる無料サイトです。字幕つきで内容を理解してから、シャドーイングの練習にそのまま移れます。

Sounds of Speech(アイオワ大学)

英語の一つひとつの音を、口の断面図のアニメーションで見せてくれる無料サイトです。生徒が発音でつまずく音を、口の動きから説明したいときの教材として使えます。

Speechling

英文を聞いて自分の声を録音すると、1日以内に人間のコーチからフィードバックが届く、非営利団体運営の無料アプリです。AIだけでなく人の耳で確認してもらえる点が強みです。

VOA Learning English

アメリカの国際放送局VOAが運営する、学習者向けにゆっくり・やさしい語彙で読まれるニュース音声とスクリプトのサイトです。時事英語を無理なく聞く教材として使えます。

STORY BREAK

生徒に話したくなる小ネタ

生徒に話したくなる小ネタ、2本です

colonel(大佐)は、なぜ『カーネル』と読むのか

colonel はイタリア語 colonnello(部隊の列=column を率いる人)から来ました。この語がフランス語に入ったとき、ll の連続を嫌う発音の癖で coronel に変わります。

英語は coronel という発音をそのまま受け継ぎました。ところがあとから「原語のイタリア語に近づけよう」と、つづりだけ colonel に戻します。

発音はフランス語経由、つづりはイタリア語直系。二重国籍のような単語です。理由が分かると、暗記の理不尽さが少し軽くなります。

英単語でいちばん定義が多いのは、たった3文字の run

ギネス世界記録によると、英語で最も定義の多い単語は run。動詞としての用法だけで645通りあります。以前は set が430通りで首位でしたが、run が上回りました。

3文字の単語が、600通り以上の意味を持てる。単語の意味は文脈が決めている、という何よりの証拠です。「単語1つに1つの訳語」という発想を、ときどきこの話で揺さぶってあげてください。

QUOTE

今日の名言

今日の名言

“The limits of my language mean the limits of my world.”

私の言葉の限界が、私の世界の限界を意味する。

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン(哲学者、1889-1951)『論理哲学論考』より

新しい単語や表現を1つ覚えることは、語彙が1つ増えるだけではありません。その生徒が扱える「世界」が、1つ広がります。

今日の run のように、たった1語の奥にどれだけの世界が詰まっているか。たまには生徒と一緒に立ち止まってみてください。

THE FLIP

常識がひっくり返る話

その『さりげない言い直し』、生徒には届いていません

生徒が英語を間違えたとき、流れを止めたくなくて、教師はよく「さりげなく正しい形に言い直す」対応を取ります。He go to school every day. と生徒が言ったら、He goes to school every day, right? と自然に返す。あの形です。

流れを止めず、恥をかかせず、それでいて正しい形を聞かせられる。いちばん親切で、いちばん優れた訂正に見えます。実際、多くの教師がこれを無意識にいちばんよく使っています。

ところが

ところが、カナダのフランス語イマージョン教室を調べた Lyster & Ranta(1997)は、逆の結果を出しました。この「さりげない言い直し(リキャスト)」は最も頻繁に使われていたのに、生徒がその訂正に気づいて自分で言い直せた割合は、6種類の訂正方法の中で最も低かったのです。リキャストのおよそ7割は、生徒に気づかれないまま終わっていました。

高い確率で言い直しにつながったのは、別の3つでした。

  • ・聞き返す(clarification request)
  • ・正しい形の一部だけ与えて、続きを言わせる(elicitation)
  • ・文法用語で軽くヒントを出す(metalinguistic feedback)

どれも、生徒に「もう一度自分で言わせる」余地を残しています。

「さりげなく直す」ことは、教師の心理的なハードルを下げてくれます。ただ、それがそのまま生徒の学びになっているとはかぎりません。

授業の流れを止めない配慮と、生徒に気づかせる配慮。この2つは、多くの場面で両立しません。

明日の授業でやること|明日の授業でやること

  1. 生徒が間違えたら、まず直さずに "Can you say that again?" と聞き返してみる
  2. それでも直らなければ、正しい形の一部だけ与えて続きを言わせる(例:"She... go? or goes?")
  3. それでも出なければ、正しい形を一度聞かせたうえで、もう一度本人に同じ文を言わせる
  4. 授業の最後に、その日出た間違いを1つだけ黒板に残し、クラス全体で正しい形を確認する

この号で触れたリンク

「直してあげること」と「気づかせること」は、似ているようで別の作業でした。流れを止めずに済む言い直しほど、生徒の耳を素通りしているのかもしれません。

2学期が近づき、授業準備に追われる時期だと思います。今日の1つでも、明日の教室に持ち込んでいただけたら嬉しいです。

またあした。

Vol.5 08.14.2026