malfunction の意味は?「壊れる」ではありません
1日1本!ニュース英語 第4号
電光掲示板がアウトカウントを誤って表示したせいで、選手も審判も混乱するトラブルが、メジャーリーグのレッドソックス対ブルージェイズ戦で起きました。試合は15分以上ストップし、審判団は「タイムプレー」という珍しいルールを持ち出して1点を認める判定を下します。今日取り上げるのは、この騒動の中心にあった malfunction(誤作動)という語です。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日の題材は野球場で起きた、ちょっとした「事件」です。電光掲示板がアウトの数を間違えて表示しただけなのに、試合は15分以上ストップし、審判団は分厚いルールブックをめくる羽目になりました。最後には「幻の1点」がそのまま記録されるという、なんとも後味の面白い結末を迎えます。主役の語は malfunction。「壊れる」でも「故障する」でもない、この語だけのニュアンスをのぞいてみましょう。
見出し
The Scoreboard Lied? Here's What Happened In Red Sox-Blue Jays Run Controversy
スコアボードが嘘をついた? レッドソックス対ブルージェイズ、得点判定騒動の一部始終
本文
During a game between the Boston Red Sox and the Toronto Blue Jays, the stadium scoreboard briefly showed the wrong number of outs.
Confused by the display, a Red Sox runner on third base kept going and crossed home plate.
Both teams stopped playing for more than fifteen minutes while the umpires reviewed an obscure rule.
In the end, the run still counted, and fans online called it the strangest play of the year.
チェック
| 語句 | 意味 | 英語の定義 |
|---|---|---|
| malfunction | 誤作動する、故障する/誤作動、故障 動詞にも名詞にもなります。壊れて止まるのではなく、間違った動きをする、という語です | to fail to work correctly, or a failure of this kind |
| cross home plate | 本塁を踏む、生還する | (in baseball) to run over home plate and score a run |
| review | 見直す、検討する/見直し | to examine something carefully, especially in order to make a decision |
| count | (記録として)有効になる、数えられる | to be officially accepted as valid |
| obscure | あまり知られていない、分かりにくい | not well known, or difficult to understand |
| appeal | (野球)アピールプレーをする/異議を申し立てる 日常語の「魅力」「懇願」とは別の、野球だけの専門的な使い方です | (in baseball) to ask the umpire to rule that a runner broke a rule |
| crew chief | 審判団の主任 | the umpire who leads and speaks for the umpiring crew |
全文和訳
ボストン・レッドソックスとトロント・ブルージェイズの試合、7回表のことです。1死一・三塁でレッドソックスの打者がセンターフライを打ち上げ、これが2つ目のアウトになるはずでした。ところが球場の電光掲示板は、アウトカウントを2つと表示したり1つと表示したりと、プレーの最中に食い違った表示を出していました。
この誤表示に惑わされ、3塁走者は「もうアウトは2つ、これは犠牲フライだ」と思い込んでそのまま本塁へ生還します。一方、1塁走者は挟まれてアウトになり、ブルージェイズの選手たちは「これでイニング終了のダブルプレーが成立した」と守備を切り上げてしまいました。
両チームは15分以上プレーを止め、審判団はビデオ判定と分厚いルールブックを持ち出して協議します。争点は「1塁でアウトが成立したのが先か、3塁走者が本塁を踏んだのが先か」という、タイミングだけの問題でした。審判団は「3塁走者は本塁を踏んだあとにアウトが成立した」と判定し、レッドソックスに1点を認めます。それでも試合はブルージェイズが2対1で制し、この珍事件はネットで一気に話題になりました。
訳出のポイント
malfunction 誤作動する、故障する
malfunction は「完全に壊れて止まる」のではなく、「本来とは違う動き方をしてしまう」語です。電光掲示板は消えたわけではありません。動いてはいるのに、間違った数字を出し続けた。ここが break down(完全に停止する)との違いです。
語の中身を分解すると、mal- はラテン語 malus(悪い)から来た接頭辞。function は「機能する」。合わせて「悪く機能する」がそのまま malfunction になります。
この mal- は英語のあちこちに隠れています。malware(悪意あるソフト)、malice(悪意)、malnutrition(栄養不良)。そして意外なのが dismal(陰鬱な)。これは dis- ではなく dies mali、つまり「悪い日々」というラテン語のカレンダー用語が語源だという説があります。中世ヨーロッパでは「不吉な日」が暦に決まっていて、その日を指す言葉が、いまの「陰鬱な」に変わったというわけです。
同じ mal- を持つ語を1つ知っておくと、初めて見る単語でも「あ、これは何か悪いことだ」と見当がつくようになります。これが接頭辞を覚える最大の効用です。
The scoreboard malfunctioned right in the middle of the play.
そのプレーの真っ最中に、スコアボードが誤作動を起こした。
A malfunction in the cooling system forced the plant to shut down.
冷却システムの誤作動により、その工場は操業停止に追い込まれた。
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crossed home plate before the out was made 見出し英語/入試英文法のワンポイント:before で先に済む過去完了
審判の説明を直訳すると、「3塁走者は、アウトが成立する前に本塁を踏んでいた」となります。日本語で「〜していた」と訳したくなるところですが、英語の原文は had crossed ではなく、ただの過去形 crossed です。
ここが日本語話者の見落としやすい点です。before や after がすでに「どちらが先か」を教えてくれているとき、英語は過去完了を使わなくても意味が通じます。
He crossed home plate before the out was made.(アウトが成立する前に、彼は本塁を踏んだ)
He had crossed home plate before the out was made.(同じ意味。ただし少し硬い書き方)
どちらも文法的に正しく、意味も同じです。before という語そのものが「時間の前後」を明言しているので、動詞を過去完了にしてまで念を押す必要がない、というのがポイントです。逆に、before や after が無い文で時間の前後をはっきりさせたいときは、過去完了の出番になります。
The game had already started before we found our seats.
私たちが席を見つける前に、試合はすでに始まっていた。
before があっても、こちらは already で「早く終わっていた」ことを強調するため過去完了を使っています
appeal 野球だけの専門的な意味(アピールプレー)
appeal は「魅力」「懇願する」でおなじみの語ですが、野球の実況ではまったく別の顔を見せます。ランナーが塁を正しく踏んだかどうかを、守備側が審判に確認してもらう手続きのことです。
今回の一件では、ブルージェイズの選手たちが「もうイニングは終わった」と思い込んで守備位置を離れてしまったため、正式に appeal(アピールプレー)を行う権利そのものを失いました。魅力的にお願いする appeal ではなく、規則にのっとって確認を求める appeal。同じ綴りでも、場面が変わると意味がまるで違って見える好例です。
The defense lost its chance to appeal because the players had already left the field.
守備側の選手たちがすでにグラウンドを離れていたため、アピールプレーをする機会を失った。
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発音・リズム
malfunction は /mælˈfʌŋkʃən/「マルファンクション」。アクセントは fun の部分に置きます。obscure は /əbˈskjʊər/「オブスキュア」。cure と同じ音で終わることを意識すると、スペルと発音がつながります。
背景メモ
現場はトロントのロジャーズ・センター。試合は2026年8月10日(月)に行われ、レッドソックスが2点ビハインドの7回表、1死一・三塁の場面でこの騒動が起きました。センターへの飛球で1塁走者がダブルプレーで刺された一方、3塁走者はすでに本塁を踏んでいたため、審判団はこれを「タイムプレー」(アウトの成立と走者の生還、どちらが早いかで結果が決まる判定)として扱いました。
審判団のクルーチーフ、クリス・グッチオーネ氏は「1塁でアウトが成立したとき、3塁走者はタッチアップをしていませんでしたが、そのアウトが成立する前にすでに本塁を踏んでいました」と説明しています。適用されたのは公式規則5.09(c)(4)。守備側の選手たちが本塁からダイヤモンドの外へすでに引き上げてしまっていたため、正式な抗議(アピール)ができる状態ではなかった、という判断です。
協議にかかった時間は報道によって15分から17分と幅がありますが、いずれにしても通常の確認より大幅に長い中断でした。それでも試合はブルージェイズが2対1で勝利し、幻のように見えた1点は、勝敗そのものを変えることはありませんでした。
今日のまとめ
- 1 電光掲示板の誤表示(malfunction)から、15分以上の中断に発展した
- 2 審判は「タイムプレー」というルールで、本塁を踏んだタイミングを基準に判定した
- 3 before・after が文にあるとき、過去完了は必須ではなく「念のため」の表現
- 4 appeal は日常語の『魅力』と、野球専門の『アピールプレー』の二つの顔を持つ
編集後記
この一件で面白いのは、壊れたのではなく「間違った情報を出し続けた」ことが、これだけの混乱を生んだという点です。止まっていれば誰かがすぐ気づいたはずですが、動き続けながら間違えるものは、なかなか疑われません。
スポーツニュースを英語で読むときは、媒体によって数字が少しずつ違うことがよくあります。今回も「15分」と書く記事と「17分」と書く記事がありました。どちらが正確かにこだわるより、複数の記事を読み比べて共通する部分を掴むほうが、実力のつく読み方だと思います。
malfunction、obscure、appeal。どれも試験の長文にそのまま出てきそうな語です。次に英字ニュースのスポーツ欄を開いたとき、変わった判定の記事があれば、ぜひ原文の動詞の時制にも目を向けてみてください。
原田高志
確認クイズ
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Q1. 空所に入る語として最も適切なものはどれでしょう。 A sudden ______ in the cooling system forced engineers to shut the machine down.
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Q2. He crossed the finish line before the whistle ______ .(正しい形はどちらでも文法的に成立しますが、最も自然なものを選んでください)
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Q3. 野球の実況で使われる appeal の意味として最も適切なものはどれでしょう。
よくある質問
malfunction と break down はどう違いますか。
break down は完全に止まってしまうことを指しますが、malfunction は動いてはいるのに正しく機能していない状態も含みます。今回のスコアボードのように、表示は出ているのに内容が間違っている場合は malfunction がぴったりです。
before があるのに過去完了を使う文もあるのはなぜですか。
before だけで時間の前後は伝わりますが、already(すでに)などと組み合わせて『予想より早く済んでいた』という驚きや強調を加えたいとき、書き手は過去完了を選ぶことがあります。文法上の必須ルールではなく、ニュアンスの選択です。
この判定によって試合結果は変わったのですか。
変わりませんでした。レッドソックスに1点が加わりましたが、最終的にはブルージェイズが2対1で勝利しています。得点そのものより、判定の珍しさが話題になった一件です。