タフ構文とは?This book is easy to read に it を付けない理由
入試対策講座|第80回
This book is easy to read. の read のうしろには、目的語の it を置きません。主語の this book が、もともと read の目的語だからです。この「タフ構文」の骨組みを百科事典と文法の解説から確かめ、I am difficult to ~ という誤りの直し方までまとめました。
監修:原田高志(原田英語.com)
「この本は読みやすい」を英語にすると、This book is easy to read. です。ところが英作文では、This book is easy to read it. と、最後に it を足した答案がよく出ます。read は他動詞なので、目的語が無いと落ち着かないからです。なぜ、ここでは it を置いてはいけないのでしょうか。
This book is easy to read. の read のうしろに、なぜ it を置けないのか
次の3つを見比べてください。
① It is easy to read this book.
② This book is easy to read.
③ ✕ This book is easy to read it.
- ①と②は、どちらも「この本は読みやすい」です。ところが③のように it を足すと、誤りになります。
read は他動詞で、うしろに目的語が要るはずです。それなのに、なぜ②では目的語を置かないのでしょうか。
考えられる答え
同じものを2回言っている、という見方は当たっています。 ただ、くどいだけなら「少し不自然」で済むはずです。入試では、③ははっきり誤りとして問われます。くどさの問題ではなく、文の骨組みの問題だからです。この見方では、なぜ①では this book を read のうしろに置いてよいのかも説明できません。
主語の本が「読まれる」側だ、と気づけたのは大事な一歩です。 けれども、This book is easy to be read. とは書きません。英語史の研究(Fischer ほか、2017年)を紹介した英語史のブログ hellog によると、昔は is difficult to be reclaimed のような受け身の形も使われました。しかし、この位置の受け身は定着せず、今は誤りとされる形として挙げられています。意味は受け身に近くても、形は to read のままです。
英語版 Wikipedia の Tough movement の項は、この形を「主節の主語が、意味のうえでは、うしろの不定詞の目的語である」構文だと説明しています。そして、不定詞の目的語が欠けているので「目的語が欠けた構文」とも呼ばれる、としています。 つまり②は、①の read の目的語 this book を、文の頭に出した形です。目的語はもう主語の位置に出ているので、read のうしろは空いたままになります。そこに it を置くと、目的語が2つになってしまいます。
真相
タフ構文の主語は、もともと to 不定詞の目的語。目的語を主語の位置に出したので、to 不定詞のうしろは空ける。
It is easy to read this book. → This book is easy to read.(read の目的語だった this book が主語の位置に出て、read のうしろは空く)。使う形容詞は easy・difficult・hard・tough・impossible など
① 2つの形は、同じ中身の言いかえ
英語版 Wikipedia の Tough movement の項は、次の2組を並べています。
・This problem is tough to solve. = It is tough to solve this problem.
・Chris is easy to please. = It is easy to please Chris.
どちらも、右の文で to 不定詞の目的語だった名詞(this problem・Chris)が、左の文では主語になっています。このとき、solve や please のうしろには何も置きません。
② 前置詞のうしろが空くこともある
同じ項は、Fred is tough for Dick to throw snowballs at.(フレッドは、ディックが雪玉を投げつけにくい相手だ)という例も挙げています。throw snowballs at Fred の Fred が主語に出たので、at だけが残り、うしろが空いています。
だから This topic is hard to talk about. のように、前置詞で終わる形になります。about を落としてはいけません。
③ 人を主語にするときに気をつける
Chris is easy to please.(クリスは喜ばせやすい)が言えるのは、Chris が please の目的語だからです。同じ項は、John is eager to please.(ジョンは人を喜ばせたがっている)と比べ、こちらの John は please する側だと説明しています。
「私はこの問題を解くのが難しい」の「私」は、solve の目的語ではありません。解く側です。だから I am difficult to solve this problem. とは書けません。British Council の文法解説のとおり、誰にとっての話かは for で示し、It is difficult for me to solve this problem. と書きます。
入試で使う3ステップ
① 「主語 + be + easy・difficult・hard など + to do」の形を見たら、It is ~ to do + 主語 の形に戻せるか試します。
② 戻せたら、主語は to 不定詞の目的語です。to 不定詞(と前置詞)のうしろは空けます。
③ 戻せない(主語が「する側」の人)なら、It is ~ for 人 to do の形に書きかえます。
日本語の頭が、ここで邪魔をする
日本語の「は」は、話の主題を出すだけの言葉です。「この本は読みやすい」の本は、読む側か読まれる側かを言いません。「私はこの問題が難しい」と、人を主題にすることもできます。だから英語でも、主題にしたいものを何でも主語に置けると考えてしまいます。
もう1つ、「read は他動詞だから、うしろに目的語が要る」と習ったことも効いています。目的語が空いた形を見ると、何か書き忘れたように感じるのです。
知らなかっただけで、あなたの理解力の問題ではありません。「主語は、to 不定詞の目的語の席から出てきた」と分かれば、空いているのが正しいと納得できます。
ここでつまずく
いちばん多いのは、to 不定詞のうしろに、主語を指す代名詞を足す誤りです。
✕ This book is easy to read it.
○ This book is easy to read.
次に多いのが、人を主語にしてしまう誤りです。
✕ I am difficult to solve this problem.
○ It is difficult for me to solve this problem.
「私」は solve の目的語ではないので、タフ構文の主語にはなれません。
反対に、前置詞を落とす誤りもあります。
✕ This topic is hard to talk.
○ This topic is hard to talk about.
talk about this topic の this topic が主語に出たので、about は残します。
空いた席から主語をたどる力を手に入れる
This problem is tough to solve. を読んだとき、solve のうしろが空いていて、その席に入るのが主語の this problem だと分かります。「何を解くのか」を主語までさかのぼって取れるので、長い主語でも意味を見失いません。
英作文では、This book is easy to read it. や I am difficult to solve this problem. と書かなくなります。正誤問題でも、余計な it と、空けてはいけない前置詞の両方に気づけます。
例文で確かめる
It is easy to read this book.
この本を読むのは簡単だ。
read のうしろに目的語 this book がある形。
This book is easy to read.
この本は読みやすい。
this book が主語に出たので、read のうしろは空く。
My grandfather is hard to please.
祖父は喜ばせるのが難しい。
please my grandfather の my grandfather が主語に出た形。
This topic is hard to talk about.
この話題は話しにくい。
talk about this topic の about は残す。
It is difficult for me to solve this problem.
私にはこの問題を解くのが難しい。
「私」は解く側なので主語にしない。for me で示す。
Before
read は他動詞だから目的語が要る、と覚えていて、This book is easy to read it. と書いていた。I am difficult to ~ がなぜ誤りなのかも説明できなかった
After
主語は to 不定詞の目的語の席から出てきたと分かった。It is ~ to do の形に戻せるかで確かめれば、it を足す誤りも、人を主語にする誤りも、その場で直せる
For Teachers
明日の授業、この15分で「タフ構文(This book is easy to read. の形。read のうしろに it を置かない)」が終わります
導入の問いかけ(3分)
- 「「『この本は読みやすい』を英語にしてください」と言い、30秒で書かせます。」
- 「「read のうしろに it を書いた人と、書かなかった人がいます。どちらが正しいでしょう。隣の人と15秒話してください」と聞きます。」
- 「「It is easy to read this book. と見比べてください。this book は、どこから来たのでしょう」と聞き、「read のうしろ」が出るのを待ちます。」
板書はこの1行だけ
It is easy to read this book. → This book is easy to read _.(主語は read の目的語の席から出てきた。席は空ける)/✕ I am difficult to solve it. → ○ It is difficult for me to solve it.
ペアワーク/全体討論(5分)
「1人が It is ~ to do の文を言います(例:It is hard to please my father.)。もう1人は、目的語を主語にした形に言いかえます(My father is hard to please.)」5分。
先生の発話は、「目的語を前に出したら、うしろの席は空けます。前置詞があれば、前置詞だけ残します」です。役を替えて2回ずつ言わせ、最後に It is hard to talk about this topic. を言いかえさせます。
レベル別ミニ問題(5分)
誤りを直しなさい。This question is easy to answer it.
答え:This question is easy to answer. 主語の this question は answer の目的語なので、うしろの it は置かない
誤りを直しなさい。I am hard to understand his English.
答え:It is hard for me to understand his English. 「私」は understand の目的語ではないので主語にできない。誰にとっての話かは for で示す
同じ意味になるように空所を埋めなさい。It is not easy to live with my roommate. → My roommate is not easy ( ) ( ) ( ).
答え:to live with。live with my roommate の my roommate が主語に出たので、前置詞の with は残す
出口チケット(2分)
「この問題は解くのが難しい」を、This problem で始めて英語で書かせる(例:This problem is difficult to solve.)
AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。
あなたは大学入試英語の指導者です。タフ構文(This book is easy to read. の形)の練習問題を6問作ってください。条件は次のとおりです。①形容詞は easy・difficult・hard・tough・impossible の中から使う。②2問は、It is ~ to do の文を、目的語を主語にした形に書きかえさせる。③2問は、This book is easy to read it. のように余計な代名詞がある誤りを直させる。④1問は、I am difficult to ~ のように人を主語にした誤りを、It is ~ for 人 to do に直させる。⑤1問は、talk about や live with のように前置詞が残る形にする。⑥解答には、なぜその答えになるかを一言添え、私が答えるまで解答を見せない。
確認クイズ
-
Q1. ( ) に入れるのに最も適切なものはどれか。This math problem is impossible ( ).
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Q2. 次の英文の下線部のうち、誤りを含むものはどれか。I am difficult to understand what the teacher is saying.
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Q3. ( ) に入れるのに最も適切なものはどれか。This small apartment is not easy to live ( ).
よくある質問
タフ構文とは何ですか?
This book is easy to read. のように、主語がもともと to 不定詞の目的語である形です。英語版 Wikipedia は tough movement という名前で、「主節の主語が、意味のうえでは不定詞の目的語である」構文だと説明しています。
This book is easy to read it. は、なぜ誤りなのですか?
主語の this book が、read の目的語の席から出てきたものだからです。目的語はもう主語の位置にあるので、read のうしろに it を置くと、目的語が2つになってしまいます。
I am difficult to solve this problem. は、どう直せばいいですか?
It is difficult for me to solve this problem. と直します。「私」は solve の目的語ではなく解く側なので、この形の主語になれません。誰にとって難しいかは for で示します。