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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
GRAMMAR 第41回 標準 読了 9分

the 比較級 the 比較級の味|2つのtheが指すものの謎を解く

入試対策講座|第41回

The more, the better. 冠詞の the が2つ並んでいるのに、指しているものがどこにも見当たりません。訳し方だけ覚えている人は、語順を作らせる問題で必ず止まります。実はこの the、冠詞ではありませんでした。

監修:原田高志(原田英語.com)

「〜すればするほど、〜だ」。訳し方は覚えているのに、いざ英語を作ろうとすると語順で止まる。今日はその原因を、the という語の正体から解きます。

The more, the better. の the は、いったい何を指しているのか

次の文を見てください。

The more you practice, the better you get.

訳は「練習すればするほど、上達する」。ここまでは多くの人が言えます。

ですが、the は冠詞です。冠詞は名詞に付いて、どれのことかを指す語のはずです。それなのに、この文の the は more と better という比較級に付いています。しかも、指している名詞がどこにもありません。

冠詞なのに名詞が無い。これは何なのでしょうか。

考えられる答え

仮説1 決まり文句なので、the が付く形ごと丸暗記するしかない

実際、多くの人がそうしています。「ザ比較級、ザ比較級」と唱えて覚える。訳す問題なら、これで点は取れます。 止まるのは、英語を作らせる問題です。「彼が怒れば怒るほど、私は冷静になった」を英作文させると、The more he got angry と書いてしまう人が必ず出ます。正しくは The angrier he got です。 丸暗記では、どの語を the の後ろへ持っていくのかが決まりません。

仮説2 「その」と訳して、前の内容を指している

前半の内容を後半の the が受けている、という読み方です。これは半分当たっています。 たしかに後半の the は、前半を受けています。「練習した、その分だけ」上達する。意味の上では、ちゃんとつながっています。 ですが、これでは前半の the が説明できません。文の先頭に出てくる1つ目の the は、まだ何も言っていない段階で置かれています。受けるものが無いのです。

仮説3 この the は冠詞ではない。古い英語の副詞が、そのまま残っている

語源辞典Etymonlineに、はっきり書かれています。the more the merrier のような形の1つ目の the は、冠詞とは別の語である、と。 正体は、古い英語の þy。「that(それ)」の道具を表す形(具格)で、意味は「それだけ」です。 Etymonline はこの形の意味を、「by how much more ____, by so much more ____」と説明しています。「どれだけ〜する分だけ、それだけ〜だ」。 冠詞ではなく、量を測る副詞だったのです。

真相

比較

この the は冠詞ではありません。「それだけ」を表す古い副詞で、by that much(その分だけ)という意味です。

The + 比較級 + S + V, the + 比較級 + S + V

副詞だと分かると、形が全部つながります。

  • 前半の the … 「どれだけ〜する分だけ」(by how much)
  • 後半の the … 「それだけ〜だ」(by so much)

The more you practice, the better you get.
「どれだけ多く練習する分だけ、それだけ上手くなる」

そして、副詞だからこそ語順が決まります。

the は比較級にくっついて動きます。だから比較級になっている語を、the ごと文の先頭へ引っぱり出すのです。

元の形:You get better.(あなたは上手くなる)
引き出す:The better you get.

元の形:He got angrier.(彼はより怒った)
引き出す:The angrier he got.

⚠ ここが差のつくところです。比較級が形容詞なら、その形容詞ごと前へ出ます。The more he got angry ではなく The angrier he got。angry という語そのものが比較級になっているからです。

現代英語にも、この副詞の the は残っています。

I feel the better for it.(そのおかげで、その分だけ気分がいい)
So much the better.(それなら、なおさら良い)

どちらも the のうしろに名詞がありません。冠詞ではない the が、いまも残っている証拠です。ただしこの2つは決まった言い方で、自分で新しく作る形ではありません。見て分かれば十分です。

日本語の頭が、ここで邪魔をする

日本語の「〜すればするほど」は、とてもよくできた言い方です。

「練習すればするほど、上達する」。この1つの形だけで、前半と後半の関係が言い切れます。目印は1か所しかありません。

英語は違います。前半にも後半にも the を置いて、2か所で示します。日本語の側に対応する2つ目の印が無いので、「なぜ the が2回いるのか」という疑問そのものが浮かびにくいのです。

つまり、覚えられなかったのではありません。母語に、対応する部品が無かったというだけのことです。理解力の問題ではありません。

ここでつまずく

いちばん多い誤りは、比較級にできる語を置き去りにすることです。

「彼が怒れば怒るほど」
✕ The more he got angry
The angrier he got

angry が比較級になるのだから、angry ごと前へ出す。more だけを前へ出して、angry を後ろに残してはいけません。

もう1つは、後半に as を入れてしまう誤りです。
✕ The more you practice, as the better you get.
○ The more you practice, the better you get.

2つの節をつなぐ語は要りません。the が2つあることが、そのまま接続の働きをしています。

この the は冠詞ではなく「その分だけ」。前半で測って、後半で返す。

前へ出た語を、元に戻す力を手に入れる

the 比較級の文を見たとき、「この比較級は、もともとどこにあったのか」を戻して読めるようになります。

The more carefully you read, the fewer mistakes you make. なら、you read carefully と you make few mistakes に戻せます。

戻せれば、訳もそのまま出ます。長文で長い the 比較級が出てきたとき、前から順に読み下せるようになります。

例文で確かめる

The more you practice, the better you get.

練習すればするほど、上達します。

元の形は You get better. better ごと前へ出ています。

The angrier he got, the calmer she became.

彼が怒れば怒るほど、彼女は冷静になりました。

angry が比較級になるので、angrier ごと前へ。more だけを出してはいけません。

The sooner you start, the easier it will be.

早く始めるほど、楽になります。

後半に will が来ても構いません。前半は現在形のままにします。

So much the better.

それなら、なおさら良い。

冠詞ではない the が、現代英語にも残っている形です。

Before

「ザ比較級、ザ比較級」と唱えて、訳すときだけ使っていた。英作文で語順を作らせる問題になると、The more he got angry のように more だけを前へ出してしまい、何が違うのか分からないまま減点されていた。

After

the が「その分だけ」という副詞だと分かるので、比較級になっている語ごと前へ引き出す、という1つの動作で語順が決まる。長文でも、前へ出た語を元の位置に戻しながら読めるので、戻り読みが減る。

For Teachers

明日の授業、この15分で「the 比較級, the 比較級」が終わります

導入の問いかけ(3分)

  • 「The more, the better. これ訳せる人?」
  • 「じゃあ、この the は何を指してる? 冠詞だよね。名詞はどこ?」
  • 「実はこれ、冠詞じゃないんです。1000年前の別の単語が化石みたいに残ってる」

板書はこの1行だけ

the=「その分だけ」(by that much)/ 比較級になった語ごと前へ出す

ペアワーク/全体討論(5分)

「では隣の人と、この3文を英語に直してください」と言って、日本語を3つ配ります。「練習するほど上手くなる」「早く出るほど、道はすいている」「彼が怒るほど、私は静かになった」。3つ目がねらいです。怒るは angry なので、The angrier となるところで手が止まります。5分取ってから、止まったペアを当てて、黒板で元の文に戻して見せてください。

レベル別ミニ問題(5分)

標準

「本を読めば読むほど、知らないことが増える」を英語にしなさい。

答え:The more books you read, the more you realize you don't know.(前半は you read books の books ごと前へ。more books でひとかたまりです)

難関

「その仕事は難しければ難しいほど、彼女はやる気になった」を英語にしなさい。

答え:The more difficult the work was, the more motivated she became.(difficult は more difficult とするので、more difficult ごと前へ出します)

出口チケット(2分)

「the 比較級を使って、自分のことを1文書いてください。The more I ___, the more I ___. の形で」

MAKE IT YOURS

AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。

あなたは大学入試英語の指導者です。the 比較級, the 比較級 の練習問題を6問作ってください。条件は次のとおりです。①日本語を示して英語に直させる形式にする。②6問のうち3問は、形容詞が比較級になる形(The angrier he got のように、more だけでなく形容詞ごと前へ出るもの)にする。③1問は名詞を伴う形(The more books you read のように)にする。④解答には、前へ出す前の元の文を必ず添える。⑤私が答えるまで解答を見せない。⑥文法の一覧表は書かない。

動画で見る

the ... the ... の比較級(1分で学ぶ英文法) (BBC Learning English) 今日の形を、英語の説明で1分だけ確かめ直したい人へ。

確認クイズ

  1. Q1. 「彼が怒れば怒るほど、私は冷静になった」を英語にするとき、正しいものはどれか。

  2. Q2. 本文の説明によると、The more, the better. の1つ目の the の正体はどれか。

よくある質問

the 比較級, the 比較級 の the は冠詞ですか?

いいえ。語源辞典Etymonlineによれば、冠詞とは別の語で、古英語の þy(「それ」の具格)が残ったものです。意味は「それだけ、その分だけ」で、比較級に付く副詞として働いています。

The more he got angry と書くのはなぜ誤りですか?

angry は angrier という比較級になるため、angrier ごと文の先頭へ出す必要があるからです。正しくは The angrier he got となります。more だけを前へ出して、比較級になる語を後ろに残してはいけません。