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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
GRAMMAR 第4回 標準 読了 9分

使役動詞で to が消える由|犯人は「これから」の矢印

入試対策講座 第4回/謎解き式・先生の15分パックつき

I made him clean the room. なぜ to clean ではないのか。want him to do には to が要るのに、make him do には要らない。この差の犯人を突き止めると、使役動詞・知覚動詞・受動態で to が戻る理由まで、ひとつながりで解けます。

監修:原田高志(原田英語.com)

今日は答えから入りません。先に謎を出します。make・have・let のうしろで to が消えるのに、want・ask のうしろでは消えない。同じ「人に何かをさせる」なのに、なぜ形が違うのか。仮説を3つ立てて、順に潰していきます。最後に、先生がそのまま使える15分の授業案を置いておきます。

なぜ、使役動詞のうしろで to が消えるのか

次の2文を見比べてください。

I want him to clean the room.(彼に部屋を掃除してほしい)

I made him clean the room.(彼に部屋を掃除させた)

日本語ではどちらも「彼に、部屋を掃除する」です。それなのに、下の文だけ to がありません。to clean と書くと×になります。

多くの人はここを「make は特別だから」と覚えて先へ進みます。しかしそう決めた瞬間に、see・hear・feel・let・have も全部『特別』になり、例外が6つに増えます。

例外が6つ並んだら、それはもう例外ではありません。共通の理由があるはずです。

考えられる答え

仮説1 make は例外の動詞だから、丸ごと覚えるしかない

覚えれば点は取れます。ただしこの説明では、make・have・let・see・hear・feel が同じ振る舞いをする理由が言えません。6つが偶然そろって同じ例外になった、と考えるのは無理があります。

仮説2 言いやすくするために to を省略している

惜しい説です。しかし省略なら、省略しても戻ってこないはず。ところが受動態にすると I was made to clean the room. と、消えたはずの to が戻ってきます。省略説では、この復活が説明できません。

仮説3 to はもともと「これから先へ」の矢印。使役・知覚には、その矢印を置く場所がない

使役動詞と知覚動詞が扱うのは、その場で実際に起きる(起きた)動作そのものです。先を指す矢印を挟む余地がない。ここに真相があります。

真相

動詞の語法

to不定詞の to は、もともと「これから、そちらへ」という方向の矢印です。使役動詞・知覚動詞が扱うのは、まだ起きていない先のことではなく、その場で現実に起きる動作。矢印で先を指す必要がないから、動詞が裸のまま置かれます。

S + make/have/let + O + 原形(動詞の原形)〜. / S + see/hear/feel など + O + 原形(または -ing)〜.

使役動詞(make / have / let)や知覚動詞(see / hear / feel など)は、うしろに「人(O)+動詞の原形(to の付かない形)」を続けます。

ここから先は、真相を土台にして使い分けまで降ります。これらの動詞は、相手の動作を頭の中で加工せず、そのまま差し出す・受け取る動詞でした。だから動作は裸のまま置かれます。

make・have・letの違いは『相手の意志への態度』で整理できます。

  • make:相手の意志を無視して強制する。I made him apologize.(彼に無理やり謝らせた)
  • have:仕事・立場として当然のこととして頼む・してもらう。I had my brother fix my bike.(弟に自転車を直してもらった)
  • let:相手がしたいことを許可する。My parents let me stay up late.(親は私が夜更かしするのを許した)

知覚動詞(see / hear / feel / watch / notice など)は、目や耳で相手の動作を直接キャッチする動詞です。うしろに原形が来れば『動作の始まりから終わりまで』を見聞きしたことになり、現在分詞(-ing)が来れば『その動作の途中・一部』を見聞きしたことになります。

I heard someone shout my name.(誰かが私の名前を叫ぶのを(叫び終わるまで)聞いた)

I heard someone shouting outside.(外で誰かが叫んでいるのを(その最中に)聞いた)

この2つは、動詞の形を変えるだけで『見た範囲』を伝え分けているわけです。

日本語の頭が、ここで邪魔をする

日本語は、「これから」と「いま起きている」を、動詞の形では区別しません。

「彼に掃除してほしい」も「彼に掃除させた」も、どちらも『彼に、掃除する』という同じ組み立てで言えてしまいます。日本語の側に区別が無いので、英語の to のあるなしが、気まぐれなルールに見える。

これは知らなかっただけであって、あなたの理解力の問題ではありません。日本語で育った頭には、この区別を置く場所がもともと用意されていないのです。

置き場所を1つ作ってください。「先を指しているか/その場で起きているか」。この1本の線を引いた瞬間から、to のあるなしは迷う場所ではなくなります。

ここでつまずく

最大の罠は、受動態にした瞬間、原形不定詞に to が戻ってくることです。

He made me clean the room.(能動:原形 clean)

I was made to clean the room.(受動:to clean に戻る)

make の受動態だけ、to が復活するというルールは頻出です。理由は、受動態にすると『O(人)が主語』に格上げされ、動詞のかたまりが名詞的な役割から解放されて、本来の to不定詞の形に戻るためと説明されます。理屈より先に、「makeの受け身はto付き」と丸ごと覚えてしまうのが実戦的です。have と let は受動態そのものがまれで、入試ではほぼ make の受動態だけが問われます。

もう一つ、help はこのグループに似ていますが少し特別で、原形と to不定詞の両方が使えます(help A (to) do)。使役動詞と混同して「絶対に原形」と思い込まないよう注意してください。

使役動詞・知覚動詞の原形不定詞=「相手の動作を、そのまま裸で見せる/指させる」形。to を挟まないのは、頭の中で加工せず、動作をダイレクトに置いているから。

動作を、生のまま受け取る力を手に入れる

この線が引けると、SVOC の C に何が入るかを自分で決められるようになります。

see O do(最初から最後まで見た)/ see O doing(途中を見た)/ see O done(O が〜されるのを見た)。長文でこの3つが出るたびに立ち止まっていた時間が、そのまま消えます。

加えて、makeの受動態で to が戻る理由も、もう説明できます。「矢印の要らない場所」から外れたから戻ってきた、それだけのことです。

例文で確かめる

My teacher made us rewrite the essay three times.

先生は私たちにそのレポートを3回書き直させた。

make=強制。生徒の意志は関係なく、先生が命じた。

I had a repairman fix my washing machine yesterday.

昨日、修理業者に洗濯機を直してもらった。

have=仕事として当然の依頼。頼まれた側は専門家。

Her parents finally let her study abroad.

彼女の両親は、ついに彼女の留学を許した。

let=本人がしたいことを許可する。

I saw the boy fall off his bicycle right in front of me.

その男の子が目の前で自転車から落ちるのを見た。

知覚動詞+原形。転ぶ瞬間を最初から最後まで見た。

I was made to wait for over an hour at the hospital.

病院で1時間以上も待たされた。

makeの受動態。原形waitにtoが戻ってto waitになっている。

Before

make のうしろは原形、want のうしろは to不定詞。理由は知らないまま、動詞ごとに表を作って覚えていた。表にない動詞が出ると、そこで止まっていた。

After

「先を指しているか、その場で起きているか」という1本の線で判断できる。表を覚えるのではなく、線で切る。初めて見る動詞にも、自分で見当がつけられるようになる。

For Teachers

明日の授業、この15分で「使役動詞・知覚動詞+原形不定詞」が終わります

導入の問いかけ(3分)

  • I want him to clean. と I made him clean. 、どっちが実際に掃除されたと思う?
  • to って、どういう意味だと思う? go to school の to と、to不定詞の to は、別物かな
  • make の受け身は I was made to clean. 。消えたはずの to が、なんで帰ってきたんだろう

板書はこの1行だけ

to =「これから、そちらへ」の矢印。目の前で起きていることに、矢印は要らない。

ペアワーク/全体討論(5分)

3人目の問いかけをそのままペアに投げます。「受動態にすると to が戻ってくる。省略していただけなら、戻ってこないはずだよね。じゃあ、なんで戻る?

2分与えて、答えが出なくてかまいません。出ないことが正常です。ここでの目的は、「省略説では説明がつかない」という手ざわりを全員に持たせることだけ。

回収するときは、正解を言う前に必ず「省略だと思った人」と挙手させてください。自分の仮説が潰れる体験があると、そのあとの説明が入ります。

レベル別ミニ問題(5分)

標準

The teacher made us ( rewrite / to rewrite ) the essay.

答え:rewrite。使役動詞 make のあとは原形。その場で起きる動作なので、矢印は要らない。

標準

I saw him ( cross / crossing ) the street when the light turned red. のうち、「渡り終えるまで見た」のはどちら。

答え:cross。原形なら動作の最初から最後まで、-ing なら途中の一場面。

難関

次の文を受動態に。The coach made the players run ten laps.

答え:The players were made to run ten laps by the coach. 原形に to が戻る。「矢印の要らない場所」から外れたため。

難関

I heard my name ( call / called ) during the announcement. 正しいのはどちらか、理由も。

答え:called。my name は「呼ぶ」側ではなく「呼ばれる」側。O とうしろの動詞の関係が受動なので過去分詞。

出口チケット(2分)

「make のうしろに to が付かない理由」を、to の意味に触れながら1行で書きなさい。書けた生徒は、翌日の小テストでほとんど間違えません。

MAKE IT YOURS

AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。

あなたは大学入試の英語を教えるベテラン講師です。私は高校2年生で、使役動詞・知覚動詞のあとの形(原形/-ing/過去分詞/to不定詞)が苦手です。条件:①私が間違えやすい順に4択問題を8問作る ②8問のうち2問は make の受動態(to が戻る形)を入れる ③2問は知覚動詞の O と動詞の関係が受動になる形(過去分詞)を入れる ④各問の解説は「to は『これから』の矢印」という考え方を必ず使って書く ⑤最後に、私が次に復習すべき項目を1つだけ挙げてください。

動画で見る

使役動詞 make/have/let/get/help の語法を解説する engVid の講義 (English with Alex · engVid) help だけ原形と to不定詞の両方が使えるという例外にも触れている。
使役動詞 have/get/make/let/help の違いを整理する英文法レッスン (Interactive English) make=強制、have=依頼、let=許可という意志への態度の違いを例文で確認できる。

確認クイズ

  1. Q1. 空所に入る最も適切な語句を選びなさい。 The strange noise made everyone in the room ______ at once.

  2. Q2. 次の文を受動態に書き換えたとき、最も適切なものを選びなさい。 The coach made the players run ten laps.

  3. Q3. 空所に入る最も適切な語句を選びなさい。 I heard my name ( ) several times during the announcement, but I couldn't catch the rest.

よくある質問

make・have・letはどれも「させる」と訳されますが、テストではどう見分ければいいですか?

相手の意志を尊重しているかどうかで見分けてください。makeは相手の意志を無視して強制する(イヤでもやらせる)。haveは仕事・立場として当然頼む(お願いする・してもらう)。letは相手がやりたいことを許可してやらせてあげる。日本語はどれも「させる」ですが、英語では相手の気持ちに対する態度がまったく違う3つの動詞です。

知覚動詞のあとは原形不定詞と現在分詞(-ing)のどちらを使えばいいですか?

動作の全体を見た(最初から最後まで)なら原形、動作の一部・進行中の場面を見た(途中だけ)なら現在分詞です。I saw him cross the street.(渡り終えるまで見た)と I saw him crossing the street.(渡っている途中を見た)は、どちらも文法的に正しく、見た範囲が違うだけです。入試では『一部分』を強調したい文脈で-ingが選ばれます。