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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
GRAMMAR 第44回 標準 読了 9分

one・it・that の使い分け|買い直すのはone、見つけるのはit

入試対策講座|第44回

I've lost my umbrella. I have to buy ( ). ここに入るのは one で、it は入りません。日本語ではどちらも「それ」なので、区別する必要にそもそも気づけません。3語が受け直しているものの違いを、冠詞までさかのぼって解きます。

監修:原田高志(原田英語.com)

英語は、同じ名詞を二度書くのを嫌います。そこで受け直すための語が用意されているのですが、その受け直し方が3通りある。日本語はぜんぶ「それ」で済むので、ここでつまずきます。

なくした傘を買うのに、なぜ it ではなく one なのか

次の空所に入るのは、one でしょうか、it でしょうか。

I've lost my umbrella. I have to buy ( ).(傘をなくしました。買わなければいけません)

日本語にすると、どちらも「それを買わなければいけない」です。区別のしようがありません。

ところが英語では、入るのは one だけです。it を入れると、文の意味が壊れます。

なぜでしょうか。

考えられる答え

仮説1 どちらでも通じる。細かい違いにすぎない

たしかに、口に出せば相手は察してくれるでしょう。 ですが、これは通じるかどうかの話ではありません。意味が変わってしまう話です。 buy it と言うと、「なくした、まさにその傘を買う」という意味になります。なくしたものを、自分で買い直す。日本語にしても、やはりおかしいのです。 入試では、one と it のどちらかを選ばせる問題が実際に出ます。どちらでもよい、という出題はありません。

仮説2 it は決まったもの、one は決まっていないもの

半分は当たっています。it が指すのは特定のもの、one が指すのは不特定のもの。多くの参考書がこう説明します。 ですが、これでは3つ目が説明できません。 The population of Tokyo is larger than that of Osaka.(東京の人口は、大阪の人口より多い) この that が指しているのは「大阪の人口」という、はっきり特定されたものです。特定されているのに it ではありません。 特定か不特定か、という線の引き方だけでは足りないのです。

仮説3 3語は、名詞の「どこまで」を受け直しているかが違う

鍵は、名詞そのものではなく、名詞に付いていた冠詞のほうにあります。 one は a + 名詞の代わりです。an umbrella。つまり種類だけを受けて、中身は別のもの。 it は the + 名詞の代わりです。the umbrella。さっき出てきた、そのもの。 that も the + 名詞の代わりですが、こちらはうしろに修飾語が付きます。the population of Osaka。名詞は同じで、後ろだけ差し替えるときの形です。 受け直しているものが、それぞれ違います。だから入れ替えがききません。

真相

代名詞

one は a + 名詞の代わり、it は the + 名詞の代わり、that も the + 名詞の代わりですが、うしろに修飾語を必ず連れてきます。3語は「どの冠詞ごと受け直すか」で分かれています。

a + 名詞 → one / the + 名詞 → it / the + 名詞 + うしろの修飾語 → that

冒頭の文に戻ります。

I've lost my umbrella. I have to buy one.
この one は an umbrella。まだ持っていない、新しい傘を1本買う。意味が通ります。

I've lost my umbrella. I have to find it.
この it は the umbrella。なくした、その傘を探す。こちらも意味が通ります。

⚠ 動詞が変われば、正解も変わります。buy なら one、find なら it。空所の前の動詞を見てください。

では that は、いつ出てくるのか。

The climate of Japan is milder than that of England.(日本の気候は、イギリスの気候より穏やかだ)

that = the climate です。of England という修飾語が、そのうしろに付いています。

この形の that には、決まりが2つあります。

  • ▼ 単独では使えません。必ずうしろに of ~ や分詞などが続きます
  • ▼ 受けるものが複数なら those になります(the prices → those)

one にも複数形があります。ones です。

I like red apples better than green ones.(赤いりんごのほうが、緑のりんごより好きです)

ones = apples。種類を受けているので、中身は別のりんごです。

日本語の頭が、ここで邪魔をする

日本語は、「それ」の1語で全部を引き受けます。

「傘をなくした。それを買わないと」
「傘をなくした。それを探さないと」

どちらも「それ」で成り立ちます。それどころか、日本語ではそもそも言わなくても通じます。「傘をなくした。買わないと」。

つまり日本語の話し手には、区別する必要がそもそも生まれません。使い分けが難しいのではなく、分ける必要があること自体に気づけないのです。

⚠ ここが厄介なところです。知らない文法なら「知らない」と分かりますが、これは知らないことに気づけない種類のつまずきです。だから、意識して1度は通っておく価値があります。

ここでつまずく

いちばん多いのは、比較の相手を取り違える誤りです。

✕ The population of Tokyo is larger than Osaka.
○ The population of Tokyo is larger than that of Osaka.

✕のほうは、「東京の人口」と「大阪という都市」を比べていることになります。比べるものがそろっていません。that が抜けると、文が意味をなさなくなります。

もう1つは、数の取り違えです。

✕ The prices in Tokyo are higher than that in Osaka.
○ The prices in Tokyo are higher than those in Osaka.

⚠ そして、数えられない名詞に one は使えません。

✕ I need some water. Can you get me one?
○ I need some water. Can you get me some?

one は「1つ、2つ」と数えられるものの代わりだからです。water や information には使えません。

one は a の代わり。it は the の代わり。that は the の代わりで、うしろに修飾語を連れてくる。

名詞が省かれた場所を、埋めながら読む力を手に入れる

長文では、同じ名詞はほとんど二度出てきません。代わりに one・it・that・those が置かれています。

この3語を見た瞬間に「何の代わりか」が分かると、文の骨組みが崩れません。とくに that of ~ / those of ~ は、比較を含む論説文で頻繁に出ます。

そして書くほうにも効きます。同じ名詞を2回書いてしまう答案は、それだけで幼く見えます。1語置き換えるだけで、文が締まります。

例文で確かめる

I've lost my umbrella. I have to buy one.

傘をなくしました。新しいのを買わなければいけません。

one = an umbrella。まだ持っていない、別の傘のことです。

I've lost my umbrella. I have to find it.

傘をなくしました。それを見つけなければいけません。

it = the umbrella。なくした、その傘そのものです。動詞が変わると答えも変わります。

The climate of Japan is milder than that of England.

日本の気候は、イギリスの気候より穏やかです。

that = the climate。うしろの of England だけが差し替わっています。

I like red apples better than green ones.

赤いりんごのほうが、緑のりんごより好きです。

ones = apples。複数の種類を受けるときは ones になります。

Before

one と it を、なんとなく語感で選んでいた。日本語ではどちらも「それ」なので、違いを意識したことがなかった。長文で that of ~ が出てくると、その that が関係代名詞なのか指示語なのか分からず、一度止まって読み返していた。

After

空所の前の動詞と冠詞を見るだけで決まるようになる。buy なら one、find なら it。さらに that of ~ / those of ~ を見た瞬間に「前の名詞の繰り返しだ」と分かるので、比較の文で読み返さなくなる。

For Teachers

明日の授業、この15分で「one / it / that の使い分け(前に出た名詞を、どう受け直すか)」が終わります

導入の問いかけ(3分)

  • 「「I've lost my umbrella. I have to buy ( ). one と it、どっちですか」」
  • 「「buy it にすると、何を買うことになりますか。日本語で言ってみてください」」
  • 「「では動詞を find に変えます。今度はどっちですか」」

板書はこの1行だけ

one=a+名詞(種類だけ) / it=the+名詞(そのもの) / that=the+名詞+修飾語

ペアワーク/全体討論(5分)

「隣の人と、この2文の違いを言葉にしてください」と言って、I have to buy one. と I have to find it. を並べて出します。3分。

「買う」と「探す」で答えが変わるところに気づけたペアが出たら、そこで全体に共有してください。気づかなくても構いません。「なくした傘を買う、って変ですよね」と一言添えれば、その場で全員が分かります。

日本語にしてみせるのが、いちばん速いです。

レベル別ミニ問題(5分)

標準

( )に one / it / that のいずれかを入れなさい。The weather in Okinawa is warmer than ( ) in Hokkaido.

答え:that(the weather の代わり。うしろに in Hokkaido という修飾語が付いています。ここを抜かすと「沖縄の天気」と「北海道」を比べることになってしまいます)

難関

誤りを1か所直しなさい。The rules of this school are stricter than that of my old school.

答え:that → those(受けているのは the rules で複数。単数の that は使えません。複数を受けるときは those になります)

出口チケット(2分)

「one と it を1つずつ使って、2文の短い会話を書いてください。動詞は自由です」

MAKE IT YOURS

AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。

あなたは大学入試英語の指導者です。one / it / that の使い分けについて、練習問題を6問作ってください。条件は次のとおりです。①空所に one・it・that・those のいずれかを入れる形式にする。②6問の内訳は、one が2問、it が2問、that または those が2問になるようにする。③that の問題では、うしろに of ~ や in ~ のような修飾語を必ず付ける。④6問のうち1問は、同じ英文で動詞だけを変えると答えが one から it に変わる、という対になった問題にする。⑤解答には、その語が「a + 名詞」「the + 名詞」のどちらの代わりかを必ず書く。⑥私が答えるまで解答を見せない。

動画で見る

名詞の代わりをする one / ones (BildungInteraktiv) 英語です。同じ名詞を繰り返さないために one や ones を置く仕組みを、短く説明しています。

確認クイズ

  1. Q1. 「My computer is too old. I'm thinking of buying a new ( ).」の空所に入るのはどれか。

  2. Q2. 「The streets in Kyoto are narrower than ( ) in Nagoya.」の空所に入るのはどれか。

よくある質問

one と it は、どう使い分ければいいですか?

one は「a + 名詞」の代わりで、種類だけを受けます。it は「the + 名詞」の代わりで、前に出てきたそのものを指します。I've lost my umbrella. のあとなら、buy one(新しい傘を買う)、find it(なくしたその傘を探す)のように、動詞によって答えが変わります。

比較の文に出てくる that は何ですか?

前に出た「the + 名詞」の繰り返しを避けるための that です。The climate of Japan is milder than that of England. の that は the climate を指します。単独では使えず、うしろに of ~ などの修飾語が必ず付きます。受けるものが複数のときは those になります。