must not と don't have to の違いは?禁止と不必要の分かれ目
入試対策講座|第58回
You must not go. と You don't have to go. は、形がよく似ています。ところが、前者は「行ってはいけない」、後者は「行かなくてもよい」で、意味はまったく別です。not がどこにかかるかで決まる理由と、過去の言い方まで解説します。
監修:原田高志(原田英語.com)
「宿題をやらなくてもいい」と「宿題をやってはいけない」。日本語なら、聞き間違える人はいません。ところが英語では、must not と don't have to を取り違えて、正反対の意味にしてしまう人が少なくありません。今日は、その分かれ目を1つの見方にまとめます。
なぜ must の否定は、「しなくていい」にならないのか
次の2つの英文を、日本語にしてみてください。
You must not use your phone here.
You don't have to use your phone here.
どちらも「ここでスマホを使うな」と訳したくなります。
ところが、1つ目は「使ってはいけない」、2つ目は「使わなくてもよい」です。
must と have to は、肯定ならほぼ同じ意味なのに、なぜ否定にすると別の意味になるのでしょうか。
考えられる答え
「必ずする」の反対は「しなくていい」だ、と考えたくなります。日本語の感覚では、自然な考え方です。 ただ、英語の must not は「しなくていい」とは訳しません。You must not tell Alice. は、「アリスに言ってはいけない」です。英語の辞書解説でも、must not は禁止を表すと説明されています。
肯定の文なら、この考え方でほぼ通ります。You must go. も You have to go. も、「行かなければならない」と訳せます。 ただ、否定にすると崩れます。Cambridge Dictionary のブログは、must not と don't have to の意味は「まったく別のもの」だと書いています。肯定で同じ意味でも、否定まで同じとは限りません。
must not は、「しない」ことが義務になる形です。You must not go. は、「行かない」ことが義務なので、「行ってはいけない」になります。 don't have to は、have to(義務)の前に not が付く形です。You don't have to go. は、「行く」義務が無くなるので、「行かなくてもよい」になります。 not が、動作にかかるか、義務にかかるか。この違いが、意味を分けています。
真相
must not は「しない」ことが義務(禁止)。don't have to と need not は、義務そのものが無い(しなくてもよい)。
must not + 動詞の原形(禁止)/ don't have to + 動詞の原形(不必要)/ need not + 動詞の原形(不必要)
3つの形を、「義務があるか」で整理します。
① must not + 動詞の原形 … 禁止(してはいけない)
You must not park here.(ここに駐車してはいけません)
「しない」ことが義務になるので、してよいかどうかの選択肢はありません。
② don't have to + 動詞の原形 … 不必要(しなくてもよい)
You don't have to park here.(ここに駐車しなくてもかまいません)
してもよいし、しなくてもよい、という意味です。
③ need not + 動詞の原形 … 不必要(しなくてもよい)
You need not park here.(同じ意味)
need not は、②と同じ意味で使えます。You needn't ~ と縮めることもあります。
過去と未来の言い方
must は現在の形しかありません。Cambridge Dictionary のブログも、過去や未来のことは have to か need to で言うと説明しています。
・過去の不必要 … We didn't have to wait.(待たなくてよかった)
・未来の義務 … You will have to show your ticket.(切符を見せなければならなくなる)
決め手は、文のあとに続く内容が「禁止の理由」か「しなくてもよい理由」かです。「規則違反だ」「危ない」なら must not、「休みだ」「もう済んでいる」なら don't have to です。
日本語の頭が、ここで邪魔をする
日本語の「〜なくてもいい」と「〜てはいけない」は、まったく別の言葉に見えます。ところが英語の must not と don't have to は、どちらも「must か have to に not が付いた形」に見えるので、日本語の言い分けの感覚が働きません。
そのため、どちらも「〜するな」と同じ箱に入れてしまうのです。
知らなかっただけで、あなたの理解力の問題ではありません。英語の否定は、not が付く位置で意味が決まります。must not は「しないことが義務」、don't have to は「義務が無い」。この2つの見方で覚えてください。
ここでつまずく
よくあるのは、don't have to を「〜してはいけない」と訳す誤りです。
✕ You don't have to run in the hall. = 廊下を走ってはいけない。
○ 廊下を走らなくてもかまいません。(走ってはいけない、は You must not run in the hall.)
もう1つは、過去のことに must を使う誤りです。
✕ I must go there yesterday.
○ I had to go there yesterday.(昨日、そこへ行かなければならなかった)
さらに、Must I ~? に No, you mustn't. と答える誤りも定番です。Must I ~?(〜しなければなりませんか)に「必要はない」と答えるときは、No, you needn't. か No, you don't have to. です。
禁止と許可を取り違えない力を手に入れる
注意書きや規則の文で、「してはいけない」のか「しなくてもよい」のかを、正反対に読み違えなくなります。
長文で、規則やルールの説明が出たとき、禁止か不必要かを正しく読めるので、内容一致問題で正反対の選択肢を選ばずに済みます。
例文で確かめる
You must not use your phone during the test.
テスト中にスマホを使ってはいけません。
must not は「しない」が義務。禁止を表す。
You don't have to wear a uniform on Saturdays.
土曜日は、制服を着なくてもかまいません。
don't have to は義務が無い。着てもよいし、着なくてもよい。
We didn't have to wait long, so we got to the show on time.
長く待たずに済んだので、ショーに間に合いました。
過去の不必要は didn't have to。must は過去形が無い。
You need not hurry. There is plenty of time.
急ぐ必要はありません。時間はたっぷりあります。
need not は don't have to と同じ意味。あとに「時間がある」と、しなくてもよい理由が続く。
Before
must not と don't have to を「どちらも〜するな」と覚えていて、空所補充では前後の文を読まずに、勘で選んでいた
After
あとに続く内容が「規則違反だ」なら must not、「休みだ」なら don't have toと、その場で決められる。過去のことなら had to、need not も同じ意味だと分かり、選択肢が1つか2つに絞れる
For Teachers
明日の授業、この15分で「must not と don't have to(need not)の使い分け(禁止と不必要)」が終わります
導入の問いかけ(3分)
- 「「この教室で、してはいけないことを1つ言ってください」と聞き、出てきた答えを、You must not ~. の形で板書します」
- 「「では、してもしなくてもよいことを1つ言ってください」と聞き、出てきた答えを、You don't have to ~. の形で板書します」
- 「「この2つは、日本語なら聞き間違えません。英語では、なぜ間違えやすいのでしょうか」と問いかけます」
板書はこの1行だけ
must not + 原形 → してはいけない(禁止)/ don't have to + 原形 → しなくてもよい(不必要)/ need not + 原形 → しなくてもよい/ 過去・未来 → had to・will have to
ペアワーク/全体討論(5分)
「隣の人と、学校のルールを3つ英語で言い合ってください。1つ目は禁止、2つ目はしなくてもよいこと、3つ目はどちらでもかまいません。言うときは、You must not ~. か You don't have to ~. のどちらかを使います」5分。
言い終えたら、相手に「その文の次に、『なぜなら規則だから』と続けても合いますか」と聞いてから、役を替えます。たとえば、You must not use your phone in class. なら、「規則だから」と合います。
レベル別ミニ問題(5分)
空所に入れなさい。You ( ) bring your lunch. The school will give you one.(must not / don't have to / must / can't)
答え:don't have to ※あとに「学校が昼食を出す」とあるので、持ってくる義務が無い。must not は禁止なので合わない
誤りを1か所直しなさい。We must not wait for him yesterday because the train was on time.
答え:must not → didn't have to ※過去のことに must は使えない。また、あとの「電車が時刻どおりだった」から、「待たなくてよかった」の意味なので、didn't have to
出口チケット(2分)
「明日は日曜日なので、早く起きなくてもよい」と「図書館では、大きな声で話してはいけない」を、それぞれ英語で書かせる
AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。
あなたは大学入試英語の指導者です。must not と don't have to(need not)の使い分けを確かめる練習問題を6問作ってください。条件は次のとおりです。①空所補充を4問、誤文訂正を2問にする。②そのうち2問は、あとに続く内容が「規則違反」か「休みだ・もう済んでいる」かで決まる問題にする。③1問は、過去のことを表す問題(had to・didn't have to)にする。④解答には、not がかかる場所について一言理由を添える。⑤私が答えるまで解答を見せない。
動画で見る
確認クイズ
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Q1. ( ) に入れるのに最も適切なものはどれか。You ( ) use your phone in the exam room. It is against the rules.(試験会場で携帯電話を使ってはいけない。規則違反だ)
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Q2. ( ) に入れるのに最も適切なものはどれか。Tomorrow is a holiday, so we ( ) get up early.(明日は休みなので、早く起きなくてもよい)
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Q3. ( ) に入れるのに最も適切なものはどれか。A: Must I finish the report today?(今日中に報告書を終わらせなければなりませんか)
B: No, you ( ). Tomorrow is fine.(いいえ、その必要はありません。明日でかまいません)
よくある質問
must not と don't have to は、何が違うのですか?
must not は「してはいけない」という禁止です。don't have to は「しなくてもよい」という不必要です。Cambridge Dictionary のブログも、この2つの意味はまったく別のものだと説明しています。
need not は、must not と同じ意味ですか?
違います。need not は don't have to と同じ、「しなくてもよい」の意味です。「してはいけない」と言いたいときは、must not を使います。
過去のことは、must not で表せますか?
表せません。Cambridge Dictionary のブログによると、must は現在の形しかなく、過去や未来のことは have to か need to で言います。「しなくてよかった」なら didn't have to です。