鯨構文とは?no more A than Bの意味と訳し方
入試対策講座 第15回
A whale is no more a fish than a horse is. は『クジラは馬より魚じゃない』と直訳すると、意味の通らない日本語になります。今日は、通称『鯨構文』と呼ばれる no more A than B の正体を、謎解き形式で見ていきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
A whale is no more a fish than a horse is. という文を見たことはありますか。単語はすべて簡単なのに、直訳すると意味が通りません。この有名な構文には、比較級とはまったく違う仕組みが隠れています。今日はこの謎から、no more A than B の読み方を見ていきましょう。
no more ~ than は、なぜ『よりも多い』の否定として訳すと誤りになるのか
次の文を見てください。
A whale is no more a fish than a horse is.
no more ~ than を『~ほど多くない』という比較級の否定だと考えると、『クジラは馬ほど魚ではない』という、意味の通らない日本語になってしまいます。クジラも馬も、そもそもどちらも魚ではありません。なぜこの文はこんな形をしているのでしょうか。
考えられる答え
この読み方だと、『クジラは馬ほど魚ではない』となり、どちらも魚ではないのに、まるで魚に近い順番があるかのような、おかしな日本語になります。量を比べる文ではないというのが、そもそもの見落としです。
than 以下が基準になっているのは正しい方向です。ですが、なぜ『基準にする』と『クジラは魚ではない』が結びつくのか、ここまでではまだ説明できていません。
a horse is a fish(馬は魚だ)が誤りであることは、誰も疑いません。no more A than B は、この『誰の目にも明らかに0点』を基準として持ち出し、『Aもそれとまったく同じ0点だ』と強く言い切るための構文です。ここに真相があります。
真相
no more A than B は、量を比べる文ではない。Bという『誰の目にも明らかにXでないもの』を基準にして、『AもBとまったく同じくXではない』と強く言い切るための構文。
A is no more X than B is (X). = AがXでないのは、BがXでないのと同じだ(AもBも同様にXではない)
no more A than B を分解すると、こうなります。
A whale is no more a fish than a horse is (a fish).
(クジラが魚でないのは、馬が魚でないのとまったく同じだ=クジラは断じて魚ではない)
ポイントは、than のうしろに来る内容(a horse is a fish)が、誰も疑わない『明らかに誤り』だという点です。『馬が魚だ』というのは、議論するまでもなく誤りです。no more A than B は、この『議論の余地がない0点』を基準として持ち出し、『Aの位置も、その0点とまったく同じ高さだ』と主張します。
だから、Aの位置=0点、つまり『Aもまったく~ではない』という、かなり強い否定の意味になるのです。日本語には『AがXでないのは、BがXでないのと同じだ』とそのまま訳すのがいちばん誤解がありません。
身近な例で見てみましょう。
・I am no more a genius than you are (a genius).
(私が天才でないのは、あなたが天才でないのと同じだ=私は天才なんかじゃない)
ここでも than 以下(you are a genius=あなたが天才だ)は、話し手にとって『明らかに誤り』という前提で使われています。その0点を基準に、『私も同じ0点だ=天才ではない』と言っているわけです。
⚠ 反対の形として no less A than B(AはBに劣らずXだ)もあります。こちらは『BがXであるのと同じくらい、AもXだ』という肯定の意味になります。
・She is no less kind than her mother is.
(彼女は母親に劣らず親切だ)
ここでつまずく
no more ~ than と、見た目のよく似た not more than を混同する受験生がいます。not more than は文字どおりの数量比較で、『~以下』という意味です(not more than 10 people=10人以下)。no more ~ than は数量の比較ではなく、『Bと同じくらい~ではない』という同格の否定。more の前に no があるか not があるかで、まったく別の構文になります。
同格否定判定能力を手に入れる
no more A than B を見た瞬間に、量の比較ではなく『than以下を基準にした強い否定』だと認識できるようになります。than のうしろに来ている内容が『明らかに誤り』かどうかを確認するだけで、直訳のわなを避けられます。
例文で確かめる
A whale is no more a fish than a horse is.
クジラが魚でないのは、馬が魚でないのと同じだ(=クジラは断じて魚ではない)。
I am no more a genius than you are.
私が天才でないのは、あなたが天才でないのと同じだ(=私は天才なんかじゃない)。
This machine is no more intelligent than a calculator is.
この機械が知能を持たないのは、電卓が知能を持たないのと同じだ(=この機械にまったく知能はない)。
She is no less kind than her mother is.
彼女は母親に劣らず親切だ。
Before
no more ~ than を見ると、量を比べる比較級の一種だと思い、直訳して意味が取れなくなっていた
After
than のうしろに『誰の目にも明らかな誤り』が来ていたら、それを基準にした強い否定の構文だと、その場で見分けられる
For Teachers
明日の授業、この15分で「no more A than B(鯨構文)」が終わります
導入の問いかけ(3分)
- 「「A whale is no more a fish than a horse is. この文、直訳するとどうなる? 変じゃない?」」
- 「「a horse is a fish って本当だと思う人?」」
- 「「than のうしろに、絶対に誤りだと分かることを置く意味、考えてみて」」
板書はこの1行だけ
no more A than B=Bという『明らかな0点』を基準に、Aも同じ0点だと言い切る構文
ペアワーク/全体討論(5分)
ペアの片方に no more ~ than を使った英文カード、もう片方にその日本語訳(直訳の誤答と正しい訳の2種類)を配り、「than のうしろは、明らかに正しい? 明らかに誤り?」と交互に確認させる。教師は机間巡視しながら「than の後ろは0点、じゃあAは?」と声をかける。
レベル別ミニ問題(5分)
This bridge is no more dangerous than that one is. の than 以下では、ある語が省略されている。補うとどれになるか。①dangerous ②a bridge ③not dangerous
答え:①dangerous(補うと that one is dangerous。『あの橋は危険だ』が明らかに誤り、という前提が基準になる。だから『この橋も同じく危険ではない』という強い否定になる)
次の文を日本語に訳せ。He is no more able to speak French than I am.
答え:彼がフランス語を話せないのは、私が話せないのと同じだ(=彼はフランス語をまったく話せない)。/ than以下(I am able to speak French)は話し手にとって明らかに誤りという前提で使われている。
出口チケット(2分)
no more A than B を使って、『自分が~でないのは、〇〇が~でないのと同じだ』という文を1つ書いてみよう。
AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。
no more A than B の理解を練習したいときに使えます。①以下の日本語を英語にしてください:「彼が嘘つきでないのは、私が嘘つきでないのと同じだ」②no more A than B の形を使って書いてください。③than のうしろがなぜ『明らかな誤り』として選ばれているのかも説明してください。
動画で見る
確認クイズ
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Q1. "He is no more honest than his brother is." の意味として最も適切なものはどれか。
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Q2. "There were not more than ten people at the meeting." の意味として正しいものはどれか。
よくある質問
no more A than B と no less A than B は、どう覚え分ければいいですか。
no more A than B は『Bと同じく~ではない』という否定、no less A than B は『Bに劣らず~だ』という肯定です。than以下が明らかに誤りなら否定(no more)、明らかに正しいなら肯定(no less)と考えると区別しやすくなります。
この構文はなぜ『鯨構文』と呼ばれるのですか。
A whale is no more a fish than a horse is.(クジラは魚ではない)という例文が、日本の学習参考書で長く使われてきたためです。クジラを主語にした例文が定番になり、この通称が定着しました。