関係代名詞 what に先行詞が無い理由|犯人は飲みこまれた語
入試対策講座 第3回/謎解き式・先生の15分パックつき
What she said surprised me. の what は、疑問の what ではありません。前に名詞が無いのに立てるのはなぜか。この謎を解くと、what を使う位置も、which との書き分けも、一度で片づきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日も答えから入りません。関係代名詞には必ず先行詞が要るはずなのに、what にだけ無い。なぜ無くても成り立つのか。仮説を3つ立てて順に潰し、最後に先生がそのまま使える15分の授業案を置いておきます。
関係代名詞 what に、なぜ先行詞が無いのか
関係代名詞には、必ず前に説明される名詞(先行詞)が要ります。
the book which I read(私が読んだ本)… 先行詞は the book
ところが what だけ、前に何もありません。
What she said surprised me.(彼女が言ったことは、私を驚かせた)
前に名詞が無いのに、文の主語として立っています。しかも「何を」と訳すと、文が壊れます。
疑問の what でもなく、先行詞も無い。では、この what は何者なのでしょうか。
考えられる答え
形は同じですが、働きが違います。疑問の what は質問する語。ところが What she said surprised me. は質問していません。疑問符も付きません。同じ語に見えて、文の中での仕事が別物です。
訳としてはこれで通ります。ただし省略説には弱点があります。the thing を省略して which だけ残した形は存在しません。I like which he wrote. とは言えない。省略ではなく、別のことが起きています。
the thing(先行詞)と which(関係代名詞)が、1語のなかに畳み込まれている。だから前に名詞が要らない。ここに真相があります。
真相
関係代名詞の what は、先行詞を自分の体のなかに飲みこんだ関係代名詞です。what = the thing(s) which。前に名詞が要らないのではなく、前に置くべき名詞を、すでに自分が持っているのです。
What + S + V 〜.(=『Sが〜するもの/こと』という名詞のかたまりを作る)
関係代名詞の what は、他の関係代名詞と決定的に違う点が一つあります。それは、先行詞(説明される名詞)を、自分のなかに飲みこんでいるという点です。
他の関係代名詞(which / that / who)は、必ず前に名詞が必要です。the book which I read yesterday(私が昨日読んだ本)。この形では the book が先行詞で、which がそれを受けています。
ところが what は、その先行詞を自分の一語のなかに含んでしまっている。だから what = the thing(s) which と考えてかまいません。試しに書き換えてみます。
- ▼ What she said surprised me.
= The thing which she said surprised me.(彼女が言ったことは、私を驚かせた)
この正体を知ってしまえば、あとは応用でしかありません。what は前に名詞が要らないぶん、文のどんな位置にも自由に立てる名詞のかたまりとして動きます。
- ① 主語:What matters most is your health.(いちばん大切なのは健康だ)
- ② 目的語:I couldn't understand what he was saying.(彼が言っていることが理解できなかった)
- ③ 補語:This is what I have been looking for.(これこそ、私がずっと探していたものだ)
- ④ 前置詞の目的語:Be careful about what you post online.(ネットに投稿するものには気をつけて)
どれも「what+文=ひとつの名詞」の感覚で動いています。
入試最頻出の慣用表現も、この仕組みで一発です。
- ▼ what is called / what we call = いわゆる/〜と呼ばれるもの
He is what is called a walking dictionary.(彼はいわゆる歩く辞書だ)
- ▼ what S is / was = 現在/過去の S の姿・人格
My teachers made me what I am today.(先生方が、いまの私を作った)
- ▼ A is to B what C is to D = AのBに対する関係は、CのDに対する関係と同じ
Reading is to the mind what exercise is to the body.(読書と精神の関係は、運動と身体の関係と同じだ)
並べてみると、どれも『the thing which』を1語に圧縮しているという一点で説明できます。慣用表現として丸暗記するより、この一点を握っておくほうが、初見の文でも解けます。
日本語の頭が、ここで邪魔をする
日本語では、「もの・こと」はうしろから付きます。
「彼女が言ったこと」「私が欲しいもの」。名詞は文の最後に来る。
英語の what は、これを先頭でやってしまいます。日本語話者の目は「こと」に当たる語をうしろに探しに行き、見つからないので、文の構造が取れなくなる。
これは頭の使い方の癖であって、能力の話ではありません。日本語で20年近く読んできた目が、素直にうしろを探しているだけです。
直し方は1つ。what を見たら、その場で「〜すること」と口の中で言い、そこから動詞が出てくるまでを1つの名詞のかたまりとして囲う。囲えたら、そのかたまりが主語なのか目的語なのかを見る。この順番に変えるだけで、what の文は止まらなくなります。
ここでつまずく
最大の罠は、前に名詞があるのに what を使ってしまう誤りです。I like the book what he wrote.(誤) は、書いた本人ですら見返すと直したくなる、しかし試験本番で意外と出てしまうミス。前に名詞(先行詞)があったら、what ではなく which / that。反射のレベルで叩き込んでください。
もう一つ、関係代名詞の what と接続詞の that を混ぜないこと。I know that he is honest.(彼が誠実だと知っている)の that は「〜という事実」を導く接続詞。文の骨格から取り除けません。一方 what は「〜すること」で、what の中身が文の主語・目的語・補語のどれかになっている。両者は、文中でのはたらきも訳し方も別物です。
名詞のかたまりを、先に囲う力を手に入れる
what が読めるようになると、文の骨格を先に決めてから中身を読むという読み方が手に入ります。
What matters most is your health. のような文で、どこまでが主語かを一瞬で決められる。長文で主語が長い文に出会ったときの、あの止まり方が消えます。
この力は what だけのものではありません。that節、疑問詞節、関係詞節。名詞のかたまりを先に囲う癖は、そのまま英文読解の速度になります。
例文で確かめる
What she said made everyone in the room fall silent.
彼女が言ったことに、部屋の全員が黙り込んだ。
What she said が主語。the thing which she said と書き換えられる。
This is exactly what I have been looking for.
これこそ、まさに私がずっと探していたものだ。
what 節が補語。強調の副詞 exactly が前に付くのも定番。
He is what is called a self-made man.
彼はいわゆる、たたき上げの人物だ。
what is called = so-called と同じで、「いわゆる」の意味。
Books have made me what I am today.
本というものが、いまの私を作った。
what I am today = 今日の私という存在。同型の what he was(かつての彼)も頻出。
Reading is to the mind what exercise is to the body.
読書と心の関係は、運動と体の関係と同じだ。
A is to B what C is to D は、比喩を対で並べる文語表現。読解でも英作文でも重宝します。
Before
what を見ると「何を」と訳してしまい、文がつながらなくなって前に戻る。何度も読み直しているうちに時間だけが減っていた。
After
what = the thing(s) which。見た瞬間に「〜すること」と置き換え、かたまりの終わりまで囲う。戻り読みが減り、同じ文を一度で通せるようになる。
For Teachers
明日の授業、この15分で「関係代名詞 what」が終わります
導入の問いかけ(3分)
- 「the book which I read の which。前の名詞を消したら、文は成り立つと思う?」
- 「What she said surprised me. この what、質問してる? してないよね。じゃあ何をしてる?」
- 「I like the book what he wrote. これ、どこが間違い?」
板書はこの1行だけ
what = the thing(s) which。先行詞を、自分の中に飲みこんだ関係代名詞。
ペアワーク/全体討論(5分)
板書の1行を出す前に、ペアでこの書き換えをやらせます。
「What she said surprised me. を、which を使って書き換えて」(2分)
たいてい The thing which she said ~ が出てきます。出てきた瞬間に、この項目は終わっています。あとは「じゃあ what は、その2語ぶんを1語でやってるんだね」と受けるだけ。
出てこないクラスでは、黒板に The thing which ___ と書いて空所を埋めさせてください。先に答えの形を見せてから理由を言うほうが、この項目は早い。
レベル別ミニ問題(5分)
This is ( what / which ) I have been looking for.
答え:what。前に先行詞となる名詞が無いので which は置けない。
I like the movie ( what / which ) he made.
答え:which。前に the movie という先行詞があるので、飲みこみ済みの what は使えない。
次の2文の違いを説明しなさい。I know that he is honest. / I know what he is.
答え:前者の that は接続詞で「〜という事実」を導く(取り除けない)。後者の what は関係代名詞で、what he is 全体が know の目的語という名詞のかたまり。「彼の人となり」の意味。
What is important is not what you have but what you do. の主語はどこまでか。
答え:What is important までが主語。is が本動詞。not A but B の A・B もそれぞれ what のかたまり。かたまりを先に囲えば構造が見える。
出口チケット(2分)
what を使ってはいけないのはどんなときか。理由も添えて1行で書きなさい。
AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。
あなたは大学入試の英語講師です。私は高校2年生で、関係代名詞 what と which / that の使い分けが苦手です。条件:①先行詞の有無で判断する4択問題を8問作る ②8問のうち2問は接続詞 that と関係代名詞 what を混同させる問題にする ③2問は what のかたまりが主語になる長い文にする ④各問の解説では、必ず「先行詞があるか」に触れる ⑤最後に、私が長文で what のかたまりを見失わないための読み方を3つ挙げてください。
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確認クイズ
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Q1. 空所に入れるのに最も適切な語を選びなさい。 ( ) surprised us most was his sudden decision to quit.
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Q2. 次の英文の下線部と最も意味が近いものを選びなさい。 He is what is called a night owl.
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Q3. 空所に入れるのに最も適切な語句を選びなさい。 Her parents made her ( ) she is today.
よくある質問
疑問詞の what と関係代名詞の what はどう見分けますか?
疑問詞の what は『何?』と問いを立てるので、直訳すれば「何が/を〜」と入ります(間接疑問なら「〜が何なのか」)。関係代名詞の what は『〜すること・〜するもの』で、名詞のかたまりを作ります。見分けのコツは日本語に置き換えたとき「何?」の色が残るかどうか。I don't know what he wants. は「彼が何を欲しがっているか知らない」(疑問詞)とも「彼が欲しがっているものを知らない」(関係詞)とも訳せるので、文脈だけが決め手。両方の可能性を意識しておくことが大切です。
what と that / which を書き分けるコツはありますか?
前に先行詞(名詞)があるかどうかを見るだけです。前に名詞があれば that / which、前に何もなくて、後ろに続く文がまるごと『〜すること』の意味になるなら what。I don't like ○ what he said.(誤) 、 この文で○の位置には the thing が省略されているのではなく、what 自体が the thing を含んでいます。逆に I don't like the thing which he said.(正)は成立します。先行詞の有無、これが唯一の見分け方です。