分詞構文に主語が無い理由|犯人は、圧縮されたカンマ
入試対策講座 第1回/謎解き式・先生の15分パックつき
Walking along the street, I met an old friend. なぜ主語を書かなくても通じるのか。なぜ接続詞まで消えているのか。この2つを同時に説明できる犯人を突き止めると、6つの意味の暗記が「復元」に変わります。
監修:原田高志(原田英語.com)
分詞構文でつまずく人は、たいてい6つの意味を暗記しようとして溺れます。今日は逆から行きます。先に謎を出し、考えられる答えを1つずつ確かめていきます。理屈が手に入れば、6つの意味は覚えるものではなく、その場で復元するものになります。最後に、先生がそのまま使える15分の授業案を置いておきます。
分詞構文には、なぜ主語が無いのか
次の文を見てください。
Walking along the street, I met an old friend.(通りを歩いていたら、旧友に会った)
前半に、主語がありません。歩いていたのは誰なのか、書かれていない。
それだけではありません。「〜していたら」に当たる接続詞も消えています。When も Because も If も無い。
それなのに、読む側は意味を取り違えません。主語も接続詞も無いのに、なぜ通じるのでしょうか。
考えられる答え
主語については正しい説明です。ただし接続詞まで消えている理由が説明できません。主語が同じでも、When は残せるはずです。実際 When walking ~ という形も存在します。もう一段、深いところに理由があります。
硬い文章に多いのは事実ですが、飾りなら意味は変わらないはずです。しかし分詞構文は、どの接続詞で復元するかによって意味が変わります。時なのか、理由なのか、条件なのか。飾りが意味を変えることはありません。
分詞構文は、副詞節をまるごと圧縮した形です。接続詞と主語を落とし、動詞を -ing に変える。カンマは、圧縮した跡に残ったつなぎ目。ここに真相があります。
真相
分詞構文とは、「接続詞+主語」を落として圧縮した副詞節です。落とせるのは、副詞節の主語が主節の主語と同じときだけ。書かなくても誤解が起きないから、書かない。カンマは、圧縮のつなぎ目として残った印です。
Ving 〜, S + V 〜.(= When/Because/If/Though + S + V 〜, S + V 〜.)
分詞構文とは、「接続詞+主語」を省いて圧縮した副詞節のことです。
もとの文は When I walked along the street, I met an old friend. の2文構造。主節と副詞節で主語が同じ(どちらも I)だったので、副詞節の側から接続詞と主語を消し、動詞を -ing に変えて Walking along the street, I met an old friend. と圧縮しました。「-ing の意味上の主語=主節の主語」と決まっているから、書かなくても誤解が起きない。これが「主語を書かない」理由のすべてです。
逆に言えば、意味上の主語が主節と違うときは、消すと意味が壊れます。だから Night falling, we hurried home. のように主語を残す。これが独立分詞構文です。「特別な構文」として別に覚える必要はありません。圧縮のルールがそのまま適用できなかっただけの、同じ仕組みの別の顔です。
否定は not を -ing の直前に置いて Not knowing what to say, he kept silent.。主節より前の出来事なら Having + 過去分詞(完了分詞構文)で時間差を示します。どの形も「解凍したら元の副詞節に戻せるか」を確かめれば、正誤が自分で判定できます。
日本語の頭が、ここで邪魔をする
日本語は、「〜して、」だけで、時も理由も条件もぜんぶ言えてしまいます。
「歩いていて、会った」(時)。「疲れていて、休んだ」(理由)。「右に曲がって、まっすぐ行けば着く」(条件)。つなぎ方は1つなのに、意味は3つ。日本語話者は、これを文脈で読み分けています。
だから、接続詞の無い英文を見ても違和感がありません。違和感が無いことが、逆に落とし穴になります。
入試の分詞構文の設問は、まさに「どの接続詞で復元するか」を聞いてきます。日本語の頭で読むと意味は取れてしまうので、復元する習慣が育たない。ここで差がつきます。
対策は1つ。分詞構文を見たら、必ず接続詞を1つ選んで口の中で戻す。When なのか Because なのか。これを毎回やるだけで、設問に対応できます。
ここでつまずく
「-ing の意味上の主語=主節の主語」というルールを忘れると、Walking along the street, a dog bit me. のような文を書いてしまいます。これでは「散歩していたのは犬」となり、いわゆる懸垂分詞(dangling participle)です。ネイティブでもうっかりやる誤りですが、入試では確実に減点対象。書く前に「-ing しているのは誰か」を主節の主語と一致させる癖をつけてください。
文をひとかたまりに圧縮して読む力を手に入れる
分詞構文が復元できるようになると、長い文を、意味のかたまりごとに畳んで読むという読み方が手に入ります。
カンマの前までを1つの副詞のかたまりとして畳み、主節だけを骨として取る。英文の長さに気圧されなくなるのは、この畳み方が身についたときです。
さらに、書くほうでも効きます。英作文で2文をだらだら並べる代わりに、1文を圧縮して差し出せる。採点者が読みやすいと感じる文は、たいていこの圧縮ができている文です。
例文で確かめる
Walking along the street, I met an old friend of mine.
通りを歩いていて、旧友にばったり出会った。
= When I was walking along the street, I met ... の圧縮形。
Not knowing what to say, he kept silent for a while.
何と言えばよいかわからず、彼はしばらく黙っていた。
否定は not を分詞の直前に。never も同じ位置。
Having finished my homework, I went out for a walk.
宿題を終えてから、散歩に出かけた。
主節(went)より前の出来事なので Having + 過去分詞(動詞の3つめの形。written、broken など)。
The weather being fine, we decided to have lunch outside.
天気がよかったので、私たちは外で昼食をとることにした。
主節(we)と分詞の主語(The weather)が違うので主語を残す=独立分詞構文。
All things considered, her plan is the most realistic.
すべてを考え合わせると、彼女の案が最も現実的だ。
慣用化した独立分詞構文。considered は受動なので過去分詞。
Before
分詞構文は「時・理由・条件・譲歩・付帯状況・連続動作」の6つを覚えるものだと思っていた。覚えても、実際の文でどれなのかは選べなかった。
After
圧縮された副詞節を、接続詞を戻して解凍する。6つは覚えるリストではなく、戻すときの候補になる。候補から選ぶ作業なら、その場でできる。
For Teachers
明日の授業、この15分で「分詞構文」が終わります
導入の問いかけ(3分)
- 「Walking along the street, I met an old friend. 歩いてたのは誰? なんで書いてないのに分かる?」
- 「この文、接続詞も消えてるよね。When も Because も無い。なんで消せたんだろう」
- 「Walking along the street, a dog bit me. これ、何がおかしい?」
板書はこの1行だけ
分詞構文=副詞節の圧縮。接続詞と主語を落とせるのは、主語が主節と同じときだけ。
ペアワーク/全体討論(5分)
3番目の問いかけが、この授業でいちばん効きます。
「Walking along the street, a dog bit me. これ、何がおかしい?」(2分)
「犬が歩いてることになる」と気づいた生徒が出たら、その場で拍手してください。懸垂分詞は、説明されるより自分で見つけたほうが一生忘れません。
気づかないクラスでは、「歩いてたのは誰?」とだけ聞き直します。それでも出なければ、日本語で「通りを歩いていると、犬が私を噛んだ」と読み上げ、「日本語だと自然だよね。そこが落とし穴」と受けてください。日本語では成立してしまうことを、生徒自身に確認させるのが目的です。
レベル別ミニ問題(5分)
( Seeing / Seen ) the police officer, the man ran away. 正しいのはどちらか。
答え:Seeing。見たのは the man(主節の主語)で、能動の関係。
Not knowing what to say, he kept silent. の not の位置に注意して、否定の分詞構文の作り方を説明しなさい。
答え:not は -ing の直前。文頭に置く。doing not ~ とはしない。
Night falling, we hurried home. なぜ主語 Night が残っているのか。
答え:副詞節の主語(Night)が主節の主語(we)と違うため、落とすと意味が壊れる。これが独立分詞構文。
Having finished my homework, I went out. の Having は何をしているか。
答え:主節より前に起きたことを示す完了分詞構文。時間差を明示している。単なる Finishing では前後関係が出ない。
出口チケット(2分)
分詞構文で主語を書かなくてよいのはどんなときか。条件を1行で書きなさい。
AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。
あなたは大学入試の英語講師です。私は高校2年生で、分詞構文が苦手です。条件:①分詞構文を含む英文を10文作り、それぞれ適切な接続詞(when / because / if / though / and)を使って書き換えさせる問題にする ②10文のうち2文は独立分詞構文、2文は完了分詞構文、1文は懸垂分詞の誤文にする ③各文の解説では「主語が主節と同じか」を必ず確認する ④誤文については、なぜ誤りなのかを日本語訳を添えて説明する ⑤最後に、私が長文で分詞構文に詰まらないための読み方を3ステップで書いてください。
確認クイズ
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Q1. 空所に入る最も適切な語句を選びなさい。 ( ) what to do next, he called his father for advice.
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Q2. 次の文を分詞構文に書き換えたとき、最も自然なものを選びなさい。 As it was written in easy English, the book was easy to read.
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Q3. 下線部の Having の役割として最も正しいものを選びなさい。 Having lived in London for ten years, she speaks English fluently.
よくある質問
分詞構文の意味は6つあると言われますが、どうやって見分けますか?
文脈で決めますが、実務上は「時(〜するとき)」で訳して意味が通れば時、通らなければ理由・条件・譲歩の順に試す、が最速です。and でつないで「そして〜」と訳せる場合は付帯状況(同時進行)です。訳語より、主節との論理関係のほうを優先してください。
Being sick, he stayed home. の Being はよく省略されると聞きますが、なぜですか?
分詞構文の Being/Having been は情報量がほぼゼロなので、書き言葉ではしばしば省かれます。省くと Sick, he stayed home. のようになり、一見「形容詞が突然置いてある」ように見えますが、これは分詞構文の名残です。入試の並べ替えで狙われます。