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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
GRAMMAR 第42回 標準 読了 9分

場所の副詞句で始まる倒置の味|なぜ主語が後ろへ回るのか

入試対策講座|第42回

On the hill stood an old church. 主語と動詞がひっくり返っているのに、否定語はどこにもありません。倒置は否定語のときだけ、と覚えている人は、この形で必ず止まります。ひっくり返る理由は、文法ではなく読者の頭の側にありました。

監修:原田高志(原田英語.com)

倒置といえば、Never have I seen... のような否定語の形を思い浮かべる人が多いと思います。ところが入試の長文には、否定語がひとつも無いのにひっくり返っている文が、ふつうに出てきます。今日はその理由を解きます。

否定語が無いのに、なぜ主語と動詞がひっくり返るのか

次の文を見てください。

On the hill stood an old church.(丘の上に、古い教会が立っていた)

主語は an old church、動詞は stood。ところが動詞のほうが先に来ています

倒置は否定語が文頭に出たときに起きる、と習ったはずです。Never have I seen such a thing. のように。

ですがこの文には、否定語がひとつもありません。それなのに、ひっくり返っている。

なぜでしょうか。

考えられる答え

仮説1 詩や小説の中だけの、古い言い方だから

たしかに、この形は物語や描写でよく見かけます。「古めかしい表現なのだろう」と思うのは自然です。 覚えなくても、訳せば意味は取れます。丘の上に教会が立っていた。それで読み進められます。 ですが、入試はここを聞いてきます。「この文の主語はどれか」という設問が、実際に出るのです。訳せても、主語を指させなければ点になりません。 そして何より、この形は現代の英文にもふつうに出ます。古い言い方ではありません。

仮説2 文頭に副詞句が出たら、いつも倒置になる

半分当たっています。たしかに副詞句が前に出たときに起きる現象です。 ですが、これでは説明しきれません。Yesterday I met him. も、文頭に副詞が出ています。それでも倒置は起きません。 ひっくり返る副詞句と、ひっくり返らない副詞句があるのです。その線がどこにあるのかを、この仮説は言えていません。

仮説3 新しい情報を、文の終わりに置きたいから

英語の文には、情報の並べ方の決まりがあります。 すでに分かっていることを先に、新しいことをあとに。 On the hill は、読者がもう知っている場所です。前の文で丘の話が出ているはずです。一方 an old church は、ここで初めて出てくるものです。冠詞が a であることが、その証拠になっています。 だから、知っている場所を先に、初めて出るものを後ろに。その結果として、動詞が真ん中に残り、主語が最後へ回ります。 文法が主語を動かしたのではありません。読者に見せる順番が、主語を動かしたのです。

真相

倒置

この倒置は、新しい情報を文の終わりに置くために起きています。否定語とは関係がありません。

場所の副詞句 + V + S

英語は、文の終わりに重いものを置きます。

これを情報の流れと呼びます。古い情報が前、新しい情報が後ろ。日本語にも似た感覚はありますが、英語のほうがずっと厳格です。

On the hill stood an old church.
古い情報(丘)→ 動詞 → 新しい情報(古い教会)

では、なぜ Yesterday I met him. は倒置しないのか。

理由は2つあります。

1つは、Yesterday が「場所」ではなく「時」を表す副詞だからです。この倒置が起きるのは、場所や方向を表す語句が文頭に出たときに限られます。

もう1つは、主語が I だからです。I は代名詞で、聞き手がもう知っている人を指します。後ろへ回して見せる必要が、どこにもありません。

⚠ ここが決定的です。主語が代名詞のときは、この倒置は起きません

✕ On the hill stood it.
○ On the hill it stood.

代名詞は「もう知っているもの」なので、後ろへ回す必要がないからです。

倒置が起きる動詞にも、かたよりがあります。

stand、lie、sit、come、go、live、hang、remain。「ある、いる、現れる」に近い動詞ばかりです。

In the distance came a train.(遠くから列車が来た)
Under the tree lay a small dog.(木の下に小さな犬が横たわっていた)
Here comes the bus.(ほら、バスが来た)

最後の Here comes ~ は、会話でそのまま使う形です。学校で習う決まり文句が、実は同じ仕組みでできています。

日本語の頭が、ここで邪魔をする

日本語は、主語の位置をほとんど気にしません

「丘の上に古い教会が立っていた」
「古い教会が丘の上に立っていた」

どちらも自然で、意味も同じです。日本語には「は」と「が」があり、そちらが情報の新旧を運んでくれるからです。教会「が」の「が」が、それは新しい情報ですよ、と教えてくれています。

英語には、その助詞がありません。だから語順そのものに、その仕事をさせているわけです。

つまり、倒置が分かりにくいのではありません。日本語が助詞で済ませていることを、英語は順番で示している、というだけの違いです。理解力の問題ではありません。

ここでつまずく

いちばん多い誤りは、動詞を主語だと思いこむことです。

Into the room walked a tall man.

✕「部屋の中へ歩くことは、背の高い男だった」
○「部屋の中へ、背の高い男が入ってきた」

walked を主語のように読んでしまうと、文がどこにも着地しません。

もう1つは、主語が長いときに見失うことです。

At the top of the stairs stood a woman in a long black coat.

主語は a woman in a long black coat の全部です。stood のうしろを、名詞のかたまりごと拾ってください

⚠ そして代名詞。Down the street it ran. は倒置しません。it が主語のときは、ひっくり返らないと覚えておけば、迷う文が減ります。

英語は、初めて出るものを文の最後に置く。だから主語が後ろへ回る。

文の最後から主語を拾う力を手に入れる

長文で、副詞句から始まる文に出会ったとき、「主語は後ろにあるかもしれない」と構えられるようになります。

そして逆向きにも効きます。筆者がいちばん言いたいものは、文の終わりにある。この感覚があると、下線部和訳でも内容一致でも、どこを見ればよいかが決まります。

読む速度そのものが上がる、数少ない文法項目です。

例文で確かめる

On the hill stood an old church.

丘の上に、古い教会が立っていました。

主語は an old church。a が付いているので、ここで初めて出てくるものです。

Here comes the bus.

ほら、バスが来ましたよ。

会話の決まり文句ですが、仕組みは同じ倒置です。

Under the tree lay a small dog.

木の下に、小さな犬が横たわっていました。

lie(横たわる)の過去形は lay。lay(置く)と混同しないでください。

Down the street it ran.

それは通りを駆け下りていきました。

主語が代名詞の it なので、倒置していません。ここが見分けの決め手です。

Before

倒置は否定語が文頭に出たときだけだと覚えていた。だから On the hill stood an old church. のような文に出会うと、何が起きているのか分からず、stood を主語のように読んで意味が取れなくなっていた。主語を問う設問では、いつも文の前半から探していた。

After

副詞句で始まる文を見たら、主語を文の終わりから探すようになる。しかも「新しい情報が後ろ」と分かっているので、筆者がそこで何を出したかったのかまで読める。主語を問う設問で、探す場所を間違えなくなる。

For Teachers

明日の授業、この15分で「場所・方向を表す副詞句が文頭に出たときの倒置」が終わります

導入の問いかけ(3分)

  • 「On the hill stood an old church. この文の主語はどれですか」
  • 「否定語、どこにもないよね。それなのにひっくり返ってる。なぜだと思う?」
  • 「ヒントは、a church の a です。この a が何を言っているか」

板書はこの1行だけ

古い情報 → 動詞 → 新しい情報 / 主語が代名詞なら、ひっくり返らない

ペアワーク/全体討論(5分)

「では隣の人と、この2文を見比べてください」と言って、On the hill stood an old church. と On the hill it stood. を並べて配ります。「どちらも正しい英語です。何が違いますか」と聞いて3分。冠詞の a と代名詞の it に気づけたペアが出たら、そこで全体に共有してください。気づかなくても構いません。「a は初めて出るもの、it はもう知っているもの」と言えば、その場で全員の顔が上がります

レベル別ミニ問題(5分)

標準

Into the room walked a tall man in a gray suit. の主語を抜き出しなさい。

答え:a tall man in a gray suit(walked が動詞。主語は in a gray suit まで含めた名詞のかたまり全部です)

難関

「木の下に、1匹の小さな犬が横たわっていた」を、倒置の形で英語にしなさい。

答え:Under the tree lay a small dog.(lie の過去形は lay。場所の副詞句を先頭に出し、動詞、主語の順に並べます)

出口チケット(2分)

「場所を表す語句で始まる文を、倒置の形で1つ書いてください。主語には必ず a か an を付けること」

MAKE IT YOURS

AIに貼ると、この項目だけを狙った練習問題が、あなた用に出てきます。

あなたは大学入試英語の指導者です。場所の副詞句が文頭に出たときの倒置について、練習問題を6問作ってください。条件は次のとおりです。①英文を示して、主語を抜き出させる形式にする。②主語には必ず修飾語を付けて、2語以上のかたまりにする。③6問のうち1問は、主語が代名詞のため倒置していない文を混ぜる(ひっかけ)。④動詞は stand, lie, sit, come, hang からちらす。⑤解答には、どこまでが主語かを示してから和訳を付ける。⑥私が答えるまで解答を見せない。

動画で見る

場所・方向を表す副詞のあとの倒置 (The English Channel) 今日扱った倒置を、英語の説明で確かめられます。例文の数が多いので、演習代わりにも使えます。

確認クイズ

  1. Q1. 「At the end of the corridor stood a tall wooden door.」の主語はどれか。

  2. Q2. この倒置が起きない文はどれか。

よくある質問

倒置は否定語が文頭に出たときだけではないのですか?

いいえ。場所や方向を表す副詞句が文頭に出たときにも起こります。On the hill stood an old church. のような形で、否定語はひとつも入りません。新しい情報を文の終わりに置くために、主語が後ろへ回っています。

この倒置が起きるかどうかは、どこで見分けますか?

主語を見てください。a や an の付いた名詞のように、初めて出てくるものなら倒置します。it や he のような代名詞が主語のときは倒置しません。動詞も stand、lie、sit、come のような「ある、いる、現れる」に近いものに限られます。