キツツキが脳震盪にならない理由|2022年の新発見
Why Don't Woodpeckers Get Headaches?
Easy Reading
キツツキは1日に何千回もくちばしを木に打ちつけますが、脳震盪を起こしません。長年『頭の中にクッションがある』と考えられてきましたが、2022年の実験で、実際には頭がクッションではなく1本のかたいハンマーのように動いていることが分かりました。では、なぜ脳は無事なのか。やさしい英文で読み解きます。
監修:原田高志(原田英語.com)
キツツキが木をつつく音を聞いたことはありませんか。あの勢いで頭を木に打ちつけたら、人間なら脳震盪を起こしてもおかしくありません。長年、科学者たちは『キツツキの頭にはクッションがある』と考えてきましたが、2022年の実験がその常識をひっくり返しました。今日は、その発見までの道のりを英文で読んでいきましょう。
英文
Why Don't Woodpeckers Get Headaches?
Have you ever wondered how a woodpecker can hammer its beak into a tree thousands of times a day without getting a headache?
Each strike is far stronger than the blow that gives a person a concussion, and woodpeckers repeat it up to twenty times a second.
For decades, scientists believed the answer was a built-in cushion: spongy bone that softened each blow before it reached the brain.
In 2022, a team led by biologist Sam Van Wassenbergh in Belgium decided to test that idea directly.
Filming six woodpeckers from three species, the researchers measured more than 100 pecks to see how fast the eyes slowed down.
If the skull really worked like a cushion, the eyes should decelerate more slowly than the beak.
Instead, the whole head slowed down together, moving like a single, stiff hammer rather than a soft-landing helmet.
In other words, a woodpecker's skull barely cushions the blow at all.
So why doesn't its brain get injured?
The real answer is simple: the brain is just too small and light to be shaken loose by the impact.
A person gets a concussion at around 135 g, but a single peck can pass 400 g.
The bird is safe because its brain is only about one-seventh as long as ours, so the pressure inside stays at 39 to 60 percent of the level that injures a human.
So next time you hear fast tapping on a tree trunk, remember: that tiny brain is protected not by a cushion, but by being tiny.
(255 words)
重要語句
| 語句 | 意味 | 英語の定義 |
|---|---|---|
| woodpecker | キツツキ | a bird that pecks holes in trees with its beak |
| cushion | クッション、衝撃をやわらげるもの | something soft that reduces the force of an impact |
| decelerate | 減速する | to slow down |
| concussion | 脳震盪 | a brain injury caused by a hard blow to the head |
| stiff | かたい、たわまない | hard and not bending or flexible |
全文和訳
キツツキが1日に何千回もくちばしを木に打ちつけながら、頭痛にならずにいられるのはなぜか、考えたことはありますか。1回の衝突は、人間が脳震盪を起こす強さをはるかに超えており、キツツキはそれを1秒間に最大20回も繰り返します。長年、科学者たちはその答えを『内蔵されたクッション』、つまり脳に届く前に衝撃をやわらげるスポンジ状の骨だと考えてきました。2022年、ベルギーの生物学者サム・ヴァン・ワッセンベルグ率いるチームが、その説を直接検証することにしました。3種6羽のキツツキを高速度カメラで撮影し、研究者たちは100回以上のつつきについて、目がどれくらいの速さで減速するかを測りました。もし頭骨が本当にクッションのように働いているなら、目はくちばしよりもゆっくり減速するはずです。ところが実際には、頭全体が一体となって減速し、まるで1本のかたいハンマーのように動いていました。つまり、キツツキの頭骨は衝撃をほとんどやわらげていなかったのです。では、なぜ脳は傷つかないのでしょうか。本当の答えは単純でした。脳そのものが小さく軽すぎて、衝撃で揺さぶられることがないのです。人間は約135G(重力の135倍の力)で脳震盪を起こしますが、1回のつつきは400Gを超えることもあります。それでもキツツキが無事なのは、脳の長さが人間の約7分の1しかないからです。中にかかる圧力は、人間が傷つく水準の4割から6割にとどまります。だから次に、木を速く叩く音を聞いたら思い出してください。あの小さな脳を守っているのはクッションではなく、小さいことそのものなのです。
コラム:『クッションではなく、ハンマーだった』キツツキの頭の新発見
長く信じられてきた『クッション説』
キツツキの頭には、衝撃をやわらげる『クッション』のような仕組みがあると、長いあいだ考えられてきました。頭骨の外側はかたい骨、内側はスポンジのような穴だらけの骨でできており、舌を支える『舌骨』という骨が、頭全体をぐるりと包むように伸びて、まるでシートベルトのように頭を支えているとされていたのです。
この『クッション説』は説得力があり、2011年には、この構造をまねて、強い衝撃がかかる場所で使う小さな電子部品を守る仕組みを作る研究まで行われました。かたい外側の骨をまねた金属のケース、舌骨をまねた弾力のある層、スポンジ状の骨をまねた微小なガラス粒を組み合わせ、60,000Gの衝撃を与える実験をしています。従来のかたい樹脂で固める方法では26.4%の部品が壊れたのに対し、キツツキをまねた仕組みで壊れたのは0.7%だけでした。
目の動きを1000分の1秒単位で追った実験
ところが2022年、ベルギーの生物学者サム・ヴァン・ワッセンベルグ率いるチームが、この『クッション説』を実験で確かめ直しました。3種6羽のキツツキを高速度カメラで撮影し、100回以上のつつきについて、目がどれくらいの速さで減速するかを測ったのです。
もし頭骨が本当にクッションのように働いているなら、くちばしの動きと目の動きにずれが生まれるはずでした。ところが実際には、くちばしも目も頭全体も、ほぼ同じタイミングで減速していました。まるで、頭全体が1本のかたいハンマーであるかのように。
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では、なぜ脳震盪を起こさないのか
頭骨がクッションになっていないのなら、なぜキツツキは脳震盪を起こさないのでしょうか。研究チームが出した答えは、意外にも単純なものでした。キツツキの脳が、あまりにも小さいからです。
人間は約135G(重力の135倍の力)で脳震盪を起こしますが、キツツキのつつきは400Gを超えることもあります。それでも無事なのは、脳の長さが人間の約7分の1しかないからです。脳が小さいほど、傷つくまでに耐えられる力は大きくなり、その差はおよそ7倍になります。研究チームの計算では、いちばん強く減速したときでも、脳の中にかかる圧力は人間が脳震盪を起こす水準の4割から6割にとどまっていました。クッションではなく、脳の小ささが、キツツキを守っていた、というのがこの研究の結論です。
『キツツキに学んだヘルメット』は、前提から作り直しになる
この発見は、ものづくりの側にも響きます。キツツキの頭骨をまねて衝撃を吸収する材料やヘルメットを作る研究は、2011年の電子部品の研究のように長く続けられてきました。ところが、その手本にしていた『キツツキの頭は衝撃を吸収している』という前提そのものが、間違いだったことになります。
研究を率いたヴァン・ワッセンベルグ氏は、キツツキをまねて衝撃を吸収するヘルメットを作るのはあまりよい考えではないと述べています。キツツキの体は、むしろ衝撃を吸収しないようにできているからです。吸収してしまえば、そのぶん木を掘る力が弱まります。
では、この研究から学ぶことは何もないのでしょうか。そうではありません。キツツキが無事なのは、頭の作りではなく脳が小さいからでした。人間の頭を守る道具を考えるときは、キツツキの頭の形をまねるのをやめて、脳の大きさが違えば、効く守り方も違うというところから考え直すことになります。
確認クイズ
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Q1. 本文によると、2022年の実験で分かったのはどんなことか。
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Q2. 本文によると、キツツキが脳震盪を起こさない本当の理由は何か。
よくある質問
キツツキは本当にまったく脳にダメージを受けていないのですか。
本文で紹介した2022年の研究は、つつく瞬間の衝撃と圧力を調べたものです。繰り返しの衝撃が長期的に体へどんな影響を与えるかは、今も研究が続いている分野です。