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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
READING 第37回 標準 読了 8分

時間が速く感じる由|大人になるほど1年が短い謎

Why Does Time Feel Like It Speeds Up as We Age?

Easy Reading

子どものころの夏休みは長かったのに、大人になった今は1年があっという間に過ぎる。そう感じたことはありませんか。1年という長さの感じ方が年齢で変わる理由を、算数・記憶・脳の働きという3つの角度から読んでいきます。

監修:原田高志(原田英語.com)

子どものころの夏休みはとても長く感じたのに、大人になったいまは1年があっという間に過ぎてしまう、ということはありませんか。今日は、同じ『1年』という長さが、年齢によってなぜ違う速さで感じられるのかを読んでいきます。

英文

Why Does Time Feel Like It Speeds Up as We Age?

Have you ever noticed that summer vacation felt longer when you were a child than it does now?

Many adults say the years seem to speed up the older they get.

One explanation is called the proportional theory.

A single year is a much bigger slice of a child's life than of an adult's life.

For a five-year-old, one year equals twenty percent of their life so far.

For a fifty-year-old, that same year is only two percent.

Because of this math, a year can feel about ten times shorter to an older person.

In 2005, researchers surveyed 499 people, aged 14 to 94, about how fast time felt to them.

They found little age difference over a week, but a clear difference over ten years.

The brain seems to store new experiences richly, while routine moments are barely recorded at all.

Childhood is full of firsts, so it leaves behind a thick stack of memories.

Adult life often settles into a routine, so fewer new memories form each year.

Looking back, a year with few memories can feel like it passed in a flash.

A third idea comes from physics rather than psychology.

In 2019, a Duke University professor proposed that aging bodies process visual images more slowly.

As neural pathways wear down, the brain captures fewer mental images every second.

All three ideas point to the same fix: new experiences can make time feel slower again.

(238 words)

重要語句

語句意味英語の定義
proportional theory 比例理論(年齢に占める1年の割合で時間の感じ方を説明する考え方) the idea that a year feels shorter as you age because it is a smaller fraction of your total life
routine 決まりきった日課、いつもと同じ毎日 the usual things a person does regularly, without much that is new
survey (人々に質問して)調査すること to ask a large group of people questions in order to learn about their opinions or experiences
neural pathway 神経の通り道(脳の中で信号が伝わる経路) a route in the brain along which electrical signals travel between nerve cells
process (情報を)処理する to receive information and work with it in the brain in order to understand it

全文和訳

子どものころの夏休みは、いまよりずっと長く感じられた、ということはありませんか。大人になればなるほど、1年が速く過ぎるように感じる、と話す人は少なくありません。その理由の1つは『比例理論』と呼ばれています。1年という長さは、大人の人生よりも子どもの人生のほうが、ずっと大きな割合を占めています。5歳の子どもにとって、1年はこれまで生きてきた人生の20パーセントにあたります。ところが50歳の人にとって、同じ1年はわずか2パーセントにしかなりません。この計算のせいで、同じ1年でも年配の人には10倍ほど短く感じられることになります。2005年、研究者たちは14歳から94歳までの499人に、時間がどれくらいの速さで流れると感じるかを尋ねました。1週間という短い期間では年齢による差はほとんどありませんでしたが、10年という長い期間では、はっきりとした差が見られました。脳は新しい経験を豊かに記憶する一方で、いつもと同じような瞬間はほとんど記憶に残していないようです。子ども時代は『はじめて』の連続なので、その分厚い記憶の束があとに残ります。大人の生活は決まりきった日々に落ち着いていくため、1年に作られる新しい記憶が少なくなります。振り返ったとき、記憶の少ない1年は、あっという間に過ぎたように感じられるのです。3つ目の説明は、心理学ではなく物理学から来ています。2019年、デューク大学のある教授は、体が年を取ると視覚の情報を処理する速さが遅くなると発表しました。神経の通り道が傷んでいくにつれ、脳が1秒間に捉える『心の中の映像』の数が減っていきます。3つの説明はどれも同じ答えにたどり着きます。新しい経験をすることで、時間の流れはまた遅く感じられるようになるのです。

コラム:1年が短くなっていく理由を、3つの角度から見る

比例理論:1年の『重み』は、毎年軽くなっていく

1年という長さそのものは変わりません。変わるのは、それが人生全体に占める割合です。5歳の子どもにとって1年は人生の20パーセントですが、10歳になると10パーセント、50歳では2パーセントまで下がります。同じ365日でも、人生に占める割合がどんどん小さくなっていくため、感覚としては年々短く感じられるというのが、この理論の考え方です。

499人への調査が見つけた、10年単位の違い

2005年、研究者のマーク・ヴィットマン氏とザンドラ・レーンホフ氏は、14歳から94歳までの499人を対象に、時間の流れをどう感じているかを尋ねる調査を行いました。1週間や1か月のような短い期間では、年齢による感じ方の差はほとんど見られませんでした。ところが10年という長い期間を振り返ってもらうと、年配の人ほど『あっという間だった』と答える傾向がはっきり現れました。この調査結果は、学術誌Psychological Reportsに発表されています。なぜ10年だけ差が出るのかについては、記憶の量から説明する考え方が知られています。脳は新しい経験を濃く刻みつける一方で、毎日繰り返される決まりきった瞬間はほとんど記憶に残しません。子ども時代は『はじめて』の経験に満ちているため記憶が厚く積み重なり、大人になって生活が決まりきったものになるほど、振り返ったときの記憶が薄くなっていく、というわけです。

物理学からの説明:脳が撮る『コマ数』が年々減る

デューク大学の機械工学教授エイドリアン・ベジャン氏は、2019年に学術誌European Reviewで、まったく違う角度からの説明を発表しました。年を取るにつれて、脳の中で信号が伝わる神経の通り道は長く、複雑になり、傷みも蓄積していきます。その結果、目から入った情報を処理する速さが遅くなり、脳が1秒間に捉える『心の中の映像』の枚数が減っていくというのです。子どものころは1秒間により多くの映像が記録されるため、同じ長さの時間でも中身が濃く、あとから振り返るとゆっくり進んだように感じられます。大人になると映像の枚数が減るぶん、同じ1秒がより短く感じられる、というのがベジャン氏の説明です。

動画で見る

なぜ年を取ると時間が速く感じるのかを、提唱者本人が解説する動画 (TEDx Talks) 本文で紹介した物理学からの説明を、研究者本人が話しています。英語です。

体感時間を取り戻すには、新しい1日を増やす

3つの説明に共通しているのは、『新しい経験の少なさ』が、時間を速く感じさせているという点です。逆に言えば、いつもと違う道を歩く、知らない店に入る、新しいことを1つ習い始める。そうした小さな『はじめて』を増やすだけで、記憶に残る量は増え、振り返ったときの体感時間は伸びます。今日1日の中に、昨日までとは違う行動を1つだけ入れてみてください。

確認クイズ

  1. Q1. 『比例理論』によると、50歳の人にとって1年が短く感じられる理由は何か。

  2. Q2. 2005年の調査で、年齢による時間の感じ方の差がはっきり現れたのはどんな期間だったか。

よくある質問

時間の流れを遅く感じるためには、どうすればいいですか。

本文で紹介したとおり、新しい経験を増やすことがすすめられています。いつもと違う道を歩く、知らない店に入るなど、小さな『はじめて』を1日の中に1つ増やすだけでも効果があるとされています。