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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
READING 第18回 基礎 読了 8分

自分をくすぐったいと感じない由|脳の予測の

Why Can't We Tickle Ourselves?

Easy Reading

友達に指でつつかれるとくすぐったくて大笑いするのに、自分の指で同じようにつついても、ほとんど何も感じません。この不思議な現象の裏には、脳の中で常に働いている『予測』の仕組みがあります。ロボットを使った実験も交えて見ていきます。

監修:原田高志(原田英語.com)

自分で自分をくすぐろうとしても、なぜかうまくいかない。そんな経験はありませんか。今日は、この身近だけれど不思議な現象を、脳の仕組みから見ていきましょう。

英文

Why Can't We Tickle Ourselves?

Have you ever tried to tickle yourself?

If you have, you probably noticed something strange: it doesn't work.

A friend can make you burst into laughter with a single poke, but the exact same poke from your own finger feels like almost nothing.

For a long time, nobody knew why.

Then scientists found a clue inside your brain.

A part of your brain called the cerebellum is always predicting what will happen next.

When you move your own hand, your cerebellum already knows the exact timing and location of the touch before it happens.

It sends a signal to the rest of your brain that basically says, "This touch is coming, and it's not a threat."

Your brain quietly turns down its response, so the tickle barely registers.

When someone else tickles you, your cerebellum has no warning.

The touch arrives as a surprise, and your brain reacts at full strength.

Scientists tested this idea with a simple robot.

The robot tickled people's hands, but with a short delay between their own movement and the robot's touch.

The longer the delay, the more ticklish the touch felt.

Remove the delay completely, and the tickle feels much weaker, just like tickling yourself with your own hand.

(205 words)

重要語句

語句意味英語の定義
cerebellum 小脳 the part of the brain that controls movement, balance, and timing
predict 〜を予測する to say or know what will happen before it happens
register (感覚が)感じ取られる to be noticed or felt clearly
threat 脅威、危険なもの something that might cause harm
delay (2つのことの間の)遅れ、ずれ extra time between one thing and another; when something happens later than expected
ticklish くすぐったい(触られ方について言う) (of a touch) making you want to laugh; producing a tickling feeling

全文和訳

自分で自分をくすぐろうとしたことはありますか。試したことがあるなら、不思議なことに気づいたはずです。うまくいかないのです。友達に指でつつかれただけで大笑いしてしまうのに、自分の指で同じようにつついても、ほとんど何も感じません。長いあいだ、その理由は誰にも分かっていませんでした。やがて科学者たちは、脳の中にその手がかりを見つけました。小脳と呼ばれる脳の部分は、常に次に何が起きるかを予測しています。自分の手を動かすとき、小脳はその接触が起きる前から、正確なタイミングと場所をすでに知っています。小脳は脳の他の部分に、『この接触はもうすぐ来る、危険ではない』という合図を送ります。脳はその反応を静かに弱めるので、くすぐったさはほとんど感じられません。誰か他の人にくすぐられるとき、小脳には何の予告もありません。その接触は不意打ちとしてやって来て、脳は全力で反応します。科学者たちは、シンプルなロボットを使ってこの仮説を確かめました。ロボットは人の手をくすぐりましたが、その人自身の動きとロボットの接触の間に、わずかな遅れを加えました。その遅れが長くなるほど、接触はよりくすぐったく感じられました。遅れを完全に無くすと、くすぐったさはぐっと小さくなり、自分の手で自分をくすぐったときと同じになりました。

コラム:くすぐったさの正体 〜脳の『予測』が生む不思議〜

『自分がした』という感覚が乱れると、くすぐったくなる

イギリスの神経科学者サラ=ジェイン・ブレイクモアたちの研究で、興味深い例外が見つかっています。幻聴や、『自分の考えや行動が自分のものだと感じられない』という症状のある患者では、自分で自分をくすぐっても、他人にくすぐられたときと同じくらいくすぐったく感じることが分かりました。分かれ目は、統合失調症かどうかという診断名ではなく、この症状があるかどうかでした。

これは、自分の動きと、その結果として起きる感覚を結びつける脳の働きが、うまく働いていないためだと考えられています。『自分がした』という感覚をつくる仕組みが乱れると、くすぐったさの感じ方まで変わってしまう。私たちが当たり前に持っている『自分の手が動いた』という感覚が、実は脳の働きに支えられていることを教えてくれる例です。

ロボットが教えてくれた、遅れの効果

本文で紹介したロボットの実験は、イギリスの大学の研究チームが行ったものです。参加者はロボットのアームを片手で動かし、その動きに合わせて、もう1台のロボットがもう一方の手のひらに触れる仕組みでした。遅れを入れずに再現すると、参加者が感じるくすぐったさはぐっと小さくなりました。

ところが、遅れが長くなるほどくすぐったさが増し、いちばん長い0.2秒の条件でもっともくすぐったく感じられました。遅れが生まれた瞬間、脳にとってその接触は『思っていたのと違うタイミングで来た=予測できなかったもの』に変わります。

なぜ、こんな仕組みがあるのか

そもそも、なぜ脳はわざわざ自分の接触への反応を弱めるのでしょうか。自分で起こした感覚をあらかじめ弱めておくと、外から来る予測できない刺激のほうが目立ち、区別しやすくなるからだと考えられています。外からの刺激は、虫に刺されたり、誰かに触られたりと、注意を向けるべき危険である可能性が高いからです

今日、自分の手のひらを自分でくすぐってみてください。くすぐったくならないはずです。そのとき脳は、『これは自分の動きだ』と先回りして感じ方を弱めています。

動画で見る

自分をくすぐれない理由を、脳科学の視点から解説する動画 (BrainStuff - HowStuffWorks) 小脳がどのように接触を予測し、反応を弱めているのか、アニメーションつきで説明しています。

確認クイズ

  1. Q1. 本文によると、なぜ自分で自分をくすぐっても、あまりくすぐったく感じないのか。

  2. Q2. 本文で紹介されたロボットの実験で分かったことは何か。

よくある質問

他人にくすぐられても平気な人がいるのはなぜですか。

くすぐったさの感じやすさには個人差があります。