太陽を見るとくしゃみが出る理由|2300年前からの謎
Why Do We Sneeze When We Look at the Sun?
Easy Reading
太陽を見るとくしゃみが出る人がいるのはなぜでしょうか。紀元前4世紀のアリストテレスは『熱』が原因だと考えましたが、17世紀のフランシス・ベーコンが簡単な実験でこれを覆しました。いまも遺伝子レベルで研究が続く、この『光くしゃみ反射』の謎を読んでいきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
晴れた日に外へ出た瞬間、くしゃみが出てしまったことはありませんか。今日は、この『太陽を見るとくしゃみが出る』という現象に、古代ギリシャの哲学者から現代の遺伝学者までがどう挑んできたのかを読んでいきます。
英文
Why Do We Sneeze When We Look at the Sun?
Have you ever stepped out into bright sunlight and immediately sneezed, for no clear reason at all?
This strange reaction has puzzled people for more than two thousand years.
In the fourth century B.C., the Greek philosopher Aristotle asked why looking at the sun seemed to make people sneeze.
He guessed that the heat of the sun was warming the nose and causing the sneeze.
About two thousand years later, the English philosopher Francis Bacon tested that idea in a simple way.
He stepped into the sunlight with his eyes closed, still feeling the heat on his skin, but he did not sneeze.
That told him the sneeze had something to do with light, not heat.
Today, doctors call this the photic sneeze reflex, or more playfully, ACHOO syndrome.
ACHOO stands for Autosomal Dominant Compelling Helio-Ophthalmic Outburst, a scientific name for a very ordinary sneeze.
Researchers believe that somewhere between 18 and 35 percent of people have this reflex.
It appears to run in families: if one of your parents has it, you have about a 50 percent chance of having it too.
The leading theory is that a bright light confuses the nerve signals around the eyes and nose, tricking the brain into starting a sneeze.
Drivers and pilots moving from shade into bright sunlight can be caught off guard by this sudden sneeze.
A question one philosopher asked more than two thousand years ago still doesn't have one single, complete answer today.
(244 words)
重要語句
| 語句 | 意味 | 英語の定義 |
|---|---|---|
| reflex | 反射(反応) | an automatic reaction of the body that happens without you thinking about it |
| philosopher | 哲学者 | a person who studies ideas about knowledge, truth, and how the world works |
| theory | 説、理論 | an idea that explains why or how something happens, based on careful thinking or study |
| nerve | 神経 | a thin fiber in the body that carries signals between the brain and other parts of the body |
| syndrome | 症候群 | a group of signs or reactions that occur together and are known by a particular name |
全文和訳
明るい日差しの中に出た瞬間、これといった理由もないのにくしゃみをしてしまった経験はありませんか。この不思議な反応は、2000年以上も前から人々を悩ませてきました。紀元前4世紀、ギリシャの哲学者アリストテレスは、太陽を見るとなぜくしゃみが出やすくなるのかと問いを立てました。彼は、太陽の熱が鼻を温めることでくしゃみが起こるのだろうと考えました。それから約2000年後、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンが、この考えをシンプルな方法で確かめました。彼は目を閉じたまま日差しの中に出て、肌には熱を感じながらも、くしゃみは出ませんでした。これにより、くしゃみの原因は熱ではなく光にあるらしいと分かったのです。今日ではこの現象は『光くしゃみ反射』、もっと洒落た呼び方では『ACHOO症候群』と呼ばれています。ACHOOは『常染色体優性・抑えがたい・太陽と目に関わる発作』という意味の頭字語で、ただのくしゃみに付けられた大げさな学名です。研究者たちは、人口の18%から35%ほどがこの反射を持っていると考えています。この体質は家系内で受け継がれるようで、両親のどちらかがこの反射を持っていれば、自分も持つ確率は約50%になります。有力な説によれば、強い光が目と鼻の周りの神経信号を混同させ、脳にくしゃみを始めさせてしまうのだといいます。日陰から急に強い日差しの中へ移動する運転手やパイロットは、この突然のくしゃみに不意を突かれることがあります。2000年以上前にある哲学者が立てた問いに、今日でもまだ、たった1つの完全な答えは出ていないのです。
コラム:『太陽を見るとくしゃみが出る』という謎が、2300年かけて少しずつ解けていった話
アリストテレスの『熱』説を、フランシス・ベーコンが目を閉じて覆した
紀元前4世紀に書かれたとされる『問題集』の中で、アリストテレスは『なぜ人は太陽を見るとくしゃみをしやすくなるのか』という問いを残しています。彼の答えは、太陽の熱で鼻の中が汗をかき、その湿り気を追い出そうとしてくしゃみが出る、というものでした。もっともらしく聞こえるこの説は、その後長いあいだ信じられていました。
ところが17世紀初め、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンが、この説を確かめる簡単な方法を思いつきます。目を閉じたまま太陽の光の中に出てみたのです。肌にはたしかに熱を感じましたが、くしゃみは出ませんでした。もし熱が原因なら、目を閉じていても鼻は同じように温められ、くしゃみが起きるはずです。それが起きなかったということは、きっかけは熱ではなく、目に光が入ることのほうにあると分かります。ベーコン自身は、光で目に涙がたまり、それが鼻に流れてくしゃみになると考えました。いまの研究では、この説明も正しくないとされています。
ふざけた名前の裏にある、まじめな遺伝の話
この反射には、ACHOO症候群という遊び心のある名前が付いています。正式には『Autosomal Dominant Compelling Helio-Ophthalmic Outburst(常染色体優性・抑えがたい・太陽と目に関わる発作)』の頭文字を取ったもので、くしゃみ1つに、ずいぶん大げさな学名が付けられているわけです。
名前はふざけていても、研究そのものはまじめです。医療機関の情報によれば、世界人口のおよそ18%から35%がこの反射を持っているとされ、両親のどちらかがこの反射を持っていれば、自分も持つ確率はおよそ50%になります。研究者たちは、たった1つの遺伝子ではなく、複数の遺伝子が組み合わさってこの体質を作り出していると考えていますが、なぜ光の刺激がくしゃみの信号に変わるのか、その仕組みはいまも完全には解明されていません。
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くしゃみは笑い話で終わらない。運転手やパイロットにとっての注意点
この反射は笑い話では済まないこともあります。トンネルから急に外の明るい光の中へ出た運転手や、雲の少ない空へ飛び立つパイロットが、この反射のせいで一瞬くしゃみに気を取られてしまうことがあると指摘されています。ほんの一瞬の出来事ですが、運転や操縦の場面では注意しておく価値のある体質です。
紀元前4世紀にアリストテレスが立てた問いは、フランシス・ベーコンの簡単な実験で一歩前進し、現代の遺伝学でさらに一歩解き明かされてきました。それでも、光の刺激がなぜくしゃみの信号に変わるのか、その最後の仕組みはまだ完全には分かっていません。次に晴れた日に太陽を見てくしゃみが出たら、2300年以上前から続く謎の続きを、自分の体で体験していることになります。
確認クイズ
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Q1. 本文によると、フランシス・ベーコンの実験で分かったこととして正しいのはどれか。
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Q2. 本文の内容と合っているのはどれか。
よくある質問
太陽を見るとくしゃみが出る人は、体のどこかがおかしいのですか。
いいえ、心配はいりません。本文で紹介した光くしゃみ反射(ACHOO症候群)は、世界人口のおよそ18%から35%が持つとされる、よくある体質の1つです。病気ではなく、遺伝で受け継がれる体の反応の個人差だと考えられています。