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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
READING 第10回 標準 読了 8分

猫が足から着地する理由を英語で読む

The Cat That Always Lands on Its Feet

Easy Reading 第10回

高いところから落ちた猫が、くるりと体をひねって足から着地する。あの一瞬の宙返りには、しなやかな背骨と内耳の仕組みが働いています。19世紀の科学者が写真で解き明かそうとした謎は、20世紀には宇宙飛行士の訓練にまで応用されました。

監修:原田高志(原田英語.com)

高いところから落ちても、猫はたいてい足から着地します。あれは運がいいだけなのでしょうか。今日は、猫の体に備わった『空中で向きを変える力』の正体を、英文で読んでみましょう。

英文

The Cat That Always Lands on Its Feet

Have you ever seen a cat fall from a low place and land safely on its feet?

This is not just good luck.

Cats have a special skill called the righting reflex.

It lets them turn their whole body in the air and land on all four paws.

Kittens start to show this skill at about three or four weeks old.

By nine weeks, most kittens can do it well.

So how does a cat turn around in the air without pushing against anything?

Part of the answer is in the cat's spine.

A cat's backbone is far more flexible than a human's.

Also, cats do not have a full collarbone.

This means the front half and the back half of a cat's body can twist almost separately.

First, the cat turns the front half of its body.

Then, it turns the back half in the same direction.

The cat's inner ear also plays an important role.

It has tiny fluid-filled tubes that sense which way is up.

These tubes send a very fast signal to the cat's brain.

The whole turning motion can happen in less than one second.

However, the righting reflex is not magic.

A falling cat needs at least about thirty centimeters of space to finish the turn.

And landing on its feet does not always mean landing safely, especially from a great height.

(228 words)

重要語句

語句意味英語の定義
righting reflex 立ち直り反射(体の向きを自動的に元に戻す反応) an automatic reaction that turns the body back to its normal position
spine / backbone 背骨 the line of connected bones down the middle of the back
flexible 柔軟な、よく曲がる able to bend or twist easily without breaking
collarbone 鎖骨 the bone that connects the arm (or front leg) to the body near the shoulder
inner ear 内耳 the part inside the ear that helps control balance
signal 信号 a piece of information sent from one part of the body to another

全文和訳

猫が低い場所から落ちて、無事に足から着地するのを見たことがありますか。これはただの幸運ではありません。猫には『立ち直り反射』と呼ばれる特別な能力が備わっています。この能力のおかげで、猫は空中で体全体の向きを変え、4本の足で着地できます。子猫は生後3〜4週間ほどでこの能力を見せ始めます。生後9週間までには、たいていの子猫が上手にできるようになります。では、猫は何も蹴らずに、どうやって空中で体の向きを変えるのでしょうか。答えの一部は、猫の背骨にあります。猫の背骨は、人間の背骨よりもはるかに柔らかく曲がります。また、猫には完全な鎖骨がありません。そのため、猫の体は前半分と後ろ半分をほぼ別々にひねることができます。まず、猫は体の前半分をひねります。続いて、後ろ半分を同じ向きにひねります。猫の内耳も、重要な役割を果たしています。内耳には、どちらが『上』かを感じ取る、液体で満たされた小さな管があります。この管が、猫の脳にとても速く信号を送ります。この一連の動きは、1秒もかからずに終わります。とはいえ、この立ち直り反射は魔法ではありません。落下中の猫が回転を終えるには、少なくとも約30センチの空間が必要です。そして、足から着地したからといって、常に無事とは限りません。特に高いところからの場合はなおさらです。

コラム:写真が解いた謎、宇宙が使った答え

一瞬の動きを、初めて『止めて』見た男

猫が空中で体をひねる様子は、あまりに速く、19世紀の人間の目では追いきれませんでした。それを初めて『止めて』見せたのが、フランスの科学者エティエンヌ=ジュール・マレーです。

1894年、マレーは1秒間に60枚の写真を連続で撮る技術(クロノフォトグラフィー)を使い、落下する猫の姿を1コマずつ記録しました。その写真は、それまでの予想を裏切るものでした。猫は、人の手を蹴って回転を始めているのではなく、何も蹴らずに、空中にいる間だけで体をひねっていたのです。

『何もないところで回る』という物理の謎

これは当時の物理学にとって、ちょっとした謎でした。何かを蹴ったり押したりしなければ、物は回転しないはずだからです。

答えが整理されるまでには、さらに何十年もかかりました。猫は体を『前半分』と『後ろ半分』の2つの部品に分け、それぞれを逆向きにひねることで、全体としては何も蹴らずに向きを変えていたのです。まるで、体の中だけで帳尻を合わせるような動きです。

猫のひねりが、宇宙飛行士の教科書になった

この『何もない場所で体の向きを変える』という技は、1960年代、まったく別の場所で必要とされました。宇宙です。

宇宙飛行士は、無重力の中で何かを蹴ることができません。1969年、アメリカのスタンフォード大学の研究者2人が、NASAの支援を受けて猫の動きを数式で分析し、人間が同じように体をひねって向きを変えられることを示しました。NASAはこの計算をもとに、無重力の中で体の向きを変える方法を宇宙飛行士の訓練に取り入れました。

身近な謎から、宇宙までの距離

落ちる猫を見て「なぜ足から着地するのだろう」と足を止めた人がいたからこそ、100年近くあとの宇宙飛行士の訓練につながりました。身近な『なぜ』を丁寧に確かめていくことが、思いもよらない遠くの場所で役に立つことがある。猫の宙返りは、そのことを教えてくれる小さな例なのかもしれません。

確認クイズ

  1. Q1. 猫が空中で体をひねるときの説明として正しいものはどれか。

よくある質問

どんな高さから落ちても猫は無事なのですか。

いいえ。むしろ低すぎる高さでは体を十分にひねれず、高すぎる高さでは強い衝撃を受けます。安全というわけではありません。