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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
READING 第24回 基礎 読了 8分

雨の匂いの由|petrichorという英語も一緒に覚える

Why Does Rain Smell So Good?

Easy Reading

雨が降り始めた瞬間に感じる、あの土っぽい匂い。英語では petrichor と呼ばれるこの匂いは、雨そのものではなく、乾いた間に地面へたまっていた油と細菌の物質が、雨粒の衝撃で空気中に運ばれることで生まれます。1964年に名付けられたこの語のしくみと、世界に伝わる香りの文化を見ていきます。

監修:原田高志(原田英語.com)

雨が降り出した瞬間、ふわっと土のような匂いを感じたことはありませんか。実はあの匂いには petrichor という名前がついていて、雨そのものではなく、雨が降る前から地面にあったものから生まれています。今日は、その匂いの正体を英文で読んでいきましょう。

英文

Why Does Rain Smell So Good?

Have you ever noticed a fresh, earthy smell right after it starts to rain?

Scientists have a special word for that smell: petrichor.

The word comes from Greek: petra means "stone," and ichor means "the blood of the gods."

Two Australian scientists created this word in 1964 to describe a smell that had no proper name.

Petrichor is not made by the rain itself, but by things already sitting on the ground.

During dry weather, plants slowly release tiny oils, and soil bacteria called actinobacteria produce a compound called geosmin.

These substances sit quietly on rocks and soil, waiting.

When a raindrop hits dry ground, it traps a tiny bubble of air.

That bubble shoots upward and bursts, launching oils and geosmin into the air as a fine mist.

Wind then carries that mist to your nose, so you smell rain before you even feel a drop.

Humans are extremely sensitive to geosmin.

We can detect geosmin at about five parts per trillion, an incredibly tiny amount.

That is why even a short, light rain after a dry spell can smell so strong.

Interestingly, heavy rain often smells weaker than a gentle shower.

Slow, soft raindrops trap and release more bubbles than fast, hard ones do.

Petrichor also fades once the ground is wet, because most of the oils and geosmin have already been released.

Next time you catch that smell, remember it was quietly forming on the ground long before the first drop fell.

(245 words)

重要語句

語句意味英語の定義
petrichor 雨上がりの土っぽい匂い the pleasant, earthy smell in the air after rain falls on dry ground
geosmin ゲオスミン(土のような匂いの化合物) a chemical compound that gives off a strong earthy smell
actinobacteria 放線菌 a group of bacteria living in soil that produce earthy-smelling compounds
compound 化合物 a substance made when two or more elements combine chemically
trap 閉じ込める to catch and hold something so it cannot escape

全文和訳

雨が降り始めた直後に、あの土っぽい爽やかな匂いに気づいたことはありませんか。科学者たちは、その匂いに petrichor(ペトリコール)という特別な名前をつけています。この語はギリシャ語に由来し、petra は「石」、ichor は「神々の血」という意味です。1964年、オーストラリアの2人の科学者が、それまできちんと名前のついていなかったこの匂いのために、この語を作りました。petrichor は雨そのものが作る匂いではなく、雨が降る前から地面にあったものから生まれます。乾いた天気が続くあいだ、植物はわずかな油を少しずつ出し、放線菌と呼ばれる土の中の細菌はゲオスミンという物質を作ります。これらの物質は、岩や土の上でじっと静かに待っています。雨粒が乾いた地面に落ちると、小さな空気の泡を閉じ込めます。その泡は上へはじけ飛び、油とゲオスミンを細かい霧のように空気中へ打ち上げます。風がその霧をあなたの鼻まで運ぶので、雨粒を肌で感じる前に、雨の匂いに気づくことがあります。人間はゲオスミンに対して、とても敏感です。私たちは1兆分の5という、想像もつかないほどわずかな濃さでもゲオスミンを感知できます。だからこそ、乾いた時期のあとの短い小雨でも、あれほど強く匂うのです。面白いことに、激しい雨のほうが、穏やかな雨より匂いが弱いことがよくあります。ゆっくり落ちる柔らかい雨粒のほうが、速くて強い雨粒よりも多くの泡を閉じ込め、はじけさせます。地面がすでに濡れていると petrichor は弱まっていきます。油とゲオスミンの多くが、すでに空気中へ出てしまっているからです。次にあの匂いに気づいたら、それが最初の一滴が落ちるずっと前から、地面の上で静かに準備されていたことを思い出してください。

コラム:匂いは、目に見えるものより先に届く

名前のなかった匂いに、名前をつけた科学者たち

1964年より前、雨上がりのあの匂いには、きちんとした名前がありませんでした。オーストラリアの科学者イザベル・ジョイ・ベアとリチャード・トーマスが、学術誌ネイチャーに発表した論文の中で petrichor という語を作り、はじめてこの匂いを科学の言葉で説明しました。

匂いの正体は、雨粒そのものではありません。乾燥した期間に植物が出す油と、土の中の放線菌が作るゲオスミンという物質が、雨粒の衝撃で空気中に弾き飛ばされることで生まれます。匂いのもとは、雨が降るずっと前から、すでに地面の上で準備されていたのです。

動画で見る

雨上がりの匂いの正体を化学の視点で解説する動画 (Reactions) アメリカ化学会(ACS)が運営するチャンネルです。あの雨上がりの匂いが何からできているのかを、化学の視点で解説しています。

インドには、雨の匂いだけを閉じ込めた香水がある

インド北部の町カンナウジでは、何世紀も前から mitti attar(ミッティ・アタール)と呼ばれる香水が作られています。mitti はヒンディー語で「土」を意味し、この香水は文字どおり土から作られる、世界でも珍しい香りです。

作り方はこうです。地元の土を円盤状に固めて素焼きにし、それを蒸留して出た香りの蒸気を、サンダルウッドの油に吸い込ませます。仕上がった香水は、まさに乾いた大地に最初の雨が降った瞬間の匂いそのものだと言われています。同じ petrichor という現象が、片方では科学の論文になり、もう片方では何世代も受け継がれる香水の技術になったわけです。

匂いに、心が先に反応することがある

雨の匂いに気づいた瞬間、なんとなく懐かしい気持ちになったり、少しほっとしたりすることはありませんか。匂いを感じ取る脳の部分は、記憶や感情を扱う部分のすぐ近くにあります。だからこそ、理由を考えるより先に、気持ちのほうが先に動くことがあるのです。

次に雨の匂いに気づいたら、その匂いが地面の上でどれだけ長く出番を待っていたかを、少しだけ思い出してみてください。なぜ匂うのかが分かると、同じ匂いでも感じ方が変わってきます。

確認クイズ

  1. Q1. 本文によると、petrichorの匂いのもとになる物質は、主にどこから生まれるか。

  2. Q2. 本文によると、なぜ穏やかな雨のほうがpetrichorの匂いを強く感じることがあるのか。

よくある質問

petrichorの匂いは、いつでも同じ強さで感じられますか。

本文で説明したとおり、petrichorの匂いは、雨が降る前の乾燥した期間が長いほど強く感じられ、地面がすでに濡れていると弱まります。また、ゆっくり降る穏やかな雨のほうが、激しい雨よりも強く感じられることがあります。