耳の虫(earworm)とは?曲が頭から離れない理由
Why Do Songs Get Stuck in Our Heads?
やさしい英文で多読 第16回
一度聞いただけの曲が、一日中頭の中でループする。そんな経験を、英語では earworm(耳の虫)と呼びます。もとは虫を指していたこの言葉が、なぜ音楽の話に使われるようになったのか。曲が頭から離れなくなる科学的な理由とあわせて読んでいきます。
監修:原田高志(原田英語.com)
CMソングやサビの部分が、気づけば何度も頭の中で流れている。そんな経験は誰にでもあると思います。この現象には、英語でちゃんとした名前が付いています。今日は、その名前の意外な由来と、曲が頭から離れなくなる理由を読んでいきます。
英文
Why Do Songs Get Stuck in Our Heads?
Have you ever had a song stuck in your head for an entire day?
Scientists have a name for this experience: an earworm.
The more official term is "involuntary musical imagery."
Almost 90 percent of people get an earworm at least once a week.
Most earworms are not a whole song.
They are usually just a short piece, about 15 to 30 seconds long.
This short piece is often the catchiest part of the song, called the "hook."
So why do these short pieces get stuck in our heads?
Researchers believe the brain uses something called a "phonological loop."
This loop connects the parts of your brain that process sound, memory, and emotion.
Once a melody enters this loop, your brain keeps replaying it, almost like a broken record.
Certain songs, especially ones with a simple but slightly unusual melody, seem to trigger this loop more easily than others.
Repetition also plays a big role.
Songs that repeat the same short phrase again and again tend to stick in our minds.
An earworm can also start because of a word, an image, or even a smell that reminds you of a song.
So how can you make an earworm stop?
One simple method is to listen to the whole song from beginning to end.
Another method is chewing gum, since it seems to interfere with musical memory.
If nothing works, there is still good news.
Earworms almost always fade away on their own, given enough time.
(246 words)
重要語句
| 語句 | 意味 | 英語の定義 |
|---|---|---|
| loop | 輪、繰り返し | something that happens again and again in the same pattern |
| involuntary | 不随意の、無意識の | happening without you choosing or controlling it |
| catchy | 耳に残る、覚えやすい | easy to remember and pleasant to listen to, especially about music |
| trigger | 引き起こす、きっかけとなる | to cause something to start happening |
| interfere | 妨げる、邪魔をする | to get in the way of something and stop it from working normally |
| fade away | 徐々に消えていく | to slowly become weaker until it disappears |
全文和訳
一日中、頭の中で同じ曲が流れ続けたことはありますか。科学者たちは、この現象にちゃんとした名前を付けています。earworm(耳の虫)です。もう少し正式な言い方は『不随意音楽イメージ』です。ほぼ90パーセントの人が、少なくとも週に1回はearwormを経験しています。ほとんどのearwormは、曲まるごとではありません。たいていは15秒から30秒ほどの、短い一部分だけです。その短い一部分は、たいてい曲の中でいちばん耳に残る、『フック』と呼ばれる部分です。では、なぜこの短い部分が頭に貼りついてしまうのでしょうか。研究者たちは、脳が『音韻ループ』と呼ばれる仕組みを使っていると考えています。このループは、音・記憶・感情を扱う脳の部分どうしをつないでいます。メロディーがいったんこのループに入ると、脳は壊れたレコードのように、それを繰り返し再生し続けます。シンプルでありながら、少し独特なメロディーを持つ曲は、とくにこのループを引き起こしやすいようです。繰り返しの多さも、大きな役割を果たします。同じ短いフレーズを何度も繰り返す曲は、頭に残りやすい傾向があります。earwormは、ある曲を思い出させる言葉や映像、あるいは匂いがきっかけで始まることもあります。では、どうすればearwormを止められるのでしょうか。1つの簡単な方法は、その曲を最初から最後まで丸ごと聴いてしまうことです。もう1つの方法はガムを噛むことです。音楽の記憶を妨げるようだと考えられています。どの方法もうまくいかなくても、良い知らせがあります。earwormは、時間さえあればほとんどの場合、自然に消えていきます。
コラム:『耳の虫』という名前を旅する
もとは、虫の名前だった
earworm という語は、もともと音楽とは何の関係もありませんでした。16世紀後半の英語で、earworm は earwig(ハサミムシ)、つまり虫そのものを指す言葉でした。耳の中に入り込む虫がいる、という誤った言い伝えから生まれた呼び名だと考えられています。
19世紀に入ると、この語はトウモロコシの穂に入り込んで食い荒らす、ガの幼虫を指す農業用語として使われるようになります。トマトや綿花も食い荒らすこの害虫が、19世紀から20世紀にかけて、英語のearwormのいちばん一般的な意味でした。
音楽の意味は、ドイツ語からの輸入品
いまの『頭から離れない曲』という意味は、実はドイツ語からの借り物です。ドイツ語にも Ohrwurm(オーアヴルム)という、同じくハサミムシを意味する語がありました。1950年代後半から60年代にかけて、ドイツ語圏の人々がこの語を、頭にこびりついて離れない曲を指す言葉として使い始めたのです。
英語話者がこのドイツ語の使い方に出会ったのは、1980年代初めのことでした。ドイツ語の Ohrwurm を、単語ごとにそのまま英語に置き換えたのが、いまの音楽的な意味の earworm です。同じ『虫』の名前が、英語とドイツ語で、少し違う道のりをたどって同じ場所にたどり着いたことになります。
CMソングが、とくに頭に残りやすい理由
テレビやネットのCMソングが、何日も頭から離れないという経験をした人は多いはずです。これは偶然ではありません。CMソングは、短く、同じフレーズを繰り返し、シンプルだけれど少し独特なメロディーになるよう、意図して作られていることが多いからです。
つまりCMソングは、研究者が『earwormになりやすい』と指摘する条件を、最初から狙って満たすように作られているわけです。曲が頭から離れないのは、あなたの記憶力のせいではなく、作り手の狙いどおりに脳が反応しているだけかもしれません。
次に曲が頭から離れないときは
次にearwormに悩まされたら、まずはその曲を最初から最後まで通して聴いてみてください。それでも消えなければ、ガムを噛んでみるのも1つの手です。
どちらもうまくいかなくても、焦る必要はありません。時間が経てば、ほとんどのearwormは自然に消えていきます。頭の中で鳴り続けるその曲が、実はドイツ語の虫の名前を借りた言葉で呼ばれている、ということを思い出すだけでも、少し気が紛れるかもしれません。
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確認クイズ
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Q1. earworm という語について、本文の内容として正しいものはどれか。
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Q2. 本文で紹介されている、earwormを止める方法として正しいものはどれか。
よくある質問
earworm はどうして起こるのですか。
研究者たちは、脳の中の『音韻ループ』という仕組みが関係していると考えています。音を処理する部分と、記憶や感情を扱う部分がつながり、メロディーが繰り返し再生され続けることで起こるとされています。
earworm という言葉は、もともと何を指していましたか。
もともとは earwig(ハサミムシ)という虫を指す言葉で、19世紀にはトウモロコシを食い荒らすガの幼虫を指す農業用語としても使われていました。いまの音楽的な意味は、1980年代にドイツ語のOhrwurmから取り入れられたものです。