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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
COLUMN 第28回 標準 読了 4分

soccer と football の違いは?soccer はイギリス生まれ

はらだコラム

soccer と football の違いは、競技の違いではありません。呼ぶ人の国の違いです。しかも soccer はアメリカ生まれの言葉ではなく、1863年にできた the Football Association の association を、イギリスの大学生が短くして作った語でした。作った国では1980年ごろから使われなくなり、海の向こうで残っています。日本サッカー協会の英語名が Japan Football Association であることまで、出典つきでたどりました。

監修:原田高志(原田英語.com)

サッカーの試合を英語で見ると、イギリスでは football、アメリカでは soccer と呼ばれます。同じ競技です。

日本語の「サッカー」は、このうち soccer のほうから来ました。アメリカで生まれた言い方だと思っている人は、多いと思います。

違います。soccer を作ったのは、イギリスの大学生です。

soccer は、association を短くした語です

1863年10月26日、ロンドンで the Football Association(フットボール協会)ができました。世界でいちばん古いサッカー協会です(Wikipedia|The Football Association)。

それまで、ルールは学校ごとにばらばらでした。ボールを手で持って走ってよい学校もあれば、蹴るだけの学校もあります。協会が決めたルールでやる競技を association football と呼び、手を使うほうの rugby football と区別しました(Wikipedia|Association football)。

この association を短くしたのが soccer です。assoc の soc だけを取り、うしろに -er を付けました。

当時のオックスフォード大学では、語を短くして -er を付ける言い方が流行っていました。

  • rugger … rugby(ラグビー)
  • brekkers … breakfast(朝食)
  • leccer … lecture(講義)

辞書に残っている形をたどると、1889年が socca、1891年が socker、そして1895年に soccer です(Etymonline|soccer)。130年以上前の学生ことばが、そのまま生き残っています。

厚いウールの靴下(socks)から socker になった、という説を読んだことがあるかもしれません。これは間違いです。Etymonline は、イギリスで広まった誤った語源だと書いています。

作った国が、いちばん使わなくなりました

いま soccer をふつうに使うのは、アメリカとカナダです。オーストラリア、南アフリカ、アイルランドの多くの地域でも使われます。どれも、別の競技が「フットボール」の名前で広く親しまれている国です(Wikipedia|Association football)。

イギリスは football に戻りました。ただ、ずっと使っていなかったわけではありません。

イギリスの本や新聞に soccer が出てくる回数は、1960年から1980年ごろにかけていちばん多くなり、1980年を境に減っていきます。そのあとに残った soccer は、たいていアメリカの話をするときのものです。

この変化を数えたのは、ステファン・シマンスキーさんという研究者です。アメリカで soccer を使う人が増えたことへの反発ではないか、と見ています(Playing Pasts|Soccer: An Americanism or a Thoroughly British Invention?)。

自分の国で生まれた語を、よその国が使い始めたから使わなくなった。言葉が、どこで使われているかを理由に嫌われることがあります。

なお、soccer と最初に言ったのはチャールズ・レフォード=ブラウン(Charles Wreford-Brown)という選手だ、という話が伝わっています。朝食のあとに「ラグビー(rugger)はどうだ」と誘われ、「いや、soccer のほうがいい」と答えた、という話です。ただし本当かどうかは分かっていません。英語版ウィキペディアも、作り話かもしれないと書いています(Wikipedia|Football(word))。

動画で見る

soccer と football、どちらの呼び名なのかを扱った解説動画 (Tifo Football by The Athletic) 英語の音声です。

日本サッカー協会の英語名は、Japan Football Association です

日本語では「サッカー」と言います。ところが、日本サッカー協会の英語名は Japan Football Association、略して JFA です(JFA|Japan Football Association)。

協会ができたのは1921年9月10日。このときの名前は「大日本蹴球協会」でした(JFA|沿革・歴史)。蹴球 は「蹴る球」と書きます。今度の木曜で、105年になります。

日本語の呼び名は 蹴球 から サッカー へ変わりました。いまの英語名のほうは football です。1つの団体が、2つの言語で別の語を使っています。

国際サッカー連盟も同じです。FIFA という4文字は、フランス語の正式名 Fédération Internationale de Football Association の頭文字です(Wikipedia|FIFA)。

soccer のもとになった2つの語、football と association が、ここにそのまま並んでいます。

相手が使った語を、そのまま使い返す

アメリカの人に I like football. と言うと、アメリカンフットボールの話だと受け取られることがあります。アメリカで football と言えば、防具を着けてやるあの競技のことです。

蹴るほうの話をしたいなら、アメリカとカナダでは soccer。イギリスやそれ以外の多くの国では football。

ただ、相手の国を思い出してから語を選ぶのは大変です。もっと簡単な手があります。相手が使った語を、そのまま使い返す。

相手が soccer と言ったら soccer で返し、football と言ったら football で返す。それだけで、話は最後まで通じます。

同じことが、ほかの語にも当てはまります。

  • elevator(アメリカ)と lift(イギリス)… エレベーター
  • apartment(アメリカ)と flat(イギリス)… 集合住宅の一室
  • fall(アメリカ)と autumn(イギリス)… 秋

どれも、どちらかが崩れた言い方というわけではありません。使う場所が違うだけです。

今日の英語のひとかけら

Do you say soccer or football?

サッカーと言いますか、それともフットボールと言いますか。

Do you say A or B? は、相手がどちらの言い方をするのかをたずねる形です。語の意味ではなく、相手の言い方そのものを聞いています。単語で迷ったときは、自分で決めずに相手に聞いてしまうほうが早い。聞いたあとは、返ってきたほうの語を使ってください。

soccer は、イギリスの大学生が association を短くして作った語です。作った国では使われなくなり、海を渡った先で残りました。

アメリカには、football と呼ばれる別の競技があります。蹴るほうをそれと区別する語が要ったので、soccer が残りました。

明日やることは1つです。英語のニュースや動画を見るとき、蹴るほうの競技が soccer と football のどちらで呼ばれているかを、1回だけ確かめてください。

それだけで、その記事や動画がどの国に向けて作られたものか、見当がつきます。

原田高志

よくある質問

soccer と football は、どちらが正しい英語ですか。

どちらも正しい英語です。soccer をふつうに使うのはアメリカとカナダで、オーストラリア、南アフリカ、アイルランドの多くの地域でも使われます。いずれも、別の競技が「フットボール」の名前で広く親しまれている国です。イギリスをはじめ、それ以外の多くの国では football と呼びます(Wikipedia|Association football)。

soccer は、アメリカで生まれた言葉ですか。

いいえ、イギリスで生まれた言葉です。1863年にロンドンでできた the Football Association のルールでやる競技を association football と呼び、その association を短くして -er を付けたものが soccer です。辞書に残る最初の形は1889年の socca、次が1891年の socker、1895年に soccer になりました(Etymonline|soccer)。