soccer と football の違いは?soccer はイギリス生まれ
はらだコラム
soccer と football の違いは、競技の違いではありません。呼ぶ人の国の違いです。しかも soccer はアメリカ生まれの言葉ではなく、1863年にできた the Football Association の association を、イギリスの大学生が短くして作った語でした。作った国では1980年ごろから使われなくなり、海の向こうで残っています。日本サッカー協会の英語名が Japan Football Association であることまで、出典つきでたどりました。
監修:原田高志(原田英語.com)
サッカーの試合を英語で見ると、イギリスでは football、アメリカでは soccer と呼ばれます。同じ競技です。
日本語の「サッカー」は、このうち soccer のほうから来ました。アメリカで生まれた言い方だと思っている人は、多いと思います。
違います。soccer を作ったのは、イギリスの大学生です。
soccer は、association を短くした語です
1863年10月26日、ロンドンで the Football Association(フットボール協会)ができました。世界でいちばん古いサッカー協会です(Wikipedia|The Football Association)。
それまで、ルールは学校ごとにばらばらでした。ボールを手で持って走ってよい学校もあれば、蹴るだけの学校もあります。協会が決めたルールでやる競技を association football と呼び、手を使うほうの rugby football と区別しました(Wikipedia|Association football)。
この association を短くしたのが soccer です。assoc の soc だけを取り、うしろに -er を付けました。
当時のオックスフォード大学では、語を短くして -er を付ける言い方が流行っていました。
- ・rugger … rugby(ラグビー)
- ・brekkers … breakfast(朝食)
- ・leccer … lecture(講義)
辞書に残っている形をたどると、1889年が socca、1891年が socker、そして1895年に soccer です(Etymonline|soccer)。130年以上前の学生ことばが、そのまま生き残っています。
厚いウールの靴下(socks)から socker になった、という説を読んだことがあるかもしれません。これは間違いです。Etymonline は、イギリスで広まった誤った語源だと書いています。
作った国が、いちばん使わなくなりました
いま soccer をふつうに使うのは、アメリカとカナダです。オーストラリア、南アフリカ、アイルランドの多くの地域でも使われます。どれも、別の競技が「フットボール」の名前で広く親しまれている国です(Wikipedia|Association football)。
イギリスは football に戻りました。ただ、ずっと使っていなかったわけではありません。
イギリスの本や新聞に soccer が出てくる回数は、1960年から1980年ごろにかけていちばん多くなり、1980年を境に減っていきます。そのあとに残った soccer は、たいていアメリカの話をするときのものです。
この変化を数えたのは、ステファン・シマンスキーさんという研究者です。アメリカで soccer を使う人が増えたことへの反発ではないか、と見ています(Playing Pasts|Soccer: An Americanism or a Thoroughly British Invention?)。
自分の国で生まれた語を、よその国が使い始めたから使わなくなった。言葉が、どこで使われているかを理由に嫌われることがあります。
なお、soccer と最初に言ったのはチャールズ・レフォード=ブラウン(Charles Wreford-Brown)という選手だ、という話が伝わっています。朝食のあとに「ラグビー(rugger)はどうだ」と誘われ、「いや、soccer のほうがいい」と答えた、という話です。ただし本当かどうかは分かっていません。英語版ウィキペディアも、作り話かもしれないと書いています(Wikipedia|Football(word))。
動画で見る
日本サッカー協会の英語名は、Japan Football Association です
日本語では「サッカー」と言います。ところが、日本サッカー協会の英語名は Japan Football Association、略して JFA です(JFA|Japan Football Association)。
協会ができたのは1921年9月10日。このときの名前は「大日本蹴球協会」でした(JFA|沿革・歴史)。蹴球 は「蹴る球」と書きます。今度の木曜で、105年になります。
日本語の呼び名は 蹴球 から サッカー へ変わりました。いまの英語名のほうは football です。1つの団体が、2つの言語で別の語を使っています。
国際サッカー連盟も同じです。FIFA という4文字は、フランス語の正式名 Fédération Internationale de Football Association の頭文字です(Wikipedia|FIFA)。
soccer のもとになった2つの語、football と association が、ここにそのまま並んでいます。
相手が使った語を、そのまま使い返す
アメリカの人に I like football. と言うと、アメリカンフットボールの話だと受け取られることがあります。アメリカで football と言えば、防具を着けてやるあの競技のことです。
蹴るほうの話をしたいなら、アメリカとカナダでは soccer。イギリスやそれ以外の多くの国では football。
ただ、相手の国を思い出してから語を選ぶのは大変です。もっと簡単な手があります。相手が使った語を、そのまま使い返す。
相手が soccer と言ったら soccer で返し、football と言ったら football で返す。それだけで、話は最後まで通じます。
同じことが、ほかの語にも当てはまります。
- ・elevator(アメリカ)と lift(イギリス)… エレベーター
- ・apartment(アメリカ)と flat(イギリス)… 集合住宅の一室
- ・fall(アメリカ)と autumn(イギリス)… 秋
どれも、どちらかが崩れた言い方というわけではありません。使う場所が違うだけです。
今日の英語のひとかけら
Do you say soccer or football?
サッカーと言いますか、それともフットボールと言いますか。
Do you say A or B? は、相手がどちらの言い方をするのかをたずねる形です。語の意味ではなく、相手の言い方そのものを聞いています。単語で迷ったときは、自分で決めずに相手に聞いてしまうほうが早い。聞いたあとは、返ってきたほうの語を使ってください。
soccer は、イギリスの大学生が association を短くして作った語です。作った国では使われなくなり、海を渡った先で残りました。
アメリカには、football と呼ばれる別の競技があります。蹴るほうをそれと区別する語が要ったので、soccer が残りました。
明日やることは1つです。英語のニュースや動画を見るとき、蹴るほうの競技が soccer と football のどちらで呼ばれているかを、1回だけ確かめてください。
それだけで、その記事や動画がどの国に向けて作られたものか、見当がつきます。
原田高志
よくある質問
soccer と football は、どちらが正しい英語ですか。
どちらも正しい英語です。soccer をふつうに使うのはアメリカとカナダで、オーストラリア、南アフリカ、アイルランドの多くの地域でも使われます。いずれも、別の競技が「フットボール」の名前で広く親しまれている国です。イギリスをはじめ、それ以外の多くの国では football と呼びます(Wikipedia|Association football)。
soccer は、アメリカで生まれた言葉ですか。
いいえ、イギリスで生まれた言葉です。1863年にロンドンでできた the Football Association のルールでやる競技を association football と呼び、その association を短くして -er を付けたものが soccer です。辞書に残る最初の形は1889年の socca、次が1891年の socker、1895年に soccer になりました(Etymonline|soccer)。