英語でもピリオドは冷たい?126人で確かめた実験
はらだコラム
英語のチャットで Okay. と1語で返すと、ピリオドが1つ付いているせいで本心に見えにくくなります。アメリカのビンガムトン大学が大学生126人に16通りのやりとりを読ませて確かめました。手書きのメモでは同じ差が出ません。日本語の「。」をめぐる「マルハラ」の話と並べて、出典つきで書きました。
監修:原田高志(原田英語.com)
英語のチャットで Okay. と返すと、そっけなく受け取られることがあります。ピリオドが1つ付いているからです。
同じ返事でも、Okay とピリオド無しで送れば、そうはなりません。
作り話ではありません。アメリカの大学が126人で確かめて、論文にしています。
Okay. と Okay は、同じ返事になりません
アメリカのビンガムトン大学が、こんな実験をしています。2015年11月に発表され、翌2016年の Computers in Human Behavior 誌に載りました(Texting insincerely: The role of the period in text messaging)。
大学生126人に、16通りのやりとりを読んでもらいます。送り主の文はこうです。
Dave gave me his extra tickets. Wanna come?
(デイブが余ったチケットをくれたんだ。来る?)
返事は1語だけ。Okay Sure Yeah Yup のどれかです。半分にはピリオドが付いていて、半分には何も付いていません。
読んだ126人には、その返事がどれくらい本心に見えるかを答えてもらいました。
結果は、ピリオドが付いた返事のほうが、本心に見えないというものでした(ビンガムトン大学の発表)。
語は1文字も変わっていません。変わったのは、うしろの点1つだけです。
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手書きのメモでは、同じことが起きませんでした
この実験には、もう一方の見せ方があります。同じ16通りのやりとりを、携帯の画面ではなく、手書きのメモとして読ませたのです。
こちらでは、差が出ませんでした。手書きの Okay. は、冷たく読まれません。
つまり、ピリオドそのものが冷たいのではありません。チャットの中に置かれたときだけ、冷たくなります。
研究を率いた心理学者のセリア・クリン(Celia Klin)さんは、こう説明しています。
Texting is lacking many of the social cues used in actual face-to-face conversations.
(チャットには、面と向かって話すときに使う合図の多くが足りていません)
目の動き、表情、声の調子、間の取り方。話しているときは、こういうものが勝手に気持ちを運んでくれます。チャットには、そのどれもありません。
そこで、空いた場所に別のものが入りました。顔文字、わざと崩した綴り、そして句読点です。ピリオドは、文の終わりを示す仕事のほかに、気持ちを運ぶ仕事まで持たされました。
ビックリマークは、逆に働きます
同じ研究室は、そのあとビックリマークも調べています。こちらは逆で、付けたほうが本心に見えるという結果でした(ビンガムトン大学の発表)。
2017年には、ピリオドのほうを、返事に使う語を増やして調べ直しています(Study: Punctuation in text messages helps replace cues found in face-to-face conversations(2017年11月14日))。使ったのは yeah yup nope nah maybe alright の6語です。
引き受ける返事も、断る返事も、どちらとも取れる返事も、ピリオドが付くと受け取られ方が変わりました。「はい」でも「いいえ」でも、点1つで動きます。
クリンさんの言葉です。
In formal writing, such as what you'd find in a novel or an essay, the period is almost always used grammatically to indicate that a sentence is complete. With texts, we found that the period can also be used rhetorically to add meaning.
(小説や論説のようなきちんとした文章では、ピリオドはほぼいつも、文が終わったことを示すための記号として使われます。チャットでは、それに加えて、意味を足すためにも使われていることが分かりました)
日本語の「。」でも、同じことが言われています
2024年1月28日、ABEMAの『ABEMA的ニュースショー』が、LINEの「。」を怖いと感じる若い人たちを取り上げました。「マルハラ」という呼び名は、このとき番組のスタッフが付けたものです(Wikipedia|マルハラ)。
この番組を伝えた記事の見出しには、若い人の受け取り方がこうまとめられています。「冷たい、怒ってる、冷めてる、もう会話が終了という意図なのかなと」(ABEMA TIMES 2024年2月2日)。
英語のピリオドについて言われていることと、ほとんど同じです。
なぜ「。」が入ると切れて見えるのか。明星大学大学院の藤井靖教授は、同じ記事でこう話しています。「連続性を有するコミュニケーションを前提とした媒体に育ってきていると、句点が入ることはバスッとその連続性みたいなものが断たれて、関係が切られたような感じがしたり、これは何か厳しいことをしっかり言われているみたいな、そういう感覚にとらわれるんだと思う」。
話がずっと続いていく前提で育った世代には、句点が「ここで終わり」の合図に見える、ということです。
筑波大学の岩崎拓也さんは、別の見方を出しています。マンガの吹き出しでは句読点があまり使われません。SNSのメッセージも吹き出しの形で画面に出るので、句読点が無いほうが馴染むのではないか、というものです(Wikipedia|マルハラ)。
ただし、この呼び名には当の若い世代から反論が出ています。都内の私立大学に通う22歳の学生は、就職活動で企業に送るメールでは当たり前に句点を打つと話し、冷たく感じるのは「インスタのDMやLINEで短文のやり取りをしている同世代同士の会話に限定」される、と言っています(マネーポストWEB 2024年3月2日)。
英語の研究が調べたのも、1語で返すチャットだけです。長い文章やメールについては、何も分かっていません。
今日の英語のひとかけら
Sure, see you there!
もちろん、じゃあ現地で。
1語だけの Sure. は、点の付け方ひとつで受け取られ方が変わります。うしろに see you there を足すと、そこで文が続くので、点で迷う場面そのものが無くなります。ビックリマークを付けた返事のほうが、かえって本心に見えるという調査結果もあります。ただし、答案の英作文では使いません。
点を1つ打つかどうかで、返事の受け取られ方が変わります。英語でも日本語でも、同じことが言われています。
ただし、これはチャットの中だけの話です。答案や作文では、文の終わりにピリオドを必ず打ってください。私は生徒にそう言っています。点を打たない癖が付くと、英作文で困ります。
明日やることは1つです。英語でチャットをするとき、1語だけで返しそうになったら、もう一言足してみてください。
Sure だけで送るより、Sure, see you there のほうが、点で悩まずに済みます。
原田高志
よくある質問
英語のチャットでは、文の終わりにピリオドを打ってはいけないのですか。
いけないという決まりはありません。研究で分かったのは、1語だけの返事にピリオドを付けると、本心に見えにくくなるということです(ビンガムトン大学、大学生126人)。同じやりとりを手書きのメモで見せたときは、その差が出ませんでした。答案・作文・メールでは、いままでどおりピリオドを打ってください。
「マルハラ」は、英語にもある言葉ですか。
マルハラは日本語の造語です。2024年1月28日にABEMAの『ABEMA的ニュースショー』が取り上げたとき、番組のスタッフが名付けました(Wikipedia|マルハラ)。英語に同じ呼び名はありません。ただし、文末のピリオドがそっけなく読まれるという話は、2015年から研究されています。