literacy の意味は?「読み書きできない」が先でした
はらだコラム
9月8日は国際識字デーです。ところが literacy という英語ができたのは1883年で、反対の意味の illiteracy より230年ほどあとでした。いまの literacy が「読み書き」だけを指さないこと、そして「日本の識字率はほぼ100%」の根拠が1948年の調査1回だけであることまで、出典つきで並べました。
監修:原田高志(原田英語.com)
9月8日は、国際識字デーです。読み書きのことを考える日として、ユネスコが決めました。
それで literacy(読み書きができること)という英語を調べていて、手が止まりました。この語ができたのは、1883年です。英語の語としては、かなり新しいほうです。
しかも、反対の意味の illiteracy(読み書きができないこと)のほうが、230年ほど先にできていました。
9月8日は、決まってから今年で60年になります
9月8日は International Literacy Day、日本語で国際識字デーと呼ばれる日です。
決めたのはユネスコです。1966年10月26日、第14回のユネスコ総会でこの日が定められ、翌1967年に初めて行われました(Wikipedia|International Literacy Day)。決まってから、今年で60年です。
毎年テーマが付きます。2026年のテーマは Literacy for people, the planet and prosperity(人のため、この地球のため、豊かさのための識字)です(同)。
識字(しきじ)というのは、読み書きができることです。日本語では日常であまり使いませんが、英語なら literacy の1語で言えます。
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literacy という英語は、1883年にできました
ここからが、私が面白いと思ったところです。
英語の語源辞典 Etymonline で literacy を引くと、1883年と出ます。意味は「読み書きができること」です(Etymonline|literacy)。
140年ほどしか経っていません。
では、反対の意味の illiteracy(読み書きができないこと)はいつからか。1650年代です(Etymonline|illiteracy)。
230年ほど、illiteracy のほうが先にありました。
形容詞も見てみます。literate(読み書きができる)と illiterate(読み書きができない)は、どちらも15世紀の初めからあります。ここは同じです。
差が出るのは、人を指す名詞のほうです。「読み書きができない人」を指す名詞の illiterate は1620年代、「読み書きができる人」を指す名詞の literate は1894年でした(Etymonline|illiterate、Etymonline|literate)。
どちらの組でも、「できない」ほうに先に名前が付いています。
なぜそうなったのかは、Etymonline には書かれていません。私にも分かりません。
語の作り方だけ、最後に足しておきます。literacy は、形容詞 literate のうしろに -cy を付けて名詞にした形です。private が privacy に、accurate が accuracy になるのと同じ作り方です。
いまの literacy は、読み書きだけを指しません
literacy には、もう1つの意味があります。「何かを理解して、良し悪しを判断できる力」です(Wiktionary|literacy)。
この意味で使うときは、前に語を1つ置きます。
- ・computer literacy(コンピューターを使いこなす力)
- ・media literacy(報道や広告を読み解く力)
- ・financial literacy(お金のことを理解して、判断できる力。Wikipedia|Financial literacy)
日本語の「メディアリテラシー」「金融リテラシー」も、同じ形です。日本語だけで崩れた使い方をしているわけではありません。英語にも、そのまま同じ言い方があります。
形容詞の literate も同じように広がっています。辞書には financially literate(お金のことが分かっている)という例が載っています(Wiktionary|literate)。
生徒に literacy を「読み書きの力」とだけ教えると、media literacy に出会ったときに手が止まります。2つ目の意味も、最初から一緒に見せてしまうほうが早いと思っています。
「日本の識字率はほぼ100%」の根拠は、1948年の調査です
最後に、日本の話をします。
「日本の識字率はほぼ100%だ」という言い方を、私は疑わずに使ってきました。その数字がいつ測られたものなのかは、考えたことがありませんでした。
『日本の識字率はほんとうに高いのか? 「当たり前」を問い直すために』(野山広・朝日祥之・横山詔一・竹本直也、文学通信)の内容紹介に、こう書かれています。
「『日本人は読み書きができる民族』という自己認識は、実は1948年、戦後間もない時期に行われた、日本で唯一の全国的な識字調査で、『非識字率は約2%』という数値で報じられたことによります」(文学通信の書誌ページ)。
続けて、こうあります。「ですが実はそれ以来、同規模の識字調査は一度も実施されていません」(同)。
1948年です。78年前に測られた数字を、そのまま使ってきたことになります。
日本の識字率が低いと言いたいのではありません。高いか低いかは、測っていないので誰にも分かりません。分からないことを、分かっているように話していた。それだけの話です。
今日の英語のひとかけら
Literacy for people, the planet and prosperity
人のため、この地球のため、豊かさのための識字
2026年の国際識字デーのテーマです。for が3つの名詞をまとめて受けています。見てほしいのは冠詞で、the が付いているのは planet だけです。people は複数形のまま「人びと一般」を指しているので、the を付けません。prosperity は「豊かさ」という数えない名詞なので、こちらも要りません。planet だけは「私たちが住んでいる、この星」と1つに決まるので the が付きます。
英語の literacy は1883年にできた語で、日本の識字率の数字は1948年に測られたものでした。どちらも、私が思っていたのとは違いました。
調べていていちばん残ったのは、順番です。「読み書きができないこと」を1語で言う illiteracy は1650年代からあったのに、「読み書きができること」を1語で言う literacy は1883年まで英語にありませんでした。理由は分かりません。それでも、覚えておこうと思います。
明日やることは1つです。授業で literacy を出すときに、「読み書きの力」と「何かを読み解く力」の2つを一緒に板書してください。media literacy と computer literacy を並べて書けば、それだけで伝わります。
原田高志
よくある質問
literacy と literate は、どう使い分けますか。
literacy は名詞で「読み書きができること」、literate は形容詞で「読み書きができる」です。「彼は読み書きができます」なら He is literate.、「読み書きの力」なら literacy を使います。「読み書きができる人」を指す名詞の literate もありますが、こちらは1894年からの言い方です(Etymonline|literate)。
国際識字デーは、いつ、どこで決まったのですか。
1966年10月26日、第14回のユネスコ総会で9月8日と定められ、翌1967年に初めて行われました(Wikipedia|International Literacy Day)。決まってから、今年で60年です。2026年のテーマは Literacy for people, the planet and prosperity です。