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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
COLUMN 第31回 標準 読了 4分

救急車を英語で呼ぶには?ambulance の語源は「歩く」

はらだコラム

救急車は英語で ambulance です。もとはフランス語で「歩く病院」という意味でした。9月9日の救急の日に合わせて、この語がいつ車を指すようになったのか、イギリスの999・アメリカの911・日本の119がいつ決まったのか、そして電話で最初に言うべきことまで、出典つきで並べました。

監修:原田高志(原田英語.com)

救急車を英語で何と言いますか。ambulance です。ここまでは、多くの高校生が答えられます。

では、駅で人が倒れていて、そばにいる外国人に何か言わなければならないとき。その1語だけで足りるでしょうか。私は足りないと思っています。

9月9日は救急の日です。「9(きゅう)9(きゅう)」の語呂合わせで、1982年(昭和57年)に定められました(大阪市消防局|9月9日は救急の日です!)。それで、救急車に関わる英語を調べてみたら、知らないことばかりでした。

ambulance は、もともと車ではありませんでした

英語の語源辞典 Etymonline で ambulance を引くと、1798年と出ます。ただし、そのときの意味は「移動できる野戦病院」でした(Etymonline|ambulance)。

もとはフランス語の (hôpital) ambulant で、そのまま訳せば「歩く病院」です(同)。さらにさかのぼると、ラテン語の ambulare(歩く、あちこち行く)にたどり着きます(同)。病院のほうが動いて、けが人のいる場所まで行く。その形が、そのまま名前になりました。

「けが人を運ぶ乗り物」の意味になったのは1854年、クリミア戦争のときです(同)。英語で広く使われるようになったのも、この時期でした。街を走るいまの救急車を指すようになったのは、20世紀の初めです(同)。

同じ ambulare から出た語に amble(ゆっくり歩く)があります。もとは馬の歩き方を指す語で、Etymonline|amble によれば、1590年代までは馬か、その馬に乗っている人にしか使いませんでした。救急車と、馬がのんびり歩くこと。出どころは同じラテン語です。

もう1つ、ambulance chaser という言い方が1897年からあります(Etymonline|ambulance)。直訳すれば「救急車を追いかける人」で、事故の現場や病院で仕事を取ろうとする弁護士を、けなして呼ぶ語です(Wiktionary|ambulance chaser)。

世界でいちばん古い緊急電話は、イギリスの999です

いちばん古い緊急電話は、イギリスの 999 です。1937年6月30日にロンドンで始まりました(Wikipedia|999 (emergency telephone number))。きっかけは1935年11月10日、ロンドンのウィンポール街で起きた住宅火災で、5人の女性が亡くなっています(同)。

アメリカの 911 は、それよりずっとあとです。番号が決まったのは1968年で、選んだのは電話会社の AT&T でした(Wikipedia|9-1-1)。短くて覚えやすいこと、そしてダイヤルを回すのが速いことが理由です(同)。

最初の911の回線が動いたのは、1968年2月16日、アラバマ州ヘイリービルです(Wikipedia|Haleyville, Alabama)。

119番は、日本だけの番号ではありません

日本の119番は、1927年(昭和2年)10月1日から使われています。それまでは112番でした(Wikipedia|119番)。

変えた理由は、間違ってつながることが多かったからです。昔の電話は、受話器を置くレバーを何度も叩いて交換手を呼んでいました。その癖が残っていたため、112番には誤った接続が集まりました(同)。そこで、末尾を9に変えました。

けが人や急病人のために119番を使い始めたのは、そのあとの1936年(昭和11年)1月20日です(同)。はじめは、火事だけのための番号でした。

119を使っているのは日本だけではありません。韓国と台湾も、119は消防と救急につながります(Wikipedia|119 (emergency telephone number))。中国は分かれていて、火事が119、救急車が120、警察が110です(同)。

日本の119が受けるのも、火事と救急だけです。警察は110で別になっています(同)。イギリスの999は1つの番号で、救急車・警察・消防・沿岸警備隊の4つにつながります(Wikipedia|999 (emergency telephone number))。いちばん多いのは救急車で、通報全体のおよそ53%です(同)。

つまり、番号がいくつあるかも、その番号が何につながるかも、国ごとに違います。英語圏の人に助けを頼むときは、119という数字をそのまま言ってください。「緊急の番号にかけて」だけでは、どこにかければよいのか伝わりません。

症状より先に、住所を言ってください

東京都のページに、119番でどの順に話すかが書かれています。①救急であること ②住所 ③症状 ④年齢 ⑤名前と連絡先、の順です(東京都保健医療局|救急車の呼び方)。

英語でも、この順のまま言えば通じます。

  • I need an ambulance.(救急車をお願いします)
  • I'm at Shibuya Station, in front of the Hachiko exit.(渋谷駅の、ハチ公口の前にいます)
  • A man collapsed. He's not breathing.(男性が倒れました。息をしていません)

言いたくなるのは症状のほうです。それでも先に住所を言ってください。場所が分からなければ、救急車は出発できません。

言葉で困ったときのために、東京では119番に英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語の三者間同時通訳が入ります(同)。総務省消防庁は、訪日外国人のための救急車利用ガイドを16の言語で出しています(総務省消防庁|訪日外国人のための救急車利用ガイド)。

動画で見る

119番通報(救急車の呼び方) (大阪市消防局YouTube) 大阪市消防局の公式チャンネルにある、119番通報のかけ方の動画です。

今日の英語のひとかけら

I need an ambulance at Shibuya Station.

渋谷駅で救急車をお願いします。

need は「必要です」という意味です。Please call an ambulance.(救急車を呼んでください)は相手に頼む言い方で、I need an ambulance. は自分の状況をそのまま伝える言い方です。電話の第一声には、I need an ambulance. のほうが短くて通じます。場所は at で続けます。駅や建物のように1点で指せる場所には at、市や区のような広い場所には in を使います。

ambulance は「歩く病院」から来た語で、けが人を運ぶ車を指すようになったのは1854年でした。番号のほうは、日本の119が1927年、イギリスの999が1937年、アメリカの911が1968年です。ばらばらなのは、それぞれの国が別々に決めたからです。

調べていていちばん引っかかったのは、日本の119が火事のための番号として先に決まっていたことです。救急のために使われ出したのは、8年あとでした。救急車は、消防の仕事にあとから足されたものだったのです。

明日やることは1つです。I need an ambulance. の1文だけ、声に出して言えるようにしておいてください。119番につながれば通訳を頼めることもありますが、電話がつながるまでの数十秒は、その場にいる人どうしで何とかするしかありません。

原田高志

よくある質問

「救急車を呼んでください」は、英語で何と言いますか。

Please call an ambulance. です。自分のために呼んでほしいときは I need an ambulance.(救急車が必要です)と言えます。どちらも ambulance の前に an が付きます。「119番にかけてください」と伝えたいなら Please call one-one-nine. と、数字を1つずつ読みます。アメリカの911も nine-one-one と読みます。

アメリカとイギリスでは、緊急電話の番号が違うのですか。

違います。アメリカは 911、イギリスは 999 です。どちらも1つの番号で警察・消防・救急のすべてを受けます(Wikipedia|9-1-1Wikipedia|999)。日本は警察が110、消防と救急が119で、番号が分かれています(Wikipedia|119)。