筆記体はいつから習わない?2002年に必修から外れました
はらだコラム
英語の筆記体は、いつ習わなくなったのか。1993年4月から使われた中学校学習指導要領には「活字体及び筆記体」と書かれていましたが、2002年4月からの要領で「活字体」だけになりました。ただし消されたわけではなく、「筆記体を指導することもできる」という一行は、いまの要領にも残っています。
監修:原田高志(原田英語.com)
「英語の筆記体って、いまは習わないんですよね」
そう言われることがあります。半分だけ当たっています。
中学校の学習指導要領には、いまもこの一行が残っているからです。
「文字指導に当たっては,生徒の学習負担にも配慮しながら筆記体を指導することもできることに留意すること」(中学校学習指導要領(平成29年告示)第2章第9節 外国語)
禁止されてはいません。「教えてもよい」と書いてあります。いつ、何が変わったのかを順に見ていきます。
1993年の中学校では、筆記体も言語材料でした
1989年(平成元年)3月に告示された中学校学習指導要領から見ていきます。中学校で使われ始めたのは1993年4月です(学習指導要領データベース|国立教育政策研究所)。
英語で扱う言語材料を並べた表に、こう書かれています。
「アルファベットの活字体及び筆記体の大文字及び小文字」(中学校学習指導要領(平成元年3月)第9節 外国語)
活字体と、筆記体。両方が並んでいます。
同じページには、ドイツ語とフランス語の表もあります。どちらにも「活字体及び筆記体」と入っていました(同)。
言語材料というのは、その学年で扱うと決められている中身のことです。ここに名前があるかどうかで、教科書の作りが変わります。
2002年から、要領の文字は活字体だけになりました
次の改訂は1998年(平成10年)12月の告示で、中学校で使われ始めたのは2002年4月です(学習指導要領データベース)。
同じ表の文字の欄が、こうなります。
「アルファベットの活字体の大文字及び小文字」(中学校学習指導要領(平成10年12月)第9節 外国語)
筆記体の3文字が、表から消えました。
そのかわり、指導上の注意にこの一行が入ります。
「文字指導に当たっては、生徒の学習負担に配慮し筆記体を指導することもできること。」(同)
ここが分かれ目です。筆記体は禁止されたのではなく、必ず教えるものではなくなりました。
この一行は、そのあとも残ります。2008年(平成20年)告示の要領にも、同じ文が入っています(中学校学習指導要領(平成20年3月)第9節 外国語)。
いまの要領も同じです。冒頭に引いた「指導することもできることに留意すること」がそれです。
2002年から24年、同じことが書き続けられています。
cursive は、ラテン語の「走る」から来ています
英語で筆記体は cursive です。
語源辞典を引くと、英語に入ったのは1784年でした。フランス語の cursif から来ていて、そのもとは中世ラテン語の cursivus(走る)、さらにさかのぼるとラテン語の currere(走る)です(Etymonline|cursive)。
ペンを紙から離さずに走らせるので、「走る書き方」です。
同じ currere から出た語が、身のまわりにいくつもあります。
- ・current(流れ、いまの)
- ・cursor(画面のカーソル)
- ・course(進む道、講座)
どれも「走る」「進む」が芯にあります。cursor を「画面を走り回るもの」と覚え直すと、cursive とつながります。
cursive が使われる前の呼び名も載っています。joining-hand(つなげる手)で、1580年代の言い方です(同)。文字をつなげる書き方、という説明がそのまま名前になっていました。
カリフォルニア州は、2024年から法律で決めました
筆記体をどう扱うかで動いているのは、日本だけではありません。
アメリカのカリフォルニア州では、2024年1月1日から、小学1年から6年の書き方の指導に cursive or joined italics(筆記体か、つなげて書くイタリック体)を含めることが法律で決まりました(California Department of Education|Cursive Instruction FAQs)。
法律の名前は AB 446 です。知事が署名したのは2023年10月13日でした(AB-446 Pupil instruction: handwriting.)。
条文には、英語の指導に含めるものとしてこう書かれています。
「handwriting, including instruction in cursive or joined italics in the appropriate grade levels」(同)
何年生で教えるかは、それぞれの教育委員会が1年から6年のあいだで決めます(州教育局のFAQ)。
ただし、「無かったものを新しく作った」わけではありません。州の英語の基準には、筆記体の到達目標がもともと入っていました。3年生は「筆記体かつなげて書くイタリック体で、余白と文字間・語間を正しく取って、読める字で書く」、4年生は Write fluidly and legibly in cursive or joined italics.(すらすらと、読める字で、筆記体かつなげて書くイタリック体で書く)です。AB 446 が変えたのは基準の中身ではなく、その指導を法律で求めた点です(同)。
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今日の英語のひとかけら
Write fluidly and legibly in cursive or joined italics.
筆記体か、つなげて書くイタリック体で、すらすらと、読める字で書くこと。
カリフォルニア州の英語の基準にある、4年生の到達目標です。見てほしいのは in です。in cursive の in は「何で書くか」を表します。in English(英語で)、in ink(インクで)と同じ使い方で、字の種類も、この in で言えます。fluidly は「すらすらと」、legibly は「読める字で」。どちらも動詞 write にかかる副詞です。
筆記体は、日本の中学校から消されてはいません。「指導することもできる」という一行が、2002年からずっと残っています。教える先生もいますし、教えない先生もいます。どちらも要領のとおりです。
書けるようになるべきかどうかは、私にも分かりません。ノートを取る速さも、答案の読みやすさも、活字体で困ることはないと思っています。
明日やることは1つです。ノートに書くのは活字体のままでかまいません。そのかわり、英語の手書き文字を見かけたら、読めるかどうかだけ試してみてください。書けなくても、読めれば困りません。
原田高志
よくある質問
筆記体は、いまの中学校では教えないのですか。
教えてもよいことになっています。いまの中学校学習指導要領(平成29年告示)に「文字指導に当たっては,生徒の学習負担にも配慮しながら筆記体を指導することもできることに留意すること」と書かれています(中学校学習指導要領(平成29年告示)第2章第9節 外国語)。必ず教えるもの(言語材料)からは外れているので、扱うかどうかは学校や先生の判断です。
英語で筆記体は何と言いますか。
cursive です。英語に入ったのは1784年で、フランス語の cursif、中世ラテン語の cursivus(走る)から来ています。さらにさかのぼるとラテン語の currere(走る)で、current(流れ)や cursor(カーソル)と同じ語です(Etymonline|cursive)。