英文記事をAIで使い切るプロンプト3本
AI×英語 第2回
英文記事をAIに要約させて終わり。これが、いちばんもったいない使いかたです。同じ記事1本から、読む力・書く力・語彙の3つを取り出せます。この回では、読む前に「地図」を作らせるプロンプト、自分の英作文の癖を1つだけ言わせるプロンプト、読んだ記事から自分に足りない語だけを抜いて小テストにするプロンプトの3本をお渡しします。教材づくりにもそのまま使えます。
監修:原田高志(原田英語.com)
今日のテーマは、英文記事1本の使い倒しかたです。AIに「要約して」と頼んで、日本語の要約を読んで、はい終わり。これをやると、英語力はほとんど動きません。同じ記事から3回ぶんの練習を取り出す方法を、プロンプト3本でお見せします。
英語の記事を読もうとして、3行目で止まった経験はありませんか。
知らない単語が2つ続いて、そこで文の形が見えなくなり、前に戻って読み直しているうちに、何の話だったか分からなくなる。よくあることです。私も英字紙を読み始めたころ、毎回これでした。
原因ははっきりしています。知らないことが多すぎる状態で、いきなり入っているからです。日本語の新聞なら、見出しと写真で内容の見当がついてから本文に入ります。英語だとその下見を飛ばしてしまう。
今日の3本は、その下見をAIにやらせるところから始まります。そして同じ記事を、読む・書く・覚えるの3方向に使い切ります。
読む前に、記事の「地図」を作らせる
読む力が伸びる
これは要約ではありません。要約を読んでしまったら、本文を読む理由がなくなります。
作らせるのは地図です。何段落あって、どこで話が切り替わって、どこに難しい語がかたまっているか。先に地形が分かっていれば、迷いません。登る前に等高線を見るのと同じことです。
中身は明かさない、しかし構造だけは渡す。そのためのプロンプトです。
You are helping a Japanese learner get ready to read an English article.
Do NOT summarize the content. I want to read it myself.
Give me only a MAP of the text, in this format:
1. 全体像 — In Japanese, one line: what kind of text this is (news report / opinion / interview / explainer) and roughly how hard it is (CEFR level).
2. 段落マップ — For each paragraph, give ONE Japanese phrase (under 12 characters) naming its topic. Just the topic. Never the conclusion.
3. 難所 — List the 5 hardest words or phrases for a Japanese high school student. For each: the word, a plain-English definition under 10 words, and the Japanese meaning. Do not explain the sentence they appear in.
4. 読む前の問い — Write two questions in Japanese that I should try to answer while reading.
Stop there. Do not tell me the answers.
Here is the article:
"""
(ここに記事のURLか本文全文を貼る。1000語くらいまで)
""" あなたは、日本人学習者が英文記事を読む準備を手伝う役です。
内容を要約しないでください。読むのは私自身です。
出してほしいのは、本文の「地図」だけです。次の形で。
1. 全体像:日本語で1行。これがどんな種類の文章か(報道/論説/インタビュー/解説)と、だいたいの難しさ(CEFRのレベル)。
2. 段落マップ:段落ごとに、その段落が何の話かを日本語のひとこと(12字以内)で。話題だけを書き、結論は書かないこと。
3. 難所:日本の高校生にとって難しい語句を5つ。それぞれ、語句と、10語以内のやさしい英語の定義と、日本語の意味。その語が出てくる文の解説はしないこと。
4. 読む前の問い:読みながら答えを探すとよい問いを、日本語で2つ。
そこで止めてください。答えは書かないこと。
記事はこれです:
"""
(ここに記事のURLか本文全文を貼る。1000語くらいまで)
""" 使いかた
- 1 記事のURLか本文を、いちばん下の三重引用符の中に貼る
- 2 返ってきた3の難語5つだけを先に読む。ここで2分使ってかまいません
- 3 4の問いを頭に入れて、辞書を引かずに本文を最後まで通す。分からない文は飛ばす
- 4 読み終わってから、4の問いに日本語で答えてみる。答えられたら合格です
こんな形で返ってきます
入れたもの(例)
(英語ニュース記事の本文、約600語)
返ってくる形(抜粋)
1. 全体像:ニュース報道。CEFR B2 程度。 2. 段落マップ ①何が起きたか ②数字の内訳 ③現地の反応 ④専門家の見方 ⑤今後の見通し 3. 難所 ・unprecedented(形)never happened before /前例のない ・halt(動)to stop something /停止する ・…(あと3語) 4. 読む前の問い ・この出来事で、いちばん困っているのは誰ですか。 ・記事は今後について、楽観と悲観のどちらに寄っていますか。
返ってきたら、この一言を続ける
-
Now ask me the two questions one at a time, and judge my answers in Japanese.
読み終えたあとに。自己採点をAIに任せると、読み落としがはっきり出ます。
-
Which paragraph did I most likely misunderstand? Ask me one question to check.
どこを読み違えていそうかをAIに当てさせる一言。的中率がなかなか高くて驚きます。
英作文を直させるのではなく、癖を1つだけ言わせる
書く力が伸びる
AIに英文を直させると、きれいな英語が返ってきます。読んで、なるほどと思って、閉じる。そして次に書くとき、また同じ間違いをします。
直された英文を覚えても、力にはなりません。力になるのは、自分の癖に名前がついたときです。「冠詞を落とす」「主語を人にしすぎる」「and でつなぎすぎる」。名前がつくと、書いている最中に自分で気づけるようになります。
だからこのプロンプトは、最後に癖を1つだけ言わせます。3つでも5つでもなく、1つです。
You are an experienced English teacher for Japanese learners.
I will give you English I wrote. Do the following, and nothing else:
1. Rewrite it the way a native speaker would naturally write it. Keep my meaning exactly. Do not add new ideas and do not make it fancier than it needs to be.
2. Show it as a table: my line / your line / what changed (in Japanese, under 20 characters).
3. In Japanese, name the ONE habit I should fix first. Give it a short name I can remember, explain it in two sentences, and say how often it appeared in my text.
4. Write three short new sentences in English that would trip me up in exactly that way, and let me try them. Do not show me the answers yet.
Rules:
- Only ONE habit in step 3. If you find several, choose the one that damages my English the most.
- Never say "this sounds better" without giving the rule or the nuance behind it.
Here is my English:
"""
(ここに自分が書いた英文を貼る。3〜5文がちょうどいい)
""" あなたは、日本人学習者を長く教えてきた英語教師です。
私が書いた英語を渡します。次のことだけをしてください。
1. ネイティブが自然に書く形に書き直してください。意味はそのままにすること。新しい内容を足さず、必要以上に凝った言い回しにもしないこと。
2. 表にして見せてください。私の文/あなたの文/何を変えたか(日本語20字以内)。
3. 日本語で、まず直すべき癖を1つだけ挙げてください。覚えやすい短い名前をつけ、2文で説明し、私の文章に何回出ていたかを書いてください。
4. まさにその癖が出そうな短い英文を、新しく3つ作ってください。私に解かせてください。答えはまだ見せないこと。
ルール:
- 3で挙げる癖は1つだけ。いくつも見つかったら、私の英語をいちばん損なっているものを選んでください。
- 「こちらのほうが自然です」だけで済ませないこと。必ず理由かニュアンスを添えてください。
私の英語です:
"""
(ここに自分が書いた英文を貼る。3〜5文がちょうどいい)
""" 使いかた
- 1 自分で書いた英文を3〜5文だけ貼る(長く入れるほど解説が薄くなります)
- 2 2の表は、右端の「何が変わったか」だけを読む。直された英文は覚えようとしない
- 3 3で出た癖の名前を、メモに1行書く。次に英語を書くときの唯一の目標にします
- 4 4の3文を自分で英語にして送り、採点してもらう
こんな形で返ってきます
入れたもの(例)
I think that the meeting was very useful for us. We could get many informations. I want to join it again.
返ってくる形(抜粋)
3. 直すべき癖:「クッション語で始める癖」 I think that … / I want to … のように、主語を自分にした前置きから文を始めています。3文中3文がそうでした。日本語の「〜だと思います」をそのまま英語に移すと起きます。The meeting was very useful. と言い切るほうが、英語では自然で、しかも強く伝わります。 (information が数えられない語である点は、2の表の中で処理されています)
返ってきたら、この一言を続ける
-
Now show me the answers to the three sentences, and tell me if I still have that habit.
4で出された3文を自分で英訳したあとに。同じ癖がまだ出ているかを判定させます。
-
Keep that habit in mind. I'll send you new writing tomorrow.
同じ会話の続きで翌日また貼ると、前回の癖が直ったかどうかまで見てくれます。
その記事から、自分に足りない語だけを抜いて小テストにする
単語力が伸びる
単語帳が続かないのは、自分がもう知っている語が半分以上載っているからです。知っている語を読み飛ばす作業が退屈で、そのうち開かなくなります。
このプロンプトは逆をやります。今日読んだ記事の中から、自分が知らないと申告した語だけを集めて、その場で10問の小テストにします。市販の単語帳と違って、自分にとっての未知語だけが並びます。
毎日3分、これだけでいい、という日があってもいいと思います。
You are making a personal vocabulary quiz for a Japanese learner.
Step 1. From the English text below, pick the 10 words or phrases most worth learning for a Japanese high school student. List them with the Japanese meaning only. Number them.
Step 2. Ask me which numbers I already know. Then wait for my reply. Do not go on until I answer.
Step 3. Using ONLY the ones I did not know, make a quiz. For each word, in this order:
- an English sentence with the word replaced by ______ (a new sentence, not the one from the article)
- four choices
- the Japanese hint in brackets
Ask them ONE at a time. Wait for my answer before moving on. After each answer, say 正解 or 不正解, give a one-line reason in Japanese, then show the full sentence.
Step 4. At the end, list the words I got wrong, and write one short English sentence for each that I can say out loud tomorrow.
Here is the text:
"""
(ここに今日読んだ英文を貼る)
""" あなたは、日本人学習者のために単語の小テストを作る役です。
手順1. 下の英文から、日本の高校生が覚える値打ちのある語句を10個選んでください。日本語の意味だけを添えて、番号をつけて並べてください。
手順2. そのうちどれをすでに知っているか、私に聞いてください。そして私の返事を待ってください。答えるまで先に進まないこと。
手順3. 私が知らなかったものだけを使って、テストを作ってください。1語につき、この順で。
- その語を ______ に置き換えた英文(記事に出てきた文ではなく、新しく作った文)
- 選択肢4つ
- 角かっこに入れた日本語のヒント
1問ずつ出してください。私が答えるまで次に進まないこと。答えるたびに「正解」か「不正解」を言い、日本語で1行の理由を添え、完成した文を見せてください。
手順4. 最後に、間違えた語を一覧にして、それぞれ明日そのまま声に出せる短い英文を1つずつ書いてください。
英文はこれです:
"""
(ここに今日読んだ英文を貼る)
""" 使いかた
- 1 今日読んだ英文をそのまま貼る。このコーナーの Easy Reading や 1日1本!ニュース英語の英文でもかまいません
- 2 10語のリストが出たら、知っている番号を正直に申告する。見栄を張ると、自分だけが損をします
- 3 1問ずつ答える。考える時間を惜しまない。3秒で出なかった語が、あなたの弱点です
- 4 最後に出てくる「明日声に出す文」を、翌朝1回だけ音読する
返ってきたら、この一言を続ける
-
Same words again tomorrow, but harder sentences.
翌日、同じ会話の続きで。同じ語・違う文脈で問われると、定着が一段深くなります。
-
Now make five of these words into one short story I can read aloud.
バラバラの10語を1本の物語にまとめさせると、記憶のフックが一気に増えます。
AI相手に、声に出してみる
音声を聞いて、そのまま真似してください。AIとの英会話は、この一言から始まります。
Don't summarize it for me. I want to read it myself.
要約はしないでください。自分で読みたいので。
AIに「やらないこと」を伝える一言。読解の練習では、これが最初の一手になります。
Ask me one question at a time and wait for my answer.
1問ずつ聞いて、私の答えを待ってください。
AIは放っておくと全部を一度に出します。この一言で、対話の形に変わります。
What is the one habit I should fix first?
まず直すべき癖は、どれ一つですか。
the one で「たった一つ」を強調しています。数を絞らせるのが、AIから有益な答えを引き出すコツです。
AI時代の英語学習、ここだけは
英文を貼る前に、長さを1000語で切る
AIは長い文章を読めますが、長くなるほど真ん中が雑になります。頭と終わりの指示はよく守るのに、途中に書いた条件をこっそり落とすことがあるのです。文章そのものも同じで、長い記事を渡すと中盤の段落の扱いが薄くなります。
目安として、1回に貼るのは1000語まで。それより長い記事は、前半と後半に分けて2回に通してください。分けた回数だけ丁寧に読んでくれます。
これは指示文にも当てはまります。プロンプトが長くなるときは、やってほしいことに番号を振り、いちばん大事な条件を最後にもう一度書く。今日の3本目で「待つように」と2回書いているのは、そのためです。
日本語で書いていいし、日本語で答えさせてもいい
「プロンプトは英語で書くべきですか」とよく聞かれます。日本語でかまいません。
むしろ、母語で書くほうが指示が具体的になります。英語で書こうとすると、自分の英語力の範囲で言えることに指示が縮んでしまう。「もうちょっと硬めで、でも堅苦しくない感じ」というような細かい注文は、日本語のほうが確実に伝わります。
ただし、出してほしい言語は必ず指定してください。指定しないと、日本語で聞けば日本語で返ってきます。英語で返してほしいときは、最後に一行。
- ▼ Respond only in English.(英語だけで答えて)
- ▼ Answer in Japanese, but keep all example sentences in English.(説明は日本語、例文は英語で)
指示の言語と、答えの言語は、別々に決められます。今日の3本が英語で書いてあるのは、そのままコピーして使えるようにするためで、英語でないと動かないからではありません。
AIに任せてはいけないのは「決めること」
ここまで3本のプロンプトを見て、気づいたことがあるかもしれません。AIに判断をさせていません。
地図は作らせても、読むのは自分。直しは出させても、どの癖を追うかを決めるのは自分。10語のうち何を知らないかを申告するのも自分です。AIがやっているのは、材料を切りそろえることだけです。
これは、けちな使いかたに見えるかもしれません。でも、選ぶ作業を手放した瞬間に、学習は止まります。どれが自分にとって難しいのかを判断し、今日はここまでと決める。この部分が、そのまま英語力になっていきます。
包丁を研いでもらうのはかまいません。料理まで作ってもらったら、いつまでも料理はうまくなりません。
⚠️ 使うときの注意
AIが返してくる日本語の文法解説は、そのまま信じないでください。英文の直しはかなり正確なのに、「なぜそう直したか」の理由だけが的外れ、ということがよく起こります。理由の部分は、辞書か文法書で裏を取る。これは癖にしておいたほうがいい習慣です。
もうひとつ。今日の1本目のように記事のURLを貼るときは、AIがそのページを本当に読めているとは限りません。読めていないのに、それらしい地図を作ってしまうことがあります。段落の数が実際と合っているかだけ、最初に目で確かめてください。合っていなければ、URLではなく本文をそのまま貼り直します。
英字新聞を読み始めたころ、辞書を引きながら1本読むのに2時間かかりました。読み終わるころには、最初の段落の内容を忘れていました。あのころ、記事の地図を先に見せてくれる相手がいたら、ずいぶん違ったと思います。
いまの生徒たちは、それを持っています。うらやましいというのが正直なところです。
ただ、一つだけ変わっていないことがあります。読むのは、本人にしかできません。地図をどれだけ精密に作っても、歩かなければ景色は見えない。道具が良くなったぶん、歩く時間をどう作るかが、これからの勉強のいちばんの課題になる気がしています。
原田高志
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確認クイズ
-
Q1. 英文記事の下読み用プロンプトで、Do NOT summarize the content. の一行を入れる理由として最も適切なものはどれか。
-
Q2. AIに英作文を直させるとき、最も英語力につながる受け取りかたはどれか。
よくある質問
どの記事を貼ればいいですか。ニュースは難しすぎます。
このサイトの英文をそのまま使ってください。「Easy Reading」の約220語の英文や、「1日1本!ニュース英語」の本文は、この3本のプロンプトにちょうどいい長さです。 難しすぎる記事は、地図を作っても登れません。目安は、1つの段落に知らない語が3つ以内。それを超えるなら、内容が面白くても今日の教材には向きません。もう少しやさしいものから始めてください。
毎日3本ぜんぶやるのは無理です。
やらないでください。3本とも回すと30分以上かかります。続きません。 おすすめは、曜日で分けることです。月水金は1本目の下読み、火木は3本目の単語テスト、書く時間が取れた日だけ2本目。1日1本でも、1週間で5本の英文記事に触れることになります。毎日全部やる計画は、3日目に崩れます。
授業で使えますか。
1本目の下読み地図は、そのまま教材づくりに使えます。段落マップと難語リストが出るので、ワークシートの骨格が5分でできます。読む前の問い2つも、そのまま発問に転用できます。 ただし、AIが出した難語リストは必ず自分の目で確認してください。担当している生徒の学年や既習事項と、AIの想定はずれます。「高校生には難しい」とAIが判断した語が、実はすでに教科書で扱っていた、ということが普通に起こります。最後に選ぶのは、生徒の顔が見えている人です。