「海外ニキがこぞって『ケンタッキーのチキンは予約したか?日本ではクリスマスにケンタッキーなんだろ?』って聞いてくる」
https://x.com/s1120411/status/2003780365379670409?s=20
これは、日本人が海外で何度も経験する、ちょっと恥ずかしい瞬間です。なぜなら、クリスマスにケンタッキーを食べるのは、実は日本だけの習慣だからです。アメリカでもイギリスでもクリスマスには七面鳥(ターキー)を食べます。ケンタッキーではなく。
では、なぜ日本だけがこんなユニークな習慣を持つようになったのか?その答えは、実は複数あるのです。それも、どちらの説も興味深く、どちらが本当かは今でも議論の余地があるという、なんともドラマチックなストーリーです。
説1:外国人の声が生んだ「七面鳥の代替品」
KFCコーポレーション(親会社ヤム・ブランズ)の公式説は、こうです。
来日中の外国人がクリスマスに伝統的な七面鳥の代わりにチキンを食べることを提案した。青山店での「七面鳥がないから、代わりにチキンで祝いたい」という外国人の声がヒントになった。
つまり、1970年代初期、日本を訪れた外国人たちが、クリスマスに七面鳥を食べたいと思った。しかし、日本には七面鳥がない。そこで、KFCの青山店で、「代わりにチキンで祝いたい」という声が上がったというわけです。
これは、ビジネスの観点からも、文化的な観点からも、非常に理にかなっています。外国人の実際の需要があれば、それに応えるのは自然なことです。
七面鳥は非常に高価で、入手が困難。戦後もレストランやキャバレーでしか食べられず、1羽を多人数でシェアしていた。つまり、外国人たちが七面鳥を求めるのは当然だったのです。
この説では、KFCは外国人の需要に応えるために、チキンをクリスマスの食事として提案し、それが日本人にも受け入れられた、ということになります。
説2:大河原毅氏の「嘘」が生んだ伝説
しかし、もう一つの説があります。それは、KFC日本法人創業期の常務取締役・大河原毅氏が、後年に明かした「嘘」の話です。
1970年、KFC日本1号店がオープンしました。しかし、当時の店長・大河原毅氏は、深刻な問題に直面していました。
赤と白の縞模様の屋根に英語の看板を掲げた店は、何の店なのか誰にも分かりませんでした。お菓子屋?床屋?お金もなく、時々、店の裏に保管していた小麦粉の袋の上で寝ていたほどの経営難。
そんな中、転機が訪れます。近所のミッション系幼稚園から、クリスマスパーティーでサンタ役を務めてくれないかと打診されたのです。
大河原氏は快諾しました。サンタクロースに扮装してフライドチキンのバーレルを抱えて教室を踊り歩く。パーティーは大盛況。すぐに別の幼稚園からも依頼が来ました。
ここで大河原氏は、ビジネスチャンスを嗅ぎ取ります。店の前に立つカーネル・サンダースの人形にサンタクロースの格好をさせ、フライドチキンをアメリカの七面鳥のディナーの代わりとしてアピールしたのです。
このKFCの取り組みはニュースになり、NHKのインタビューを受けることになります。そこで、インタビュアーは大河原氏に聞きました。
「フライドチキンは本当に西洋のクリスマスの習慣として一般的なのですか?」
大河原氏は、その時の状況をBusiness Insiderのポッドキャスト「Household Name」で語っています。
「チキンではなく、七面鳥を食べていることは知っていました。しかし、『はい』と答えました。嘘をついたのです。今も後悔しています。しかし、多くの人が気に入っているようです。」
その瞬間、日本の文化が変わってしまいました。
どちらが本当か?真実は謎のまま
では、どちらが本当なのでしょうか?実は、この二つの説は、矛盾していません。むしろ、補完し合っているのです。
外国人の需要があり、それに応えるために大河原氏がマーケティング戦略を立てた。その過程で、NHKのインタビューで「嘘」をついた。つまり、両方の説が同時に起こった可能性もあるのです。
重要なのは、どちらの説でも、日本のクリスマスがケンタッキーになった理由は「七面鳥の代替品」だったということです。
嘘はなぜ成功したのか?日本の背景事情
外国人の需要であれ、大河原氏の嘘であれ、なぜこんなに大きな影響を持つことができたのでしょうか?その理由は、日本の当時の状況にありました。
| 要因 | 詳細 |
|---|---|
| クリスチャン人口 | 日本のクリスチャン人口は2%未満。クリスマスは「お祭り」であって、宗教的な意味はほぼなかった |
| 七面鳥の入手困難性 | 七面鳥は非常に高価で、入手が困難。戦後もレストランやキャバレーでしか食べられず、1羽を多人数でシェアしていた |
| 新しい文化への受容性 | 1970年代は、西洋文化への憧れが強く、「アメリカの習慣」と聞くと、疑わずに受け入れる傾向があった |
| メディアの力 | NHKのニュースで「西洋の習慣」として報道されたことで、信憑性が生まれた |
つまり、どちらの説であれ、日本の文化的な「空白」を埋めるために、完璧なタイミングで放たれたのです。
嘘から始まった50年の伝統
1974年、KFCは「クリスマスにはケンタッキー」というキャンペーンを全国展開します。
1970年
KFC日本1号店がオープン。大河原毅氏が店長として就任
1970年代初期
幼稚園のクリスマスパーティーでサンタ役を務める。カーネル・サンダースにサンタの格好をさせる
1974年
「クリスマスにはケンタッキー」キャンペーンを全国展開。NHKのインタビューで「嘘」をつく
1984年
大河原毅氏が代表取締役社長に就任。KFCは倒産寸前から大成功へ
2018年
大河原氏がBusiness Insiderのポッドキャストで「嘘をついた」ことを告白
現在
クリスマスシーズン、多くの人がチキンを買うため数時間並び、数週間前から予約する習慣が定着
なぜ他のファストフードではなく、ケンタッキーなのか?
興味深いことに、この習慣は他のファストフードチェーンには広がりませんでした。なぜでしょうか?
その理由は、タイミングと一貫性です。1974年、KFCは他のチェーンより先に、全国規模で「クリスマスキャンペーン」を展開しました。そして、毎年毎年、カーネル・サンダースにサンタの格好をさせ、クリスマスとケンタッキーを結びつけ続けたのです。
この一貫性が、50年間かけて、日本人の心に「クリスマス=ケンタッキー」という方程式を刻み込んでしまったのです。
日本でクリスマスにKFCを食べるようになったのは、1970年代のKFCのマーケティングキャンペーン「クリスマスにはケンタッキー!」がきっかけです。当時、日本にはクリスマスの伝統的な食事(例: 七面鳥)がなく、KFCが「アメリカ風のクリスマスディナー」としてチキンを売り込んだ結果、家族でバケットを予約して食べる文化が生まれました。現在では毎年約360万家族が注文し、店舗では予約必須で長蛇の列ができるほどです。
この習慣は日本独自のもので、海外では知られると「面白い」「信じられない」と反応されることが多いです。
例えば、クリスマスバケットのイメージはこんな感じ:
海外の反応:「え、ケンタッキー?」
海外の人が「ケンタッキーのチキンは予約したか?」と聞いてくるのは、驚きと笑いの混ざった反応です。
アメリカ人にとって、クリスマスにケンタッキーを食べるというのは、日本人にとって正月にマクドナルドを食べるようなものです。「え、ファストフード?」という違和感があるのです。
しかし、同時に、海外の人たちは、この習慣に対して、ある種の尊敬と興味を持っています。なぜなら、日本人が、西洋の習慣を自分たちのものに作り替えてしまったという、文化的な創造性を感じるからです。
嘘か需要か?
日本のクリスマスにケンタッキーを食べる習慣は、外国人の需要から始まったのか、それとも大河原毅氏の「嘘」から始まったのか。真実は、今となっては定かではありません。
しかし、どちらであれ、その背景にあるのは、日本人が西洋の文化を受け入れながら、同時に自分たちのものに作り替えてしまうという、独特の文化的創造性です。
大河原氏は「今も後悔しています」と述べていますが、その「嘘」(あるいは需要への対応)が生み出した習慣は、今や日本の冬の風物詩となり、多くの人に愛されています。
嘘から始まった習慣も、50年間の一貫性と、多くの人の愛情を受けることで、立派な「文化」へと変わってしまったのです。
【原田英語公式Xの投稿より】
確かに海外のReddit等の掲示板を読むと「なんで日本人ってクリスマスにKFC食べるの?」「マーケティングが国全体を騙したみたいでhilarious(大笑い)」みたいな投稿が結構ありますよね^^;
実際、アメリカでもイギリスでもクリスマスの主流は七面鳥であって、ケンタッキー・フライドチキンではありません。では、なぜ日本だけこうなったのか?面白い諸説があるのでご紹介します!
【説1】外国人の声から生まれた説(KFC公式)
⇒1970年代、日本に来た外国人が「七面鳥がないからせめてチキンで祝いたい」と言ったのがきっかけ。【説2】創業メンバーの「嘘」から生まれた説
⇒KFC日本法人の創業期メンバー・大河原毅氏が2018年に告白した話。1970年、KFC1号店は誰にも認知されず大苦戦。そんな時、幼稚園のクリスマス会でサンタ役を頼まれ、チキンを持って踊ったら大ウケ!これをヒントに「クリスマス=チキン」マーケティングを開始。その後、大河原氏はNHKに「フライドチキンは西洋のクリスマスの習慣なんですか?」と聞かれ・・・「七面鳥だって知ってました。でも『はい』と答えました。嘘をついたんです」と語っています。当時の日本(今も?)では、クリスマスは宗教行事というより「お祭り」感覚だったんですよね。しかも七面鳥は高すぎて庶民には手が出ないし、「アメリカの習慣だよ」と言われたら素直に信じてしまう時代でした。そこにケンタッキーがスポッとハマったわけです!
1974年から50年間、毎年ブレずに「クリスマスにはケンタッキー」を続けた一貫性。これが日本人の脳に刻み込まれた理由なんですね^^
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