📚 海外の英語授業実践シリーズ Vol.8
Four Corners(フォー・コーナーズ)で
教室の四隅が「意見表明の舞台」に変わる!
~ 「立場を選んで移動する」だけで全員が英語で意見を言える最強のディスカッション活動 ~
✅ 準備は「4枚の紙」だけ
✅ 全員が身体で意見表明する
✅ 1回5分でディスカッション完結
✅ 「黙っている生徒」が構造的にゼロになる
🏷 Four Cornersとは何か?
Four Corners(フォー・コーナーズ)とは、教室の四隅にそれぞれ異なる立場・意見を掲示し、生徒が自分の考えに最も近いコーナーに移動して、同じ立場の仲間と英語で理由を議論する協働学習アクティビティです。
最もオーソドックスな形では、四隅に「Strongly Agree(強く賛成)」「Agree(賛成)」「Disagree(反対)」「Strongly Disagree(強く反対)」の4つのサインを貼り、教師が出す意見文(ステートメント)に対して、生徒が自分の立場を「足で示す」という仕組みです。
💡 普通のディスカッションとの決定的な違い
普通のディスカッション → 「手を挙げて発言する」→ 一部の積極的な生徒だけが参加
Four Corners → 「全員が立ち上がって移動する」→ 意見を持っていない生徒も立場を選ばざるを得ない
「移動する」という身体的行為が強制力を持つため、教室にいる全員が意見表明に参加する構造が自動的に生まれます。挙手も指名も不要です。
🌍 どこの国で実践されているの?
Four Cornersはアメリカの協同学習研究者Spencer Kagan(ケーガン)が体系化したKagan Structuresの1つとして広まり、現在では世界各国のESL/EFL教室で活用されています。
インドネシアの中等教育での準実験研究では、Four Cornersストラテジーを使用した実験群の平均スコアが、通常のグループワーク活動を行った統制群よりも高い結果を示しました。
同じくインドネシアのSMA(高校)でのライティング研究では、Four Cornersが議論文(Hortatory Exposition)の執筆力向上に有効であることが実験的に確認されています。
UC Berkeleyの「Greater Good in Education」プロジェクトでは、Four Cornersをコミュニケーション力・批判的思考力・意思決定力を同時に育成する活動として公式に推奨しています。
🔧 Four Cornersの具体的な手順(完全版)
教室の四隅に、A4サイズ以上の紙を1枚ずつ貼ります。
🌟 基本パターン(意見表明型)
🟢
Corner 1
Strongly Agree
🔵
Corner 2
Agree
🟡
Corner 3
Disagree
🔴
Corner 4
Strongly Disagree
🌟 応用パターン(選択肢型)
Corner A: “The best way to learn English is by watching movies.”
Corner B: “The best way is by talking with native speakers.”
Corner C: “The best way is by reading books.”
Corner D: “The best way is by studying grammar rules.”
教師がステートメント(意見文)を読み上げ、黒板にも書きます。生徒はまず1分間、自分の立場と理由を考え、メモ用紙に書きます。
📝 ステートメント例(レベル別)
| レベル | ステートメント例 |
|---|---|
| 中1〜中2 | “Homework is important for learning English.” |
| 中3 | “Students should be allowed to use smartphones in class.” |
| 高1〜高2 | “AI will replace English teachers in the future.” |
| 高3・受験生 | “Studying abroad is more valuable than studying at a Japanese university.” |
ステートメントは「正解がない」ものを選ぶのが鉄則です。Yes/Noで答えが出る質問ではなく、人によって意見が分かれるテーマを設定します。Facing History & Ourselvesは「生徒が最低2つのコーナーに分かれるようなステートメント」を推奨しています。
「Go to your corner!」の合図で、全員が自分の立場に最も近いコーナーへ移動します。
🔄 移動のルール
🚶
全員が移動する
「どこにも行かない」は不可。
必ず1つ選ぶ
🤫
移動中は無言
友達に流されず、
自分の意見で決める
📝
メモを持って移動
理由を書いたメモは
議論で使う
同じコーナーに集まったメンバーで、「なぜその立場を選んだのか」を英語で話し合います。各コーナーで代表者(Speaker)を1人決め、最後にクラス全体へ発表します。
🔄 コーナー内の議論3ステップ
💬
① 個人シェア
2分|1人ずつ順番に
自分の理由を英語で話す
🤝
② グループ整理
2分|共通する理由を
3つにまとめる
🎤
③ 代表者決め
1分|スピーカーを選び
発表内容を確認
🗣 コーナー内の議論で使わせたいフレーズ
“I chose this corner because…”
“I agree with you. I also think that…”
“That’s a good point, but I would add…”
“The main reason for our group is…”
“We think this is important because…”
各コーナーの代表者がクラス全体に向けてグループの意見を英語で発表します。
🗣 発表で使わせたいフレーズ
“Our corner chose ‘Strongly Agree’ because…”
“We have three main reasons. First,… Second,… Third,…”
“We would like to respond to the ‘Disagree’ corner…”
全コーナーの発表が終わったら、教師がこう問いかけます:
他のコーナーの意見に説得されて立場を変える生徒が出る瞬間が、Four Cornersのハイライトです。Greater Good in Education(UC Berkeley)はこの「コーナーチェンジ」を、生徒が他者の視点を受け入れる力(perspective-taking)を育む核心的プロセスとして重視しています。
📝 コーナーチェンジした生徒にやらせたいこと
“I changed my mind because…”
“The ‘Disagree’ corner convinced me when they said…”
“I used to think…, but now I think…”
全ラウンドが終わったら、振り返りシートの記入とミニ・ライティングで締めくくります。
Reflection Q1
“Did you change your corner today? Why or why not?”
Reflection Q2
“What was the most surprising opinion you heard today?”
Mini Writing
“Write your final opinion in 5 sentences with reasons.”
🎯 なぜFour Cornersが効果的なのか?(5つの理由)
① 「全員参加」が物理的に保証される
従来のディスカッションでは「手を挙げない=参加しない」が可能でした。Four Cornersでは全員が立ち上がって移動するため、意見を持たないまま座っている生徒がゼロになります。Kapor Foundationはこれを「embodied participation(身体化された参加)」と呼んでいます。
② 意見の分布がクラス全体で「見える化」される
教師は教室を見渡すだけで「このクラスは賛成が多いな」「意見が真っ二つだ」と瞬時に把握できます。これは形成的評価(Formative Assessment)としても非常に優秀で、The Teacher Toolkitは「Four Cornersは最も効率的なクイック・アセスメント・ツールの1つ」と評価しています。
③ 「同じ意見の仲間」がいる安心感がスピーキングの壁を下げる
クラス全体の前で1人で意見を述べるのは心理的負荷が高いですが、Four Cornersでは同じ立場の仲間と一緒に話すため、安心感があります。「自分だけの意見ではない」という感覚が、英語で意見を言うことへの不安を大幅に軽減します。
④ 批判的思考力と意思決定力が同時に鍛えられる
ステートメントを聞いて→自分の立場を決めて→理由を考えて→他者と議論して→場合によっては立場を変える。この一連のプロセスは、Bloomのタキソノミーの「評価」「分析」レベルに直結します。UC Berkeleyは「Four Cornersは批判的思考と意思決定のスキルを育成する」と明記しています。
⑤ 短時間で何ラウンドも回せる
1つのステートメントにつき約5〜7分で完結するため、50分の授業内で4〜5ラウンド実施可能です。毎回異なるテーマで行えば、多様なトピックに触れながら大量のスピーキング練習ができます。
📋 日本の授業で使える!応用アイデア5選
💬 応用① 教科書の内容理解チェックに使う
教科書の登場人物の行動について「Do you think Kenta made the right decision?」のようなステートメントを出す。4つのコーナーで意見を交換させることで、表面的な内容理解を超えた深い読解力が自然に育ちます。
💬 応用② 文法導入の「予測クイズ」に使う
新しい文法を教える前に、4つの例文を四隅に貼り「Which sentence is correct?」と問いかける。全員が移動してから正解を発表すると、「あ、間違えた!」の気づきが深い学びに変わります。Studies Weeklyは「Four Cornersは形成的評価として最適」と評価しています。
💬 応用③ ライティングの前段階として使う
英作文のトピック(例:「制服は必要か?」)をFour Cornersでまず議論させ、理由と反論を口頭で出し切った後にライティングに入る。「書くことがない」問題が一切起きなくなります。インドネシアの研究でも、Four Cornersが議論文の質の向上に寄与することが確認されています。
💬 応用④ 入試の自由英作文対策に使う
共通テストや私大の自由英作文で頻出のテーマ(環境問題、テクノロジー、教育など)をステートメントにして毎回Four Cornersで議論。理由を複数考える習慣がつくと、本番で「理由が思いつかない」がなくなります。
💬 応用⑤ 「Four Choices」に拡張する(アメリカ国務省推奨版)
アメリカ国務省のAmerican Englishプログラムでは、Agree/Disagreeの代わりに4つの文法項目や語彙テーマを四隅に配置し、各コーナーで生徒が互いに教え合うバージョンを公開しています。例えば「Present Perfect」「Past Simple」「Present Continuous」「Past Continuous」の4コーナーで、各グループが担当文法の例文と説明を作成し、他グループに教える形です。
⚠️ 失敗しないための注意点
⏱ 明日からすぐ使える!50分授業タイムテーブル
| ⏰ 時間 | 📌 STEP | 📝 内容 |
|---|---|---|
| 0:00〜0:03 | STEP 1 | Today’s goal & rules の説明&コーナー確認 |
| 0:03〜0:05 | STEP 1 | Useful Expressions の確認&フレーズリスト配布 |
| 0:05〜0:07 | STEP 2 | 📢 Round 1 ステートメント提示 → 個人で考えてメモ |
| 0:07〜0:08 | STEP 3 | 🚶 コーナーへ移動! |
| 0:08〜0:14 | STEP 4 | 🔥 コーナー内で議論&代表者決め |
| 0:14〜0:18 | STEP 5 | 🎤 全体発表&コーナーチェンジ |
| 0:18〜0:28 | STEP 2-5 | 🔥 Round 2:新しいステートメントで繰り返し |
| 0:28〜0:38 | STEP 2-5 | 🔥 Round 3:最も議論が分かれるステートメント |
| 0:38〜0:44 | STEP 6 | ミニ・ライティング:最も印象に残ったテーマで自分の意見を5文で書く |
| 0:44〜0:48 | STEP 6 | 教師のフィードバック&本日の重要表現の整理 |
| 0:48〜0:50 | STEP 6 | Reflection(振り返りシート記入) |
📊 研究で実証されている効果
Four Cornersの教育効果は、複数の国と機関の研究・実践レポートで裏付けられています。
インドネシアでの準実験研究(Didascein Journal, 2024)では、64名の中等教育の生徒を実験群と統制群に分け、Four Cornersストラテジーを使った実験群が統制群を上回るスピーキング・スコアを記録しました。特に意見の理由づけ(reasoning)と議論の展開力(elaboration)の面で顕著な伸びが見られています。
インドネシア・バリのマハサラスワティ大学での研究では、Four Corners変形版である「Choose a Corner」を用いたライティング授業で、学生の批判的思考力が向上し、議論文(Argumentative Essay)の論理構成が有意に改善されたと報告されています。
アメリカでは、Kagan & Kagan(2009)の大規模実践レビューで、Four Cornersを含むKagan Structuresが学習参加度・学習意欲・対人コミュニケーション力の向上に寄与することが確認されています。
UC BerkeleyのGreater Good in Educationプロジェクトは、Four Cornersが「共感力」「視点取得(perspective-taking)」「意思決定力」の3つの社会的・情動的スキルを同時に育成する活動であると評価しています。
✨ まとめ
Four Cornersの魅力は、その圧倒的なシンプルさと「全員参加」の構造的保証にあります。
必要なのはA4の紙4枚とマーカー1本、そして「生徒に立場を選ばせる」ステートメントだけ。準備時間はわずか5分。それだけで、日本の英語教育で最も深刻な課題の1つである「ディスカッションで一部の生徒しか話さない」問題を、「移動する」という物理的行為で根本から解決できます。
「もう1回やりたい!」ではなく、「次のステートメントは何?」——この期待の声が教室に生まれたら、Four Cornersは成功です。
明日の授業で、たった1つのステートメントを投げかけてみてください。
教室の四隅から英語が聞こえてきます。💜
• Kagan, S., & Kagan, M. (2009). Kagan Cooperative Learning. San Clemente, CA: Kagan Publishing.
• The Teacher Toolkit. “Four Corners.” theteachertoolkit.com.
• Facing History & Ourselves. “Four Corners Teaching Strategy.”
• Greater Good in Education, UC Berkeley. “Four Corners.” ggie.berkeley.edu.
• Kapor Foundation. “Four Corners Strategy Guide.”
• American English, U.S. Department of State. “Week 2 – Collaboration and Movement Using Four Corners.”
• Studies Weekly. “Four Corners Teaching Strategy: Cooperative Learning.”
• Model Teaching. “The Four Corners Strategy – A Verbal, Active Method to Check for Understanding.”
• Geraldine, M. (2018). “The Effectiveness of Four Corners Strategy in Teaching Writing Hortatory Exposition Text.” International Journal of Multi Discipline Science (IJ-MDS).
• Didascein: Journal of English Education (2024). “Promoting Four Corners Strategy to Improve Secondary School Students’ Speaking Skills.”
• eWorkshop, Ontario Ministry of Education. “Four Corners: Cooperative Learning Strategy.”
• Rahayu (2013). “The Use of Four Corners Strategy in Teaching Speaking to Senior High School Students.”
• KnE Social Sciences (2023). “Choose a Corner Strategy in Fostering Students’ Higher Order Thinking Skill in Writing an Argumentative Essay.” Universitas Mahasaraswati Denpasar.
