ロンドン橋はアリゾナの砂漠の陸の上に建て直され、あとから橋の下に水路が掘られた
歴史のウソ・ホントNo.296

ロンドン橋はアリゾナの砂漠の陸の上に建て直され、あとから橋の下に水路が掘られた

アリゾナのロンドン橋は、完成してから下に水路を掘った

ウソFALSE

この判定の対象「ロンドン橋を買ったアメリカ人は、タワーブリッジと間違えて買った」

うなり度 読む時間9分 出典4件 確認した事実31件
もくじ
  1. ロンドン橋は開通の翌年から沈み始め、1960年代にはひびが入っていた
  2. アメリカの実業家マカロックは、246万ドルでロンドン橋を買った
  3. 「タワーブリッジと間違えて買った」という話は、記録では否定されている
  4. 石は「大きな骨董品」として海をわたり、砂の山を型にして陸の上で組み立てられた
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

アメリカ・アリゾナ州の砂漠の中に、ハヴァスー湖という湖があります。1938年にコロラド川にダムができて生まれた湖です。そのほとりに、レイク・ハヴァスー・シティという町があります。この町には、灰色の石でできた古いアーチ橋がかかっています。この橋は、1831年から130年以上、イギリスのロンドンでテムズ川をわたっていた「ロンドン橋」です。

ロンドン橋は1968年、アメリカの実業家に売られました。橋の石は1つずつ番号をつけてはずされ、海をわたってアリゾナへ運ばれ、建て直されました。建て直した場所には、川も湖の水もありませんでした。橋は、乾いた陸の上で組み立てられたのです。橋の下に水路が掘られたのは、橋が完成したあとでした。

この記事では、まず、ロンドン橋が売られることになった理由を紹介します。次に、買った人と値段の決め方、そして「タワーブリッジと間違えて買った」という有名な話を記録で確かめます。最後に、石をどうやって運び、陸の上でどう組み立てたのかを見ます。

01ロンドン橋は開通の翌年から沈み始め、1960年代にはひびが入っていた

アリゾナに移されたロンドン橋は、スコットランド出身の技術者ジョン・レニーが設計しました。レニーは工事が認められる前に亡くなり、同じ名前の息子ジョン・レニーが工事を引きつぎました。最初の石がすえられたのは1825年6月15日です。6年後の1831年、国王ウィリアム4世と王妃のもとで開通式が開かれました。

橋には、13万トンをこえる花こう岩が使われました。花こう岩は、かたくて重い石です。アーチは5つで、幅約900フィート(約270メートル)の川をまたいでいました。

開通してすぐに、橋の困りごとが始まりました。1832年にはもう、橋の一部が沈み始めていることが分かっていました。それでも当時の技術者は、安全だと判断しています。ところが、そのあと通る人や車は増える一方で、橋はその重さにたえ続けました。1902年には、橋の幅を約14フィート(約4メートル)広げる工事もしています。そして自動車の時代になりました。

1960年代には、橋にひびが入り始めました。さらに、もっと広い6車線の橋が必要になっていました。古い橋をもう一度広げるのは無理だと判断され、ロンドン市は新しいコンクリートの橋を作ることにしました。そして1967年、古いロンドン橋を売りに出したのです。

02アメリカの実業家マカロックは、246万ドルでロンドン橋を買った

買ったのは、ロバート・マカロック(Robert McCulloch)です。マカロックは、チェーンソーや船の外付けエンジンで成功した実業家でした。エンジンを試す場所を探していて、アリゾナ州のハヴァスー湖を見つけました。そして湖の岸の広い土地を州から買い、新しい町を作り始めていました。

町づくりを一緒に進めたのは、仲間のC・V・ウッドです。2人は、カリフォルニア州の静かな町アナハイムが、1955年にディズニーランドができてから観光地になったことを調べていました。人を呼べる名所が欲しい。そこで目をつけたのが、売りに出されたロンドン橋でした。

ロンドン市が橋を売りに出したのは、1967年です。マカロックが買った年は、市の資料では1968年です。町の観光局も、マカロックが落札したのは1968年4月18日だったとしています。ただ、アメリカ国立公園局の記録だけは「1967年に買った」と書いていて、資料によって1年ずれています。この記事では、市と観光局の資料に合わせて1968年としています。なお、国立公園局の記録では、買ったのはマカロック本人ではなく、マカロックの会社です。値段は246万ドル。観光局は、その値段の決め方も紹介しています。まず、橋を解体する費用の見積もり120万ドルを2倍にして、240万ドル。そこに、自分の年齢の60歳にちなんで、1歳につき1000ドル、合わせて6万ドルを足したというのです。

03「タワーブリッジと間違えて買った」という話は、記録では否定されている

ロンドン橋には、有名な話がつきまとっています。マカロックは、本当はタワーブリッジを買ったつもりだった。アリゾナに届いた地味な石の橋を見て、がっかりした――という話です。

タワーブリッジは、ロンドン橋とは別の橋です。管理している団体によると、1894年6月に開通しました。となりのロンドン塔に合わせた、ゴシック様式の見た目の橋です。橋の中央の部分が持ち上がり、マストの高い船を通せる仕組みになっています。タワーブリッジは今もロンドンにあり、この団体が管理しています。

では、「間違えて買った」は本当でしょうか。アメリカ国立公園局の記録は、1972年の本を引いて、こう書いています。マカロックが、多くの人と同じように、ロンドン橋をもっと絵になるタワーブリッジだと思いこんでいた、という話に本当のところはない。町の観光局も、マカロックはタワーブリッジを買ったつもりではなかった、と説明しています。

ただし、その1972年の本の著者も、1つ認めていることがあります。ロンドン橋とタワーブリッジを取り違えている人は多いので、アリゾナを訪れる観光客の中には、がっかりする人も少なくないだろう、というのです。

04石は「大きな骨董品」として海をわたり、砂の山を型にして陸の上で組み立てられた

ロンドンでは、古い橋を壊す工事と、同じ場所に新しい橋を作る工事が、同時に進められました。工事中も、工事していない部分は通れるようにしたのです。古い石は、大きなクレーンのような台で1つずつつり上げてはずしました。そのとき、石には1つずつ番号がつけられました。

石は船でカリフォルニア州のロングビーチへ運ばれました。町の観光局によると、パナマ運河を通ったそうです。ロングビーチでは、アメリカの税関が、石を「大きな骨董品」と見なし、料金を取りませんでした。そこからトラックで、アリゾナまで運ばれました。

1968年9月23日、アリゾナで最初の石をすえる式が開かれました。石をすえたのは、ロンドン市長のギルバート・イングルフィールドです。工事の責任者は、イギリスの技術者ロバート・ベレスフォードでした。ベレスフォードは、レニーの元の設計図の写しを使って、橋を組み立てました。

工事は、まったく水のない陸の上で行われました。アーチの下には、形を整えた砂の山を作り、それを型にしてアーチを組みました。橋が完成すると、その下の地面を掘って、長さ約1マイル(約1.6キロ)の水路を作りました。こうして、陸だった半島の先が島になり、橋は町と島を結ぶようになったのです。

1971年10月10日、ロンドン市長が出席して、橋の2度目の開通式が開かれました。

橋は水のない陸の上で、砂の山を型にして組み立てられた。橋の下の水路は、完成してから掘られた。
橋は水のない陸の上で、砂の山を型にして組み立てられた。橋の下の水路は、完成してから掘られた。
LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

アリゾナの橋は、中身はコンクリート、外側がロンドンの石

アリゾナのロンドン橋は、ロンドンにあった橋をそのまま組み立て直したものではありません。アメリカ国立公園局の記録によると、もとの橋の石13万トンのうち、アリゾナに運ばれたのは1万トンだけでした。橋の本体はコンクリートのアーチで、その表面にロンドン橋の花こう岩をはっています。石の中には、元のブロックを丸ごと使ったのではなく、表面をうすく切ったものを、タイルのようにはったものもあります。

一方で、1902年に橋を広げたときに作られた手すりと、その下の飾りの石は、そのまま残されました。記録は、橋は全体として、多くの人の目には「本物」に見える、と書いています。

同じ場所には、「ロンドン橋」が何本もかかってきた

ロンドン橋と呼ばれる橋は、1本ではありません。ロンドン橋とタワーブリッジを管理する団体によると、1176年から、司祭のピーター・ド・コールチャーチが、テムズ川で最初の石の橋を作り始めました。この橋は1209年に完成し、600年以上も使われました。そのあと1823〜1831年に作りかえられたのが、アリゾナに移された橋です。今ロンドンにあるロンドン橋は、コンクリートにみがいた花こう岩をはった橋です。1967〜1972年に作られ、1973年にエリザベス女王が開通させました。

レニーの橋は、イギリス議会が1824年7月にレニーの案を選んで作られた橋です。それまでの古い橋は、流れの強さや、1814年の冬の氷で土台がけずられ、危なくなっていました。

2つの「最初の石」の式は、どちらも乾いた地面の上で開かれた

1825年6月15日、ロンドンで最初の石をすえる式が開かれました。場所は、川の中に作った、水をせき止めた大きな囲いの中です。満潮の水面より約45フィート(約14メートル)低い川底に、赤いじゅうたんがしかれていました。

それから143年後の1968年、アリゾナでも、ロンドン市長が最初の石をすえました。記録は、この式を、もとの工事の式を思い出させるものだったと書いています。アリゾナの工事は、まだ水のない陸の上で行われました。どちらの式も、今は水の上にかかる橋のための式なのに、乾いた地面の上で開かれたことになります。

設計したジョン・レニーは、すでに多くの橋を手がけた技術者でした。ウォータールー橋やサザーク橋も、レニーの設計です。息子のジョン・レニーは、1831年の開通式で、国王からナイトの位をさずけられました。

橋は、新しい町に観光客を呼ぶ名所として買われた

アメリカ国立公園局の記録は、この橋の価値を、技術の新しさより、その歴史とかかわった人々にある、としています。マカロックとウッドは、ディズニーランドができて観光地になったアナハイムを手本に、新しい町に人を呼ぶ名所を探していました。ちょうどロンドン市も、橋の石をばらばらに売るのではなく、1つの橋としてまとめて売りたいと考えていました。2つの思いが重なったのです。

ウッドは、この橋を「世界でいちばん古い英語を話す町から、いちばん新しい英語を話す町へ」運んだ、と表現しています。市の資料によると、ロンドン橋を買ったことで、レイク・ハヴァスー・シティの名前は世界に知られるようになりました。町が正式に市になったのは、橋の完成から7年後の1978年です。

05まとめ

1831年からロンドンのテムズ川をわたっていたロンドン橋は、少しずつ沈み、ひびも入って、1960年代に作りかえが決まりました。古い橋は売りに出され、1968年、アメリカの実業家マカロックが246万ドルで買いました。「タワーブリッジと間違えて買った」という話は、記録では否定されています。

石は「大きな骨董品」として海をわたり、アリゾナの砂漠の、水のない陸の上で組み立てられました。橋の下の約1マイルの水路が掘られたのは、橋が完成したあとです。アリゾナのロンドン橋は、川をわたるために運ばれたのではありません。新しい町に人を呼ぶために運ばれ、橋のために水路のほうが作られたのです。

人に話すなら、こう言おう

ロンドン橋は1968年にアメリカ人に売られて、アリゾナの砂漠の町にあるんだよ。水のない陸の上で組み立てて、できてから下に水路を掘ったんだって。タワーブリッジと間違えて買った話は、記録では否定されてる。
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英語で読む

A Bridge Before the River

CEFR A2217 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In the desert of Arizona, there is an old stone bridge from London.アリゾナ州の砂漠に、ロンドンから来た古い石の橋があります。 It is London Bridge, and it crossed the River Thames from 1831.それはロンドン橋で、1831年からテムズ川をわたっていました。 By the 1960s, it was sinking slowly, and it had cracks.1960年代には、少しずつ沈んでいて、ひびも入っていました。 So the City of London decided to build a new bridge and sell the old one.そこでロンドン市は、新しい橋を作り、古い橋を売ることにしました。

An American businessman named Robert McCulloch bought it for 2,460,000 dollars.ロバート・マカロックというアメリカの実業家が、246万ドルでそれを買いました。 He was building a new town by Lake Havasu in Arizona.彼は、アリゾナ州のハヴァスー湖のそばに、新しい町を作っていました。 He wanted a famous place that would bring visitors.彼は、観光客を呼べる有名な名所が欲しかったのです。

Workers took the old bridge apart and put a number on each stone.作業員は古い橋を解体し、石の1つ1つに番号をつけました。 The stones went by ship to California and then by truck to Arizona.石は船でカリフォルニアへ、それからトラックでアリゾナへ運ばれました。 At customs, the stones were called "a large antique," so there were no fees.税関で、石は「大きな骨董品」とされたので、料金はかかりませんでした。

The building work in Arizona was unusual.アリゾナでの工事のやり方は、ふつうではありませんでした。 There was no river under the new bridge.新しい橋の下には、川がありませんでした。 Workers built it on dry land, using shaped hills of sand under the arches.作業員は、アーチの下に形を整えた砂の山を作り、乾いた陸の上で橋を組み立てました。 After the bridge was finished, they dug a channel about one mile long under it.橋が完成したあとで、その下に長さ約1マイルの水路を掘りました。 The bridge opened again on October 10, 1971.橋は1971年10月10日に、ふたたび開通しました。

Many people say that McCulloch wanted Tower Bridge and bought the wrong bridge by mistake.マカロックは本当はタワーブリッジが欲しくて、間違えて別の橋を買った、と言う人がたくさんいます。 But a 1972 book about the bridge says that this story is not true.でも、この橋についての1972年の本は、その話は本当ではないと書いています。 Tower Bridge is a different bridge, and it is still in London today.タワーブリッジは別の橋で、今もロンドンにあります。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How much did McCulloch pay for the bridge?

    マカロックは橋にいくら払いましたか。

  3. Q3Why were there no fees at customs?

    税関で料金がかからなかったのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "dug" is closest in meaning to ...

    第4段落の dug という語に最も意味が近いのは…

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • desert名詞
    砂漠

    It rarely rains in the desert.

    砂漠ではめったに雨が降らない。

    💡 アクセントは前(DEsert)。dessert(デザート)とつづりが似ているので注意。

  • sink動詞
    沈む

    The old boat sank in the storm.

    その古い船は嵐で沈んだ。

    💡 sink - sank - sunk と変化する。

  • crack名詞
    ひび、割れ目

    There is a crack in my phone screen.

    私のスマホの画面にひびが入っている。

    💡 動詞では「ひびが入る、割る」。

  • businessman名詞
    実業家、会社を経営する人

    The businessman opened three new shops.

    その実業家は新しい店を3つ開いた。

    💡 男女どちらにも使える businessperson という言い方もある。

  • customs名詞
    税関

    We showed our bags at customs.

    私たちは税関でかばんを見せた。

    💡 「税関」の意味では s がつく。custom(習慣)とは別の使い方。

  • antique名詞
    骨董品

    This clock is an antique from 1900.

    この時計は1900年の骨董品だ。

    💡 発音はアンティーク。形容詞では「古い時代の」。

  • channel名詞
    水路、海峡、(テレビの)チャンネル

    Boats move slowly through the channel.

    船は水路をゆっくり進む。

    💡 イギリスとフランスの間の海峡は the English Channel。

  • mistake名詞
    間違い

    I took his umbrella by mistake.

    私は間違えて彼のかさを持ってきた。

    💡 by mistake で「間違えて」。make a mistake で「間違える」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 31件)。

  1. Historic American Engineering Record, London Bridge, HAER No. AZ-57(1999, 米国国立公園局/米国議会図書館)tile.loc.gov
  2. Our bridges(City Bridge Foundation:ロンドン橋とタワーブリッジを管理する団体)citybridgefoundation.org.uk
  3. Lake Havasu City, Arizona, Comprehensive Annual Financial Report 2015(レイク・ハヴァスー市)lhcaz.gov
  4. The London Bridge(Go Lake Havasu:レイク・ハヴァスー市の観光局)golakehavasu.com

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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