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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
READING 第112回 基礎 読了 8分

鳥肌はなぜ立つのか — 体が探している「もう無い毛」

Why Do We Get Goosebumps?

寒いときだけでなく、好きな音楽を聴いたときにも鳥肌は立つ。その正体は、毛むくじゃらだった頃の名残の反射だった。約210語のやさしい英文に、全文音声・英語定義つき語句・一文ずつの和訳、そして「鳥肌の世界史」コラムを添えて。

監修:原田高志(原田英語.com)

今日のテーマは「鳥肌」です。寒い朝にゾワッ、好きな曲のサビでゾワッ——あの小さなブツブツ、じつは何百万年も前に失った毛を、体がいまだに逆立てようとしている痕跡なんです。しかも英語では「ガチョウの肌」、フランス語では「めんどりの肌」。世界中の言語が、鳥肌を鳥で説明しているのはなぜか。英文のあとのコラムまで、ぜひどうぞ。

音で学ぶ

ネイティブ音声で、聞く・くり返す・訳を確かめる。全部この場でできます。

速さ・和訳・練習の設定

読む速さ

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和訳

ふだんは英文だけ。1文ずつ確かめたいときは、その文の「和訳」を押すと、そこだけ開きます

シャドーイング

オンにして文を押すと、同じ1文を3回くり返します。あいだの無音で、自分の口を動かしてください

英文(210 words)

Have you ever felt your skin prickle during a cold morning, or while listening to a song you love?

寒い朝や、大好きな曲を聴いているときに、肌がぞわっとしたことはありませんか。

Those tiny bumps on your arms have a name: goosebumps.

腕にできるあの小さな粒には名前があります。goosebumps(鳥肌)です。

The scientific term is piloerection, and it happens when small muscles at the base of each hair contract.

学術的には piloerection(立毛)と呼ばれ、一本一本の毛の根元にある小さな筋肉が収縮すると起こります。

When those muscles tighten, the hair stands up and the skin around it pushes outward.

その筋肉が縮むと毛が立ち上がり、まわりの皮膚が外へ押し出されます。

For animals with thick fur, this reaction is genuinely useful.

厚い毛をもつ動物にとって、この反応は本当に役に立ちます。

A cat that puffs up its fur traps a layer of warm air close to its body.

毛を膨らませた猫は、体のすぐ近くに暖かい空気の層を閉じ込めることができます。

A frightened dog looks larger than it really is, which may convince a predator to walk away.

おびえた犬は実際より大きく見え、それによって捕食者が立ち去ることもあります。

Humans lost most of that fur long ago, so the reflex no longer keeps us warm or makes us look dangerous.

人間ははるか昔にその毛のほとんどを失ったので、この反射はもう体を温めもしなければ、私たちを恐ろしく見せもしません。

It simply remains, like an old switch that nobody bothered to remove.

ただ残っているだけです。誰も外さずに放っておいた古いスイッチのように。

What makes goosebumps strange is that emotion can trigger them too.

鳥肌が不思議なのは、感情によっても引き起こされるという点です。

Fear, awe, and beautiful music all activate the same nervous system that responds to cold.

恐怖、畏敬の念、そして美しい音楽は、寒さに反応するのと同じ神経系を働かせます。

Researchers have found that people who get goosebumps from music tend to feel emotions more intensely in general.

音楽で鳥肌が立つ人は、全般に感情をより強く感じる傾向があることが研究でわかっています。

So the next time your arms tingle during a favorite chorus, remember what is happening.

だから今度、お気に入りのサビで腕がぞくっとしたら、何が起きているのか思い出してください。

Your body is reaching for fur that disappeared millions of years ago.

あなたの体は、何百万年も前に消えた毛を探しているのです。

重要語句

語句意味英語の定義
prickle ちくちくする、ぞわっとする to feel small sharp points on your skin(肌に小さな針が触れるように感じる)
contract 収縮する to become smaller or tighter(小さく・きつく縮む。名詞「契約」と同じ綴りで、動詞はアクセントが後ろ)
trap 閉じ込める to keep something in one place so it cannot escape(逃げられないように留めておく)
predator 捕食者 an animal that hunts and eats other animals(他の動物を狩って食べる動物。prey=獲物とセットで)
reflex 反射 a body movement that happens without thinking(考えなくても勝手に起こる体の反応)
awe 畏敬の念 a feeling of great respect mixed with fear or wonder(恐れと驚きの混ざった深い敬意。awesome の語源)
tingle ぴりぴりする、うずく to feel a slight, not painful, prickling(痛くない程度の軽い刺激。心地よい場面にも使える)

コラム:世界中の言語が、鳥肌を「鳥」で説明している ~ガチョウとめんどりと武者震いの話~

なぜ「ガチョウ」なのか

英語の goosebumps は、直訳すれば「ガチョウのこぶ」。羽をむしられたガチョウの皮膚に、羽の生えていた穴がブツブツと残っている様子から生まれた言葉です。イギリス英語では goose pimples、少しかたい言い方では goose flesh とも言います。

面白いのはここからです。フランス語では chair de poule(めんどりの肌)、ドイツ語では Gänsehaut(ガチョウの皮膚)、スペイン語では piel de gallina(めんどりの皮膚)。そして日本語は「鳥肌」。互いに相談したわけでもないのに、世界中の言語が「羽をむしった鳥」という同じ比喩にたどり着いているのです。台所で鳥をさばいた経験が、それだけ人類共通だったということでしょう。言葉は、その言語を話す人たちの暮らしの記録でもあるのです。

「感動の鳥肌」に名前をつけた研究者たち

本文にも出てきた「音楽で立つ鳥肌」には、じつは専門用語があります。frisson(フリソン)——フランス語で「身震い」を意味する言葉で、心理学の論文でもそのまま使われています。研究では、曲の展開が予想を裏切った瞬間(急に静かになる、転調する、声が重なる)に起こりやすいことが報告されていて、frisson を感じやすい人は音楽への没入度が高い傾向があるとされています。

ちなみに日本語の「武者震い」は、恐怖ではなく高揚で震えるという、世界的にも珍しい「ポジティブな震え」の語彙です。英語に直訳できる一語はなく、trembling with excitement などと説明的に訳すしかありません。「数字で階段を作る日本語、形容詞で体感を描く英語」のような言語ごとの得意分野が、震えの語彙にも表れているのは面白いところです。

鳥肌は「うそ発見器」になるか

皮膚の反応は自分では止められません。だからこそ研究者たちは、鳥肌や皮膚の電気反応を「本人も隠せない感情の窓」として扱ってきました。映画の予告編やCMの試写で、視聴者の皮膚反応を測って「どのシーンで心が動いたか」を調べる手法は実際に使われています。

あなたが好きな曲のサビでゾワッときたとき、それは「この曲が好きだ」という、体が勝手に押してしまった「いいねボタン」のようなもの。言葉より正直な反応なのです。

ことばの旅:goose は「ガー」と鳴く音から

最後に、ちょっとした言葉の小ネタを。goose の語源をさかのぼると、インド・ヨーロッパ祖語の *ghans- にたどり着きます。これはガチョウの鳴き声「ガー」を写した擬音語だと考えられていて、ドイツ語の Gans、ラテン語の anser、サンスクリット語の haṃsa(ハンサ)——インドの白鳥の名前——まで、みんな親戚です。

つまり goosebumps という一語のなかには、数千年前の人類が聞いた「ガー」という鳴き声が、いまも化石のように残っているわけです。腕にゾワッと立った小さなブツブツと、はるか昔の鳴きまね。次に鳥肌が立ったら、そんな時間の旅も一緒に思い出してみてください。

確認クイズ

  1. Q1. 本文によると、厚い毛をもつ動物にとって立毛が役に立つのはなぜか。

  2. Q2. 下線部 It simply remains の It が指すものはどれか。

よくある質問

goosebumps はなぜ「ガチョウ」なのですか?

羽をむしったガチョウの皮膚のぶつぶつに似ているからです。フランス語は「めんどりの肌」、ドイツ語は「ガチョウの皮膚」、日本語は「鳥肌」。世界中の言語が同じ比喩にたどり着いた珍しい例です。

この英文はどのくらいのレベルですか?

約210語、中学卒業〜高校1年程度の語彙で書かれています。piloerection など一部の専門語には英語定義つきの語注をつけているので、辞書なしで読み切れる想定です。