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日刊原田英語 Harada Eigo Daily
AI & ENGLISH 第1回 標準 読了 5分

hallucination — AIが「堂々と嘘をつく」ことを、なぜ幻覚と呼ぶのか

AI×英語 第1回

AI関連の英文記事でいちばん出てくる単語のひとつが hallucination。医学用語の「幻覚」がなぜAIの誤りを指すようになったのか、語源はラテン語の「心がさまよう」。あわせて、自分の英作文をAIに直させるときに使える英語プロンプトを1本、そのままコピーできる形で置いておきます。

監修:原田高志(原田英語.com)

AIの英語ニュースを読んでいると、必ずぶつかる一語があります。hallucination。辞書を引くと「幻覚」と出てきて、機械が幻覚を見る? と首をかしげた人も多いはずです。今日はこの一語を語源から解きほぐしたあと、明日から使える英語プロンプトを1本お渡しします。

音で学ぶ

ネイティブ音声で、聞く・くり返す・訳を確かめる。全部この場でできます。

速さ・和訳・練習の設定

読む速さ

聞き取れないときは 0.75x へ。音はそのまま、速さだけ変わります

和訳

ふだんは英文だけ。1文ずつ確かめたいときは、その文の「和訳」を押すと、そこだけ開きます

シャドーイング

オンにして文を押すと、同じ1文を3回くり返します。あいだの無音で、自分の口を動かしてください

2023年ごろから、英字メディアのテクノロジー面には毎日のようにこの単語が並ぶようになりました。

The model still hallucinates.(このモデルはまだハルシネーションを起こす)

動詞にまでなっています。機械が主語で「幻覚を見る」——英語として、なかなか大胆な言い回しです。しかしこの語が選ばれた理由をたどると、AIというものの性質そのものが、はっきり見えてきます。

今日のAI英語

hallucination /həˌluːsɪˈneɪʃn/

(AIの)もっともらしい嘘、事実でない出力/(医学)幻覚

when an AI system confidently produces information that is not true

語源はラテン語の alucinari。意味は「心がさまよう」「うわの空になる」です。ギリシャ語の aluein(落ち着かずうろつく)とつながっているとされます。つまり、この語のいちばん古い絵は「心がふらふらとさまよい歩く」というものでした。

17世紀にこれが医学用語として定着し、「実際にはないものを、あると感じてしまうこと」=幻覚になります。ポイントは、幻覚を見ている本人には、それが本物に見えているということ。嘘をついているつもりがまったくない、というのが幻覚の本質です。

AI研究者がこの語を選んだ理由も、まさにそこにあります。AIは嘘をついているのではありません。もっともらしい続きの言葉を計算しているだけで、自分が事実から外れたことに気づいていない。lie(嘘)でも error(誤り)でもなく hallucination——「悪意がない」「本人は本当だと思っている」という一点を、この語だけが正確に言い当てているわけです。

派生形もまとめて押さえておきましょう。動詞は hallucinate(幻覚を起こす)、形容詞は hallucinatory(幻覚を伴う)。ニュースでは a hallucinated citation(存在しない架空の引用文献)のように、過去分詞が形容詞として使われることも増えています。

こう使う

The chatbot hallucinated a court case that does not exist.

そのチャットボットは、実在しない判例をでっちあげた。

Always check the sources; large language models can hallucinate with total confidence.

必ず出典を確認しよう。大規模言語モデルは、完全に自信満々のまま事実でないことを言うことがある。

Reducing hallucination remains one of the hardest problems in the field.

ハルシネーションを減らすことは、この分野で最も難しい課題のひとつであり続けている。

今日のプロンプト

自分の英作文を「なぜ直したか」つきで直させるプロンプト

AIに英文を直させると、きれいな英語は返ってきますが、それを読んでも自分の英語力は伸びません。伸びるのは「なぜ直されたのか」を日本語で理解したときだけです。このプロンプトは、AIに添削者ではなく解説者をやらせるためのものです。

Prompt
You are an experienced English teacher for Japanese learners.

I will give you an English sentence I wrote. Do the following, and nothing else:

1. Rewrite it as a native speaker would naturally write it. Keep my intended meaning exactly. Do not add new ideas.
2. Show the original and your version side by side.
3. In Japanese, explain each change you made and why. Focus on the rule or the nuance, not just "this sounds better."
4. Point out the single most important habit I should fix, in Japanese, in one sentence.
5. Give me two more example sentences that use the same corrected pattern.

Here is my sentence:
"""
(ここに自分の英文を貼る)
"""

使いかた

  1. 1 上のプロンプトをそのままコピーして、AIに貼り付ける
  2. 2 いちばん下の三重引用符の中に、自分が書いた英文を1〜3文だけ入れる(長く入れすぎると解説が薄くなる)
  3. 3 返ってきた日本語の解説だけを読み、直された英文は最後に音読する
  4. 4 ④で指摘された「直すべき癖」を、次に英文を書くときの1点だけの目標にする
直された英文をそのまま覚えようとしないこと。 覚えるのは④の「癖」だけで十分です。癖を1つ直すと、まだ書いていない100文が同時に直ります。

AI時代に、英語を学ぶということ

ここで、少し立ち止まって考えたいことがあります。

AIがこれだけ英語を書けるようになったのに、なぜ人間が英語を学ぶ必要があるのか——この質問は、私も生徒からよく受けます。

私の答えはこうです。AIが出してきた英語が正しいかどうかを判断できるのは、英語がわかる人だけだから。

今日の hallucination がまさにその話でした。AIは、自信の量と正しさの量が比例していません。堂々と間違えます。文法的に完璧で、語彙も洗練されていて、しかし事実として存在しない判例を書く。流暢さは、正しさの証拠にならない。

これは英語学習そのものにも、そっくり当てはまります。すらすら話せることと、正確に伝わることは、別のことです。AIの登場によって、「なんとなく英語っぽいもの」を作る能力の価値は下がりました。代わりに上がったのは、出てきたものを吟味する力——つまり、語源を知っていること、ニュアンスの差を感じ取れること、「この語ではなく、なぜあの語なのか」を問えること。

このサイトが毎日、たった一語を語源まで掘り下げている理由も、そこにあります。単語をたくさん知っている人ではなく、一語を深く知っている人が、AIを使いこなします。

⚠️ 使うときの注意

AIに英語を教わるとき、いちばん危ないのは「日本語で説明させたときの解説」です。英文自体はかなり正確に書けても、その英文についての文法解説は、平気で間違えます「なぜこう直したか」の説明は、必ず辞書か文法書で裏を取ってください。

もうひとつ。AIに「この表現はネイティブが使いますか?」と聞くと、たいていの場合 Yes と返ってきます。AIは会話の流れに沿おうとするので、誘導する聞き方をすると誘導どおりの答えが返るのです。聞くなら「この表現とこの表現、どちらがより自然ですか。理由も」と、比較の形で聞くのがコツです。

確認クイズ

  1. Q1. AIの文脈で hallucination が指すのはどれか。

  2. Q2. hallucination の語源であるラテン語 alucinari の意味はどれか。

よくある質問

「ハルシネーション」は日本語ではどう言えばよいですか?

定訳はまだありません。技術文書では「幻覚」とそのまま訳すこともありますが、一般向けの記事では「もっともらしい誤り」「事実でない出力」と言い換えるほうが伝わります。「嘘」と訳さないほうがよいのは、悪意がないという語のニュアンスが消えてしまうからです。

AIに英語を添削させると、力がつかないと聞きました。

添削結果だけを受け取ると、たしかにほとんど残りません。残るのは「なぜ直されたか」を自分の言葉で言えたときです。上のプロンプトが③と④で日本語の説明を要求しているのは、そのためです。AIに直させるのではなく、AIに説明させる——この一点を変えるだけで、同じツールがまったく違う効き方をします。