原田先生の英語とっておきの話

【アメリカ高校生たちの青春】なぜ彼らは歌わずに口パクで熱狂するのか?最強の一体感を生むLip Dub「リップダブ」の正体

海外ドラマや映画で、高校生たちが校舎のいたるところで一斉に歌い踊り、巨大なパーティのような盛り上がりを見せるシーンを見たことはありませんか。あれは一体何なのか?実は、あれこそがアメリカの高校文化を象徴する一大イベント、「リップシンク」や「リップダブ」なのです。

特に、全校生徒や教職員が参加し、流行りのヒット曲に合わせて口パクをしながら、校内をワンカットで練り歩くように撮影する「リップダブ(Lip Dub)」は、多くの学校で作られる一大プロジェクトです。これは単なる遊びではなく、学校生活における最高の思い出作りであり、愛校心を爆発させるための重要な伝統行事となっています。

なぜ彼らは、歌うのではなく「口パク」に全力を注ぐのでしょうか。その驚くべき文化と、学校全体を熱狂させる目的の裏側に迫ります。YouTubeで「High School Lip Dub」と検索すれば、その熱狂ぶりがすぐにわかるはずです。

 

✅ 米国高校文化「リップダブ」の核心―なぜこれほど盛り上がるのか

この熱狂的なイベントの本質を理解するための重要ポイントを整理します。

  • 「リップダブ」とは何か?:ヒット曲に合わせて口パクをしながら、校内を移動する様子をワンカットで撮影して作るミュージックビデオのことです。
  • 開催時期は「秋」が本番:新学年が始まったばかりの9月~10月、卒業生を祝うお祭り「ホームカミング」週間の目玉イベントとして企画されるのが定番です。
  • 最大の目的は「一体感」:最大の目的は、学校全体の「スクールスピリット(愛校心)」を高め、生徒や教職員の一体感を醸成することです。
  • 全員が主役:歌唱力は問われないため、運動部、文化部、生徒会、先生まで、学校に関わる全ての人が主役になれます。
  • 最高の思い出と学校PR:完成したビデオは生徒たちにとって最高の思い出になるだけでなく、YouTubeなどで公開され、学校の魅力を伝える強力なPRツールにもなります。

これらの要素が組み合わさり、「リップダブ」は単なる学校行事の枠を超え、生徒たちの青春を象徴する一大文化イベントとなっているのです。

熱狂の舞台裏:秋のお祭り「ホームカミング・ウィーク」

では、この一大イベントは一体いつ行われるのでしょうか。その答えは、主に「」です。新学年がスタートして間もない9月から10月にかけて、アメリカの多くの高校では「ホームカミング(Homecoming)」と呼ばれる、卒業生を母校に迎える伝統的なお祭りが開催されます。

このホームカミングの週末に行われるアメフトのビッグゲームに向け、その一週間は「スピリット・ウィーク(Spirit Week)」と名付けられ、学校中がお祭りムード一色に染まります。「パジャマで登校する日」「80年代ファッションの日」「双子コーデの日」など、日替わりでユニークなドレスコードが設定され、生徒も先生も一緒になって楽しみます。リップダブは、このスピリット・ウィークの盛り上がりを最高潮に引き上げ、学校のエネルギーを映像に焼き付けるための、最高のフィナーレとして企画されるのです。

学校が本気で取り組む3つの理由

リップダブは生徒たちだけの楽しみではありません。学校側も非常に重要なイベントとして位置づけ、積極的にサポートします。その背景には、明確な目的があります。

① 愛校心(スクールスピリット)の醸成
リップダブは、学校生活の楽しさや誇りを体現するイベントです。全校生徒が一体となって作り上げたビデオは、自分たちの学校への愛着を深め、強い帰属意識を育みます。これは生徒の学習意欲の向上にも繋がると考えられています。

② 学校の魅力を発信する広報活動
完成したリップダブビデオは、YouTubeなどの動画プラットフォームで公開されるのが一般的です。数百万回再生されるビデオも珍しくなく、世界中の人々に学校の活気ある雰囲気や生徒たちの創造性を伝える、非常に効果的なプロモーションツールとなります。これを見て、その学校への入学を希望する生徒も出てくるのです。

③ ポジティブな学校文化の構築
リップダブの制作過程は、生徒主導で行われることがほとんどです。企画、選曲、各グループの演出などを生徒たちが自ら考えることで、リーダーシップや責任感、協調性が育まれます。このようなポジティブな活動は、学校全体の雰囲気を明るくし、生徒たちがより積極的に学校生活に関わるきっかけを作るのです。

<まとめ>青春のエネルギーが凝縮された最高の文化祭

アメリカの高校で行われるリップダブは、単なる「口パクビデオ」ではありません。それは、学校というコミュニティが一つになり、生徒一人ひとりが輝くための最高の舞台です。歌の上手さや運動神経といった個々の能力ではなく、「楽しむ心」と「協力する姿勢」さえあれば誰もが参加できるこのイベントは、多様性を尊重するアメリカの教育文化を象徴していると言えるでしょう。

企画から撮影、そして完成したビデオをみんなで鑑賞するまで、そのすべてが忘れられない青春の1ページとなります。日本の文化祭や体育祭とはまた違った形で、生徒たちのエネルギーと創造性が爆発するリップダブ。ぜひ一度、YouTubeで「High School Lip Dub」と検索してみてください。そこに映っているのは、彼らの最高の笑顔と、学校への愛に満ちた熱狂的な姿のはずです。

関連記事