
海外ドラマやニュースで、誰もが一度は首を傾げたことがあるはず。
「“College”と“University”、どっちも『大学』って訳してるけど…」
「え、同じ意味じゃないの!?使い分け間違えたら恥ずかしい…?」
ハーバード大学は “Harvard University” なのに、その学部は “Harvard College” と呼ばれる。 「大学生です」は “I’m a university student” ではなく “I’m a college student” と言うのが一般的。 この混乱、実は単なる呼び方の違いではありません。
「結局、単科大学か総合大学かっていう、規模の話でしょ?」
実は、この2つの言葉には、単なる「規模の違い」では片付けられない、アメリカとイギリスの歴史、教育システム、そして“学問への向き合い方”に根差した、明確な序列と役割分担が隠されていたのです。
✅ この記事で分かること
- “University”を名乗るための絶対条件とは?
- ネイティブが「大学生です」を”I go to college.”と言う歴史的なワケ
- 【衝撃】”University”より格上?全米エリートが目指す「リベラルアーツ・カレッジ」の正体
- 【要注意】イギリスで”College”と言うと全く違う意味になる!?
【真実①】大学院の有無が絶対的な境界線! “University”は「研究帝国」の証
まず、アメリカにおける最も大きな違いは、大学院課程(Graduate School)の有無です。これが決定的な境界線となります。
🤔どう違うの?
University(ユニバーシティ)
複数の学部(CollegeやSchool)と、修士号・博士号を授与できる大学院を併せ持つ「総合大学」のこと。学部教育だけでなく、最先端の研究を行う巨大な「研究機関」としての役割が強く、その名前には威信が伴います。
College(カレッジ)
主に学士号(Bachelor’s Degree)を授与する、4年制の学部教育が中心の大学を指します。大学院を持たないか、持っていても小規模。研究よりも「質の高い教育」に重点を置いている場合が多く、学生一人ひとりへの手厚い指導が特徴です。
つまり、”University”は「研究も教育も行う巨大な複合体」、”College”は「学部教育に特化した学び舎」というイメージです。この違いが、次の「なぜネイティブはCollegeと言うのか?」という疑問に繋がります。
【真実②】なぜネイティブは「大学生」を”College Student”と呼ぶのか?歴史に隠された納得の理由
「大学=Universityじゃないの?」という私たちの感覚とは裏腹に、アメリカでは「大学に行く」は “go to college” が一般的。この理由は、アメリカの大学の歴史そのものにありました。
アメリカで最初に設立された高等教育機関は、1636年創立のハーバード・カレッジでした。その後、イェールやプリンストンなども、まずは学部教育を行う「カレッジ」として誕生したのです。大学院を持つ巨大な「ユニバーシティ」へと発展したのは、それからずっと後のこと。
この歴史から、アメリカ人にとって「大学で学ぶ=Collegeで学ぶ」という概念が深く根付いているのです。そのため、日常会話では、自分が通う学校が”University”という名前であっても、大学教育全般を指す言葉として”College”を使うのが最も自然な表現となっています。
💡【重要】”University”の中に”College”がある!?
この歴史の名残で、ハーバード大学(Harvard University)のような巨大総合大学は、複数の専門大学院(ロースクール、ビジネススクールなど)と、学部課程である「Harvard College」の集合体という構造になっています。つまり、ハーバード大学という大きな傘の中に、「ハーバード・カレッジ(学部)」や「ハーバード・ロースクール(大学院)」などがそれぞれ存在しているイメージ。だから、ハーバードの学部生は「Harvard Collegeの学生」なのです。
【真実③】”University”より格上?全米エリートが選ぶ「リベラルアーツ・カレッジ」の正体
「じゃあ、やっぱりUniversityの方が偉いんでしょ?」と思ったら大間違い。実は、アメリカには「リベラルアーツ・カレッジ」と呼ばれる、超エリート名門校が存在します。
ウィリアムズ大学(Williams College)やアマースト大学(Amherst College)などがその代表格で、U.S. Newsの大学ランキングでは、ハーバードやスタンフォードといった総合大学(National Universities)とは別枠の「National Liberal Arts Colleges」部門で常にトップを争っています。
これらのカレッジは、あえて大学院を持たず、学部教育に全リソースを集中。学生数も2000人程度と少なく、教授陣は研究よりも「教育」に情熱を注ぎます。 その結果、学生はトップクラスの教授から直接、少人数で密な指導を受けることができるのです。その教育の質の高さと卒業生の強力なネットワークから、アイビーリーグ(東海岸の名門8大学)と並び称される、エリート養成機関と見なされています。
【真実④】海を渡れば全くの別物!イギリス英語圏での危険な罠
ここまでの話は、主にアメリカでの使い分け。海を渡ってイギリスに行くと、話はさらにややこしくなります。
イギリスで “College” と言うと、多くの場合、大学入学前の16〜18歳が通う、専門スキルや大学進学資格(Aレベルなど)を取得するための教育機関を指します。日本でいう専門学校や高等専門学校(高専)に近いイメージで、学位を授与する “University” とは明確に区別されています。イギリス人に「カレッジに行ってる」と言うと、大学生ではなく高校生世代だと思われる可能性が高いので注意が必要です。
また、カナダではアメリカとイギリスの中間的な使われ方をし、オーストラリアでは高校(Secondary College)を指す場合もあるなど、国によってニュアンスが異なるため、その国の教育制度を少し知っておくと誤解がありません。
<まとめ>もう迷わない!シーン別・完全使い分けマニュアル
ここまで読んで、頭がパンクしそうなあなたへ。ご安心ください。日常会話レベルなら、ポイントは3つだけです。
- 【日常会話で「大学生だよ」と言う時(米)】
→ “I go to college.” / “I’m a college student.” が最も自然。 - 【特定の大学名を出す時】
→ “I go to Boston University.” や “I graduated from Williams College.” のように、その学校の正式名称を使う。 - 【イギリスで話す時】
→ 学位取得を目指す大学の話なら“University”を使うのが無難。「I go to uni.」は一般的な口語表現です。
“College” と “University” の違いは、単なる英単語の使い分けではありませんでした。
何気なく使っている言葉の裏側にある「なぜ?」を探るだけで、文化や社会の仕組みという、より大きな景色が見えてきます。
これで、あなたも海外ニュースやドラマの解像度が爆上がりすること間違いなし。次に「カレッジ」という言葉を聞いたら、その裏にある奥深い世界に、ぜひ思いを馳せてみてください!