原田英語ジャーナル

日本人が英語を話したくない本当の理由 ~完璧主義と他者評価が生む心理的な壁~

「日本人の前で英語を話すのが怖い…」そんな経験、ありませんか?

最近、ある大学教授の「日本人の前で英語を話したくない」という告白がX(旧Twitter)で大きな共感を呼び、70万回以上も閲覧されました。多くの海外在住者からも「観察されているようで変な感じがする」といった声が相次ぎ、日本の英語学習における根深い問題を浮き彫りにしました。

今回は、なぜ私たちはこれほどまでに他人の目を気にしてしまうのか、その原因を社会心理学と脳科学の観点から解き明かし、「評価される英語」から「楽しむ英語」へとマインドシフトするための具体的な方法を解説していきます!

よく言われてるけど、日本人の この「他人の英語を値踏みする/しようとする」現象、どうにかならないですかねぇ。

私、英語圏で暮らしていて、毎日仕事でもプライベートでも英語を話しているし、何ならネット上にも私が英語を話している映像が残っていたりするけれど、マジで日本人の前では英語しゃべりたくない。

https://x.com/mochiey/status/2012975996287262854?s=20

なぜ日本人は英語に臆病になるのか?3つの心理的な壁

多くの人が英語を話す際に感じるプレッシャー。その正体は、単なる「性格」の問題ではありません。私たちの文化や教育、そして脳の仕組みに深く根差した、3つの大きな壁が存在するのです。

1. 完璧主義の呪縛:「減点方式」の受験英語が植え付けた恐怖

日本の英語教育は、長らく「間違い探し」と「減点方式」が中心でした。文法的な正確さが過度に重視され、「一つのミスも許されない」という完璧主義の思想が、知らず知らずのうちに私たちに刷り込まれています。

日本の強みである「型」と「完璧主義」が、英語になると過度な自己圧力を生む。「ミス=恥」という極端なプレッシャーに変わります。

この「完璧でなければ話してはいけない」という心理が、発話そのものにブレーキをかけてしまう最大の原因です。実業家の堀江貴文氏も「英語なんてちゃんと意味分りゃいいんだよ」と指摘するように、コミュニケーションの本質は完璧さではなく、意思疎通にあるのです。

2. 他者評価という名のスポットライト:社会心理学が解き明かす「見られる自分」

「他人の英語を値踏みする」という日本特有の文化。これは、社会心理学における「自己呈示(Self-presentation)」理論で説明できます。社会学者のアーヴィング・ゴフマンによれば、人は他者からの評価を常に意識し、社会的な役割を「演じている」存在です。

英語を話す場面は、この「演技」の舞台となり、「有能である」という評価を得たいという欲求が強く働きます。その結果、他者の視線を過剰に意識し、「下手だと思われたくない」という羞恥心が生まれるのです。まさに、Xで共感を呼んだ「観察されているようで変な感じ」という感覚の正体です。

3. 脳が記憶する「失敗の痛み」と「快感」のメカニズム

脳科学的に見ても、「失敗の経験」は記憶に強く影響します。人前で英語を間違えて恥ずかしい思いをした経験は、脳の扁桃体が関与するネガティブな情動記憶として残りやすくなります。これが、英語を話すことへの恐怖心を強化してしまうのです。

しかし、脳は「快感」によって学習を強化する性質も持っています。脳科学者の茂木健一郎氏が提唱するように、少し難しい課題をクリアした時に放出されるドーパミンは、強力な報酬となります。この「できた!」という快感が、「もっとやりたい」という意欲を引き出す鍵なのです。

「評価」から「ツール」へ!自信を取り戻す3つのマインドシフト

では、どうすればこの完璧主義の呪縛から逃れ、自信を持って英語を話せるようになるのでしょうか。鍵は、英語を「評価される対象」から「コミュニケーションの道具」へと捉え直すマインドシフトにあります。

完璧主義者の思考(評価マインド) グローバル標準の思考(ツールマインド)
文法や発音を間違えたら恥ずかしい 意味が伝われば、細かいミスは気にしない
完璧な文章を頭で組み立ててから話す まず口に出す。スピードが大事
ネイティブのように話せない自分はダメだ 母国語ですら完璧な人はいない。非ネイティブで当然

1. グローバルスタンダードを知る:外国人はあなたの英語を「評価」しない

まず知るべきは、外国人は日本人の英語に完璧さなど求めていないという事実です。彼らが求めているのは「分かりやすさ・落ち着き・自信」。世界中の人々が、それぞれの「なまり」のある英語を話しており、文法的な間違いなど日常茶飯事です。分からなければ聞き返す、ただそれだけなのです。

2. 目的を「伝えること」に集中する:情熱は文法を超える

プレゼンテーションの神様、デール・カーネギーは「聴衆は内容より話し手を覚える」と言いました。情熱を持って伝えようとする姿勢は、多少の言葉の拙さを補って余りあります。評価されるのは言語力ではなく、伝える力、人間性、そして自信なのです。

3. 小さな「できた!」を積み重ねる:脳を味方につける

恐怖心を克服するには、ネガティブな記憶をポジティブな記憶で上書きしていくしかありません。「挨拶ができた」「道を聞けた」など、どんなに小さな成功体験でも構いません。その達成感が脳内でドーパミンを放出し、「英語を話すのは楽しい」という新たな回路を築き上げてくれます。

まとめ:英語は「武器」であり「鎧」ではない

「日本人の前で英語を話したくない」という感情は、決してあなた一人のものではありません。しかし、その根源にある完璧主義や他者評価の呪縛を理解し、マインドをシフトすることで、英語はあなたを縛る「鎧」ではなく、世界を広げる「武器」になります。

間違うことを恐れず、伝えることを楽しむ。その一歩が、あなたの英語の世界を大きく変えるはずです。

参考文献