次期学習指導要領 まとめブック全校種
全校種共通
審議まとめ(2026年10月5日)第2部から

総則・特別支援・
不登校などまとめブック

教育課程の全体と、多様な子供を包み込む仕組み

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研修・会議・授業・保護者会での印刷・コピー・配布・投影はご自由にどうぞ。ご連絡は不要です。クレジットは残してください。審議まとめ(2026年10月5日)準拠・出典ページつき。告示前の方向性で、今後変わることがあります。2026年11月4日 版

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総則

多様な子供を包み込む柔軟な教育課程へ、総則の組み立てと共通ルールを見直す

授業時数の項目を独立させ、調整授業時数制度の使い方を書く

総則は全体を読みやすくスリムにし、長すぎる文や重なった記述を整理して、小見出しを付ける方針です。そのうえで、現行は「教育課程の編成における共通的事項」の中にある授業時数の扱いを、次期は「授業時数に関する共通的事項」として独立させ、ここに調整授業時数制度などの運用の具体を含め、授業時数全体を書く必要があるとされました。この制度は、多様な子供たちを包み込む柔軟な教育課程を作るための主な手立てと位置付けられています。 P94

「個に応じた学習過程の充実」の項目を新しく立てる

現行は、学習の自己調整(自分で学び方を見直して整えること)に関する記述が「教育課程の実施と学習評価」の中に散らばり、「児童の発達の支援」の個に応じた指導とも分かれていて、まとめて理解しにくいとされました。次期は、子供が自分から考えや行動を起こし、他の人との関わりや自分を振り返る力で修正していく学びの流れを大切にし、それを支える共通の記載を一つの項目にまとめる(項目立てが必要とされた)方向です。 P94

特別な配慮が必要な子への指導を「教育課程の編成」の中へ移す

現行は「特別な配慮を必要とする児童への指導」が教育課程の編成・実施とは別の項目にあり、「一部の子供への特別サポート」と受け止められやすいとされました。次期は、学校共通の教育課程(1階部分)と、配慮が必要な子のための特別の教育課程(2階部分)を合わせて、多様な子供を包み込む教育課程と考えるため、内容を「第2(教育課程の編成)」に移して項目を設ける方向です。 P94

合理的配慮の考え方と、学級全体での学びやすさの工夫を示す

合理的配慮(障害のある子が学べるよう個別に行う調整)は「過重な負担」のない範囲で行うことを前提に、学校と本人・保護者が話し合って合意できるよう、考える観点や「過重な負担」の基本的な考え方を分かりやすく示すとしています。また、あらかじめ全員向けの環境(基礎的環境整備)を整えて、個別の配慮が必ずしも要らない工夫も国が示すとしています。全ての子について、教師の過度な負担に気を付けつつ、学級全体の指導方法や環境の工夫で学びやすさを確保する実践を広げることが適当とされました。 P96

学級経営と生徒指導:学びの面も含めた目指す姿を示す

学級経営は、信頼関係や人間関係づくりの先に目指す姿を分かりやすく示すべきとされました。全ての子が安心して過ごせるという生活の面に加え、教育課程が柔軟になる中で多様な子の主体的な学習を支えるという学びの面も大切にする方向です。学級担任だけでなく、チーム学年経営のように組織で関わることも効果的とされています。生徒指導は、改訂された生徒指導提要の「発達支持的生徒指導」(全ての子の成長を日ごろから支える指導)の考え方を踏まえて示す方向です。 P95

キャリア教育:各教科の役割を明確に、「キャリア・パスポート」は形を自由に

総則のキャリア教育の記載は現行を基本的に引き継ぎますが、各教科等が果たす役割をより分かりやすく示す方向です。特別活動が「要」となり、各教科等は社会や職業とのつながりを意識した学びで実践の場になるという整理です。「キャリア・パスポート」は、特定のやり方に限らず学校の工夫を生かす形にし、例示資料を廃止する見直しの方向が示されました。記録の蓄積や引継ぎはクラウドなどで個人管理を基本とし、学校間の引継ぎは求めないこととする方向です。 P95

意見が分かれる事柄の扱い方を全教科共通のルールに

社会的なできごとを扱うときは、子供の考えが深まるよう様々な見解を示し、意見が分かれる事柄やまだ確定していない事柄は、適切な教材にもとづいて指導するよう求めています。特定のことを強調し過ぎたり、一面的な見方を配慮なく取り上げたりして、子供が多面的に考え、公正に判断するのを妨げないよう留意するとしています。現行は社会科の内容の取扱いや通知(平成27年)に同じ趣旨がありますが、次期はどの教科等でも大切な視点として、総則に共通事項として示すべきとされました。 P101

外国人児童生徒等:日本語の補充だけでなく資質・能力を育てる

日本語指導が必要な子が急増していることから、有識者会議が令和8年6月に報告書をまとめました。課題として、語彙や文法などの「できないこと」に指導が偏りがちなことや、担任や教科担当でもできる日本語指導の方法が十分示されていないことなどが挙げられています。総則には、単に日本語能力を補うのではなく、教育課程全体を通して学習や協働に必要な資質・能力を育てるという基本的な考え方を書く必要があるとされました。AIやオンラインの活用を含む指導のガイドラインは令和8年度中に作る予定です。 P97

不登校・特異な才能のある子のための「特別の教育課程」を書き加える

現行の総則には、不登校の子について一般的な支援と「学びの多様化学校」での配慮しか書かれていません。次期は、校内外の教育支援センターなどを利用する不登校の子のための特別の教育課程を作る場合の基本的な事項を新しく書き加える方向です。その際、教師の指導だけを前提とせず、子供自身が目標を決め、振り返り、フィードバックを受けて「学びのサイクル」を実感できる視点を大切にするとしています。特定分野に特異な才能のある子についても特別の教育課程の基本事項を追記し、まず通常の教育課程での工夫で対応し、そのうえで特別の教育課程を検討するという段階的な支援の考え方を示すとしています。 P97P98

学校段階間の接続と、大学・企業・NPOとの協働

幼児教育と小学校だけでなく、学校段階の間で連携し学びの連続性を保つことは極めて重要とされ、小中一貫教育の知見も踏まえて記載を続ける方向です。スタートカリキュラムを含む「架け橋期のカリキュラム」の書き方は、学校の負担にも配慮しながら見直す方向です。現行の総則は「家庭や地域の人々の協力」を得て体制を整えると書いていますが、次期は探究学習や特別の教育課程(2階部分)の充実のため、大学・研究機関・企業・NPOなどとの協働も位置付けるべきとされました。 P99

道徳教育推進:現行の記載を維持、高校は総合的な探究の時間を追加

現行の総則では、道徳教育の全体計画や、道徳教育推進教師を中心に全教師が協力して道徳教育を進めることなどが書かれています。次期は「考え、議論する道徳」の「実装」の段階へ進むとし、総則の記載は現行を維持するのが基本です。高校では、現行は「人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面」を公民科(公共、倫理)と特別活動としていますが、次期は総合的な探究の時間も加える方向です。これは、そのために別に時間を取る必要があるという意味ではないと注意書きがあります。 P100

部活動と地域クラブ活動の両方を書く/高校の専門教科の扱いも見直し

当面は学校が行う「部活動」と、学校以外の団体などが行う「地域クラブ活動」が並んで存在する前提で、総則に両方を書くとしています(高校などは「部活動」のみ)。部活動は基本的な位置付けを保ちつつ、体罰・暴言・事故の防止や学校の働き方改革に関する記載を充実し、地域クラブ活動は新たに位置付けや学校との連携を書く方向です。また高校では、専門教科の科目で「情報Ⅰ」を安易に代わりにしないよう示し方を見直し、「ホームプロジェクト」に授業時数の10分の2以内を充てられるという規定は削除するとしています。 P100P101

今からできる準備

  • 今すぐ週当たりのコマ数と予備時数を点検します。標準を大きく上回る時数の見直しや、40週を前提にした週28コマへの平準化は、改訂を待たずに国が促している方向です。 P39P56P57
  • 今すぐ次期制度を想定した試案として、校内研修で単元の目標と評価規準の重複を減らす構想を試してみます。審議まとめは、各学校で「内容のまとまりごとの評価規準」を作る作業を不要とし、単元の目標をそのまま評価規準として用いることを前提とする方向を示していますが、告示前の提案です。実際の観点別評価・成績処理は、現行の3観点と現行の評価参考資料に従います。 P69
  • 今すぐ「主体的に学習に取り組む態度」の評価のためだけに集めている材料(ノートの提出回数の記録など)を見直し、思考・判断・表現の過程で子供の姿を見取る練習を始めます。 P63P64P66
  • 今すぐ評定への総括を学年末だけに行うことも可能と明確にする方向をふまえ、学期中は形成的評価(途中での見取りとフィードバック)を中心にできないか、学年・教科で話し合います。 P70
  • 告示まで単元構想を「目標→評価課題→学習過程→途中の見取り」の順に考える校内研修を行い、ペーパーテスト以外の評価課題(論述・レポート・発表・作品制作など)を各教科で1つずつ用意します。 P63P70P71
  • 告示までカリキュラム・マネジメントを3ステップ(ねらいの明確化→編成・実施・調整と環境整備→評価・改善)で棚卸しし、単元配列表づくりなどが目的化していないか、形骸化した取組がないかを洗い出します。 P83P84P85
  • 告示まで意見が分かれる事柄やまだ確定していない事柄を扱うときは、様々な見解を示し、適切な教材にもとづいて指導するという視点を、全教科共通の約束として校内で確認します。 P101
  • 先行実施まで調整授業時数制度を令和10年度からの先行実施期間に使う場合に備え、どの教科等から何コマ生み出し、上乗せ・新教科・裁量的な時間(学習枠、研究・研修等枠)に何を充てるかを試算します。標準授業時数が35コマ以下の教科等は減らせない方向です。 P32P33P34P37P38
  • 先行実施まで授業の1単位時間は学校で適切に定められることをふまえ、単位時間の見直し(例:45分を40分に)と、それに合わせた日課表や授業の進め方の工夫を、授業の質を下げないことを前提に検討します。 P37P39
  • 先行実施まで調整授業時数制度を使う場合に求められる方向の、学校ウェブサイトでの公表、教育課程編成届への記載、学校運営協議会での承認(設置校)の準備を進めます。 P40

先生向けワーク・授業アイデア

全学年(全教科の先生向け)校内研修60分

評価課題から逆算する単元構想ワーク

目標→評価課題→学習過程→途中の見取りの順で、1単元を短時間で構想します

手順・ワークシート

ねらい

次に指導する単元について、単元の目標(=評価規準)、評価課題、学習過程、途中で見取る場面を一体的に構想し、同僚と検討する。

流れ

  1. 5分研修担当が審議まとめの方向性(単元の目標をそのまま評価規準として用いる前提=告示前の提案で、実際の成績処理は現行の3観点で行うこと、「計画の作成」から「構想」へ、形成的評価の重視)を短く説明します。
  2. 10分個人で単元の目標を書き、それがそのまま評価規準として使えるかを試案として確かめます(書き方は告示後に示される正式な記載方法に合わせて見直します)。
  3. 15分評価課題を考えます。ペーパーテストだけでなく、論述・レポート・発表・作品制作など、単元の終わりに資質・能力の発揮を見取れる課題を1つ決めます。
  4. 10分評価課題に向けた学習過程を3〜4段階で書き、途中で「目指す姿と今の姿の差」を見取る場面と、フィードバックの方法を1つ決めます。
  5. 15分教科や学年の異なる3人組でシートを紹介し合い、「この評価課題で単元の目標が見取れるか」「途中の見取りで何が分かるか」を質問し合います。
  6. 5分修正点を書き込み、実際に授業で試す時期を決めます。

評価

研修の成果は、シートの完成度ではなく、実際に授業で試した後の振り返り(評価課題で何が見取れたか、途中のフィードバックで子供がどう変わったか)を次の研修で共有することで確かめます。

全学年(全教科の先生向け)校内研修60分

「学びに向かう力」を見取る目合わせ研修

授業の記録から、初発の思考・学びの調整・対話と協働の表れを見取る練習をします

手順・ワークシート

ねらい

授業記録に表れた具体的な子供の姿から学びに向かう力の3要素を見取り、教師間で見取りの観点をすり合わせる。

流れ

  1. 10分研修担当が方向性を説明します(ABC評価のための評価材料集めを見直す、思・判・表の過程で見取る、単元ごとの○付けは求めない、継続的な発揮を見る)。中学校数学の見取る姿の例も紹介します。
  2. 15分個人で授業記録を見て、3要素に当たると思う子供の姿を見取りメモに書き出します。
  3. 15分4人組で見取りを比べます。同じ姿を別の要素と見た場合や、一人だけが気付いた姿について話し合い、「どこまでを表れと見るか」の目をすり合わせます。
  4. 10分「その姿がもっと表れるようにするには、どんな課題や問いかけがよいか」を話し合います(見取る姿が表れやすい学習過程のデザイン)。
  5. 10分各自が次の1か月に意識して見取る要素を1つ決め、全体で共有します。

評価

研修後1〜2か月の間に、各自が見取った子供の姿を短く記録し、次回の研修で持ち寄ります。記録の量を競うのではなく、見取りをもとにどんな声かけや課題の工夫をしたかを共有します。

小・中学校の全教職員向け(高校は単位制の柔軟化に置き換え可)校内研修60分

カリマネ3ステップで「時間」を設計する

自校の課題から出発し、調整授業時数を使う案と、やめる取組を考えます

手順・ワークシート

ねらい

自校の子供の実態から「ねらい」を共有し、その実現のために時数・日課をどう使うか、何をやめるかの案を教職員で考える。

流れ

  1. 10分ステップⅠ:資料から子供の実態で気になることを各自が付箋に書き、グループで「1年後にこうなっていてほしい」というねらいを1つにしぼります。
  2. 10分研修担当が調整授業時数制度の方向性を説明します(各教科等の内容は全て扱う前提、標準が35コマ以下の教科等は減らせない、生み出した時間の使い道、研究・研修等枠は週1コマ程度・裁量的な時間全体は週2コマ程度が上限の想定、具体の数字はこれから決まること)。
  3. 15分ステップⅡ:ねらいの実現のための時間の使い方の案を出します(例:学習枠で学び直しやマイ探究の深掘り、研究・研修等枠で単元構想の研究、特定の教科等への上乗せ)。どの教科等から時間を生み出せそうか、そのために授業の進め方をどう変えるかも考えます。
  4. 10分「やめる・減らす取組」を出し合います。目的が見えなくなっている作成物や会議、標準を大きく上回る予備時数などを候補にします。
  5. 10分ステップⅢ:ねらいの達成状況を何で確かめるかを決めます(学習評価の状況、子供へのアンケートなど。カリマネのためだけの手続は作りません)。
  6. 5分各グループの案を共有し、管理職が次の検討の進め方を伝えます。

評価

この研修で出た案は、すぐに実施を決めるものではなく、先行実施期間に向けた検討材料として記録します。次年度の教育課程編成の会議で、ねらいと時間の使い方が結び付いているかを確かめます。

幼児教育

遊びの深まりで資質・能力を育て、0歳から小学校へ学びをつなぐ

「資質・能力」「ねらい及び内容」「育ってほしい姿」の関係をはっきりさせる

幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領(3要領・指針)では、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が小学校との連携に役立ってきました。一方で、育みたい資質・能力や5つの領域のねらい及び内容との関係が整理されておらず、「育ってほしい姿」の活用に重点が置かれ過ぎる実践も多いと指摘されました。次期は3つの関係を明確にして整合性をとり、「育ってほしい姿」は5歳児後半に遊びが深まり資質・能力が総合的に発揮されている姿と位置付ける方向です。 P103P104P106

目指すのは「遊びの深まり」

乳幼児にとっては自発的な遊びが学習であり、遊びの中で心と体全体を使い、ものや人と直接関わることで力が育ちます。この遊びの流れが資質・能力の育成に深く結び付く「遊びの深まり」を実現することが、幼児教育の質の向上に欠かせないとされました。先生(幼稚園教諭・保育士・保育教諭)は、子供の理解とねらいにもとづいて環境を作り直したり援助したりし、遊びが広がりつながっていくよう園全体で取り組みます。 P106

ねらい・内容を表形式で示し、資質・能力の示し方を整える

小・中・高校との連続性を示すため、「ねらい」と「内容」は学習指導要領と同じように表形式で示すのが適当とされました。資質・能力は引き続き3つの柱で示し、幼児教育では「知識及び技能の基礎」「思考力、判断力、表現力等の基礎」とします。表では3つの柱を分けずに一体的に示す方向です。現行で「幼児期の教育における見方・考え方」とされている記述は、「見方・考え方」としての位置付けを変え、乳児も含めて幼児教育が大切にする遊びの過程として引き続き重視します。 P108

0歳からの学びのつながりを整理する

0歳から18歳までの育ちと学びを見通し、「0歳児」「1〜2歳児」「3歳以上児」のねらい及び内容のつながりを整理し、必要な見直しを行う方向です。ただし、乳幼児期は発達の個人差が大きいので、指導計画を作るときはこの区分を参考にしつつ、子供の実態に合わせて柔軟に対応することが大切とされています。保育所では、ねらい及び内容が重なっている「養護」の記載も分かりやすく整理する方向です(こども家庭審議会で審議)。 P108P109P111

遊びの中で多様な動きを経験し、体の感覚を育てる

戸外で遊ぶ機会が減り、室内遊びに偏る子も少なくないこと、一方的な指示で体を動かす活動になっている場合があることが課題とされました。次期は、決まったプログラムや一方向の指導ではなく、自発的な遊びの中で多様な動きを経験し、身体感覚を養う指導を0歳児から充実する方向です。小学校体育科でも4年生までを「遊び」の要素を取り入れた学習として整理する方向で検討されており、つながりが期待されています。 P104P107P109

他者と関わり協同する力を育てる

人との交流が似た者どうしの集団に偏る傾向への心配が指摘されています。次期は、仲の良い友達だけでなく自分とは違う相手とも関わり、一緒に目的を作り、それに向かって協同する力を育てる指導を充実する方向です。思いを伝え合い、ぶつかり合いやつまずきも経験しながら、幼児なりのルールを作ったり全員が納得する解決策を見つけたりする中で、社会に参加する意識の芽生えを育てます。これが小学校以降の「協働的な学び」の土台になると期待されています。 P104P107P109

言葉を用いて考える力の基礎を育てる

0歳児から、声や表情、喃語(赤ちゃんの声)などをゆったり受け止め、やり取りを楽しみ、豊かな言葉掛けで言葉の理解を促します。そのうえで、問い掛ける・言葉を添える・代弁するなどの援助を受けながら、さらに考えようとして言葉を使う指導を充実する方向です。考えたり言葉で表したりする技能を伸ばすことより、考えがまとまる喜びや満足感を味わうことに重点を置き、考えることを楽しむ姿を目指します。 P107P109

全ての園で「乳幼児理解に基づく評価」を行い、記録と振り返りを充実

現行は幼稚園教育要領と認定こども園の要領で乳幼児理解に基づく評価を行うこととされていますが、次期は施設の種類に関わらず全ての幼稚園・保育所・認定こども園で行うと規定し、国が評価の参考資料を作るべきとされました。先生は子供の姿を日ごろから記録し、同僚と共有して振り返ります。写真や動画、ICTでの共有も効果的です。記録や振り返りでは、遊びの中の「学び」を見取る視点をもつことを重視します。 P104P110

ICTは直接体験を豊かにする道具として使う

ICTの活用が子供の発達や活動のねらいに合っていない課題があり、家庭での低年齢児のインターネット利用の増加も心配されています。次期は、乳幼児期は直接的・具体的な体験が大切であることを踏まえ、ICTはその体験を充実させる道具として使うとしています。スクリーン利用が心身に長期的な影響を与える可能性も指摘されており、科学的・医学的な知見をふまえた留意点を示す方向です。障害など様々な特性のある子には、適切な管理のもとで効果的に使うことが求められます。 P104P110

幼小接続:「架け橋期のカリキュラム」と「対話のための資料」

5歳児から小学1年生までの2年間(架け橋期)の取組は成果を上げていますが、全国的にはまだ十分でないとされました。次期は「架け橋期のカリキュラム」を、園の5歳児のカリキュラムと小学校1年生のカリキュラム(スタートカリキュラム)の総称と位置付けるなど、概念を整理する方向です。合同の会議・研修や保育・授業の相互参観で互いの教育を理解し合い、園は遊びの中の「学び」を小学校と共有する「対話のための資料」を作って活用することが重要とされています。過度な負担にならないよう、国は手引きを改定し多様なモデルを示すとしています。 P105P112

障害のある子・外国人の子への指導や支援

障害のある乳幼児については、基礎的環境整備(全員向けの環境づくり)の充実を促し、合理的配慮の提供が確実に行われるよう規定すべきとされました。個別の支援計画に合理的配慮の内容を書き、園内での共通理解と小学校への確実な引継ぎを図ります。外国人乳幼児等には、母語での声掛けや母文化の遊びを取り入れるなど安心できる環境のもと、「日本語の力を育む視点」をもった関わりを重視し、小学校への引継ぎも図ります。 P105P112

家庭・地域との連携と、園を支える地域の体制づくり

保護者と園は共に子供の育ちを支える関係とし、子育ての相談や情報提供を充実します。例えば子育てでのICT使用の悩みにも、心身への影響などをふまえて応じることが有効とされています。地域ではこども家庭センターなどとの連携を強めます。設置者や施設の種類に関わらず各園を支えるため、指導主事や保育指導職の育成・配置を進め、幼児教育センターは全都道府県での設置を目指すべきとされました。 P113

特別支援教育

まず通常の学級で支え、合理的配慮を総則に位置付ける方向。通級で教科の指導も可能にする案

「重層的な指導・支援」――まず通常の学級から

どの通常の学級にも配慮が必要な子がいる前提で、まず全員にとって学びやすい授業・学級づくりと教室の環境づくりを進める方向です。そのうえで個別の支援、さらに必要なら通級による指導、それでも難しい場合は特別支援学級、という段階を追って学びの場を考える、という整理です。教科の指導では、目に見える「困難さの状態」だけでなく、その裏にある「困難さが生じる要因」に目を向けた手立てを示すとしています。校内委員会で組織的に対応し、特別支援学校の「センター的機能」(地域の学校への助言・支援の役割)の具体的な使い方も小・中・高の解説で示す方向です。 P116P96P124

合理的配慮を総則に位置付ける

現行の学習指導要領は、障害のある子への指導の工夫を「教師の工夫」として書いているだけで、子供側が合理的配慮を求める場合との関係がはっきりしていませんでした。次期は各学校段階の総則に、本人・保護者の意思の表明を受けて、話し合い(建設的対話)で合意をつくり、「過重な負担」のない範囲で合理的配慮を行うことを書き込む方向です。解説では、学習内容の変更・調整や情報保障・教材の配慮といった観点や、「過重な負担」の考え方、合意までの進め方を分かりやすく示すとしています。配慮を受ける子が「特別扱い」と見られて孤立しないよう、学校全体で取り組み、安心して過ごせる学級づくりも必要としています。 P117P96

1人1台端末などを「基礎的環境整備」として明記する方向

1人1台端末などのデジタル学習基盤は、合理的配慮の土台となる「基礎的環境整備」(全員のために前もって整える環境)に位置付くとして、その意義を総則等に明記する方向です。障害の状態に応じて、端末のアクセシビリティ機能(読み上げなど使いやすくする機能)や入出力支援装置、個別の学習ツールを授業に柔軟に取り入れることも示すとしています。全員向けの支援を前もって用意しておくことで、一人一人への個別の合理的配慮を必ずしも必要としない環境をつくる工夫も、国が示す方向です。 P117P96

個別の計画は「精選」し、合理的配慮は確実に引き継ぐ

合理的配慮の内容は「個別の教育支援計画」に必ず書き、学校が変わるときに確実に引き継ぐことの大切さを明示すべきとされました。一方で「個別の指導計画」のうち教科等の指導に関わる部分は、ほかの計画との重複をなくし、指導上の配慮や手立てなど本当に必要なことにしぼって、作る負担を軽くするとしています。幼稚園でも、個別の教育支援計画に合理的配慮を書くことで、園内の共通理解と小学校への確実な引継ぎを図ります。 P117P116P120

通級による指導の役割をはっきりさせる

通級による指導(通常の学級に在籍しながら一部の時間だけ別の場で受ける指導)は、通常の学級での配慮や手立てを実際に役立つものにするために行うもの、と明確にする方向です。通常の学級での対応を十分にしないまま通級に任せてしまう学校がある一方、自治体によっては利用のハードルが高く、困難を抱えたまま取り残される子もいる、という課題が背景です。通級では自立活動(障害による学習上・生活上の困難の改善・克服に必要な力を養う指導)を取り入れ、通常の学級の教科の指導と密接に関連させることを示す方向です。利用するかどうかは、校内委員会の組織的な見立てのもとで総合的に判断することを指針等で示すとしています。 P118P96

通級を受ける子の「特例」――教科の指導や内容の差し替えも可能にする案

現行では、通級を受ける子が教科の内容についていけなくても、教育課程上の対応は難しいとされてきました。次期は特例として、自立活動を行ったうえで、学習が遅れがちな場合などに、期間を区切るなど先生の負担にも気をつけながら、通級で教科の指導も行えるようにする考えです。また、通常の学級の授業も含めて、本人・保護者とよく話し合ったうえで、教科等の目標・内容の一部を障害の状態に合わせたものに替えることも可能にする方向で、これらは設置者の定めにより行います。通級の授業時数は小・中学校の下限を定めず、1年の中でもニーズの変化に合わせて柔軟に運用できるよう促すことが考えられるとしています。 P118P96

交流及び共同学習の趣旨を改めて示す

特別支援学級の子が、必要な配慮を受けないまま大半の時間を通常の学級で過ごしている例があり、その場合は学びの場の変更を検討すべきだとしています。一方で、通常の学級の子と特別支援学級の子が一緒に協働的に学ぶことは、お互いの理解を深めるものとして期待されています。交流及び共同学習は、学校行事や学級活動など特別活動の中でも一層重視するとしています。特別支援学校と小・中・高等学校の学校間交流はまだ一部にとどまるため、地域での連携体制づくりや、円滑に進めるためのポイントを国が整理して示す方向です。 P120P119P124

特別支援学級の教育課程を分かりやすく示す

特別支援学級は在籍者が急増し、特別の教育課程が正しく理解されないまま組まれている例や、専門性が十分でない先生が担当する例があるとされています。次期は、小・中学校の見直し(調整授業時数制度の適用など)を取り入れつつ、一人一人の進度に応じた学び、デジタル学習基盤の活用、交流及び共同学習、自立活動の時間を適切に設けることなど、基本的な考え方を整理して示す方向です。特別支援学級と通級では、これまで障害種ごとの基本的な対応や配慮事項が示されていなかったため、障害種ごとの「配慮事項」を新たに示す方向です。就学先の決定についても、国が指針等で判断の考え方を明確にする方向です。 P119P120P96

高等学校と幼稚園での方向性

高等学校でも障害のある生徒が多く在籍しており、まず通常の学級での授業・学級づくり、そのうえで個別の対応や通級、という同じ考え方で進める方向です。障害の程度が比較的重い生徒を受け入れ、自立と社会参加に向けた教育に積極的な高校では、障害の状態等に応じた教育課程を組めるようにする「新たな特例制度」をつくり、先導的に試す方向です。高校入試での受検上の配慮を進めるため、国の参考資料にデジタル学習基盤の活用などの例を加える見直しも検討します。幼稚園では、合理的配慮が確実に行われるよう必要な規定を置き、個別の計画の作成・活用を進めることが必要とされました。 P120P117

特別支援学校(知的障害)の教科の見直し

知的障害のある子の教科は、小・中・高との連続性を大切にしながら、引き続き段階別に目標・内容を示す方向です。情報活用能力を強めるため、中学部の「職業・家庭」を「職業」と「家庭」の二つの教科に分け、「職業」に中・高等部を通じて「情報機器・情報技術の活用(仮称)」を設けることが必要とされました。小学部では「生活」を中心に情報機器の活用を取り入れます。学習評価は小・中・高等学校の各教科等の考え方を踏まえたものにし、指導と評価の一体化を進める方向です。 P121P123

自立活動を子供主体に、内容は表形式に

自立活動は特別支援学校の教育の「核」であり、各教科等で育てる力を支えるものとして、教育活動全体で自立活動の視点をもち、教科等と関連付けることを明確にする方向です。障害を本人だけの問題とせず、社会の側の壁にも目を向ける「社会モデル」の考え方を踏まえ、実態把握では環境の要因も見ることや、子供自身が感じている困難さを考えることを示す方向です。子供が自分の意思を表明できるようになる指導内容を新たに盛り込み、内容は表の形で示す方向です。項目の「養護」という言葉を、より主体的な「対応」に変えることも考えられています。 P122P115

特別支援学校の総則と高等部の充実

小・中・高の見直し(調整授業時数制度や高等部の単位制度の柔軟化など)は特別支援学校にも同じように取り入れる方向です。総則では、自立と社会参加を目指す理念を明らかにし、知的障害教育の「各教科等を合わせた指導」は指導の形の一つとして「第2章各教科」以降に書くこと、不登校児童生徒への支援を書くことなどに留意します。高等部では、高校のスクール・ポリシーの一部を取り入れることや、「普通教育を主とする学科」として、「その他普通教育を施す学科として適当な規模及び内容があると認められる学科」を置けるようにすることが考えられています。専門教科は、全国の基準が必要な保健理療・理療・理学療法・理容・美容に示し、それ以外は設置者・学校の裁量に委ねる方向です。 P123P124

定時制・通信制(高等学校)

通信制高校の学びの質を守るため、単位の中身と指導の基準をはっきりさせる

通信制は「多様な生徒の学びの場」に

通信制課程は、かつては働く若者に学ぶ機会を届ける役割でしたが、今は不登校を経験した生徒や特別な支援が必要な生徒など、さまざまな背景をもつ生徒が通う場に変わっています。高校生のおよそ1割が通信制に在籍しているとされています。一人一人に合わせる「多様性への対応」と、社会で自立するために必要な「共通性の確保」を両立させることが求められています。今も不適切な運営や教育をしている通信制高校が一部にあることもふまえ、教育の質を保ち高めるための手立てをとるとしています。 P125

法改正をふまえて総則と解説を見直す

「高等学校教育の振興に関する懇談会」で出された方策をもとに、学習指導要領の総則と解説の書き方を見直す方向です。これらの方策は、今回改正された「高等学校の定時制教育及び通信教育の振興等に関する法律」の趣旨にも合うものだとされています。なお、この資料の本文で示されている具体的な方策は、主に通信制課程に関するものです。 P125

1単位分の学習の「量と質」をはっきりさせる

通信制の1新単位分の学習(自分で学ぶ自学自習、レポートの添削指導、スクーリングなどの面接指導、試験)が、全日制・定時制の17新単位時間の授業に見合う質と量をもつべきことを、学習指導要領で明確にする方向です。それをふまえた単位認定の基準などは、各校の「通信教育実施計画」で公表を徹底するとしています。書き方や学習量の目安の考え方は、文部科学省が示すとしています。 P125

メディアを使った面接指導の免除を厳しくする方向

ラジオ・テレビなどのメディアを使うことで面接指導の一部を免除する「メディア減免」について、要件を厳しくする方向です。たとえば、メディア減免を行う学校は、面接指導・添削指導の計画、使う教材や見るメディア、視聴課題、減らす割合、評価の基準などを「通信教育実施計画」に書いて公表することが考えられています。 P125

「総合的な探究の時間」と「特別活動」の充実

「総合的な探究の時間」は、単位を認めるのに必要な添削指導や面接指導の回数などを増やして充実させる方向です。「特別活動」は、一律のメディア減免の対象から外す方向です。そのかわり、リアルタイムでやりとりするオンライン(同時双方向)の指導で代えることを認めるとしています。 P125

オンラインやデジタルの強みを生かす

添削指導では、オンラインの仕組みを使ってタイミングよく返事(フィードバック)をしたり、その場でフォローしたりして学習の効果を高めるなど、いろいろな指導の形が考えられます。こうした工夫を学習指導要領の解説に書く方向です。面接指導は対面を基本としながら、同時双方向のオンライン指導ができるかどうかも検討を進めます。 P125

新しい単位(新単位)への対応

高校全体で、50分×17コマを1新単位とする「単位の細分化」が示されたことにともなう対応です。単位を細かくした結果、添削指導や面接指導の回数に0.5回のような端数が出る場合は、質を守るため原則として回数を切り上げる方向です。必ず学ぶ科目(必履修科目)を単位数を減らして履修する場合でも、本来の単位に必要な添削・面接の回数などは減らさずに保つ方向です。 P125P46

不登校児童生徒に係る特別の教育課程

支援センター等で学ぶ不登校の小中学生に、時数や評価を柔軟にできる教育課程を新設する方向

どんな子が対象? 支援センター等で学ぶ不登校の子のための「2階部分」

校内・校外の教育支援センター等に通う不登校の子どもについて、一人一人に合わせた特別の教育課程を新しく作れるようにする方向です(通常の教育課程を「1階」、特別の教育課程を「2階」と呼んでいます)。ただし、センターを使う子ども全員が対象ではなく、学校や教育委員会が状態を見て「この子には合う」と判断した場合に行う案です。主に想定しているのは、休み始めでも寄り添った支援があれば学べる子や、心と体が回復して学びに向かいつつある子で、学びより休むことを優先すべき時期は除きます。欠席が続いたり、早退・保健室登校が見られるなど、不登校になりそうな子も対象になり得ます。 P367P368P370

学級担任・教科担任は計画づくりにどう関わる?

特別の教育課程を最終的に作るのは、その子の在籍する学校です。計画づくりは学級担任が中心になることが考えられますが、支援センターに配置された教師や、日ごろ指導している指導員が担任と密に連携して中心になってもよく、最後は担任が確認して学校の計画とします。時数や教える内容を決めるときは、学級担任に加えて教科担当や指導員と十分に話し合うことが必要とされ、例えば「担任が教科担当と相談して週単位の時数と内容の方針を考え、指導員が実現できるか確かめる」といった流れが示されています。でき上がった計画は校長の承認を得て教育委員会等に届け出ます。年度の途中から始めたり、途中でやめたりすることもできる仕組みとする案です。 P375P376

評価が変わる:「1」や「-」ではなく、頑張りや成長を受け止める

現行は、下の学年の内容を学び直して頑張っても在籍学年の基準で評価するため、評定が「1」や「-」になり、子どもや保護者の意欲や自己肯定感が下がるという指摘がありました。審議まとめでは、特別の教育課程に合わせた評価ができるようにすべきとされました。目標の立て方は「在籍学年と同じ目標」「在籍学年の一部の目標」「下の学年の目標」「学習指導要領をふまえた独自の目標」などに分けて考え、評価方法は目標の立て方に応じて使い分けます。在籍学年と同じ目標なら、通常どおりの観点別評価・評定(評価方法A)が基本です。一部や下学年の目標なら、その評価規準を使った観点別評価・評定(評価方法B)も可能とされました。独自の目標の場合は、数字を付けず文章で書く個人内評価(評価方法C)が基本で、ほかの場合も観点別評価・評定が適さないときは評価方法Cを使えるようにする案です。各教科に当たらない活動は個人内評価で評価すると整理されました。最終的な評価は学級担任や教科担任が行い、そのために指導員から情報(振り返りの記録や作品など)を受け取ります。 P367P378P379P380

指導要録の書き方:「※」の記載や計画の添付

下の学年の目標などで評価した場合は、どの目標で評価したかが分かるように書くべきとされました(例:「▲▲(教科)については、●学年(下学年)の目標に基づき評価」)。数字の評定を付けない場合(評価方法C)は「1」や「-」を書かず、評定欄に「※」だけを書き、文章の評価は総合所見欄や添付する計画で確認できるようにします。在籍学年と違う目標で評定を付けた場合は、評定の後ろに※を付けて書くことなどが考えられています。通級指導や日本語指導と同じように、個別の指導計画(分量が多いときはその要約)を添付して要録への記入に替えることもできるようにすべきとされました。年度の途中で始めた・やめた場合は、通常の教育課程と特別の教育課程での学びをまとめて、その学年の記録として書くのが基本です。 P380

調査書・高校入試での扱い

これまで「1」や「-」の評定が調査書に載り、合否に影響することが、子どもの意欲の低下につながっていると指摘されてきました。そこで、この特例での評定や文章による評価が、高校入試の中で適切に考慮されることを目指します。例えば、調査書にこの特例での評価をできるだけ書くこと、入試で一定の加点をすることや、学力検査や面接を重く見ること、生徒が評価方法を選べるようにすることなどの検討を促すとしています。具体的な方法は、都道府県教育委員会の意見も聞きながら国がさらに検討します。 P381

何を学ぶ? 教科の学び直しと、教科以外の効果的な活動

対象となる活動は大きく2つです。(A)各教科等の目標・内容に基づきつつ柔軟に行う活動で、下の学年・下の学校種の学び直しや、オンライン配信などで元の学級の授業に参加することも含みます。(B)教科には当たらないが不登校の子に特に効果的な活動で、興味に応じた探究・体験活動、人とふれあう体験活動、SST(人間関係の力を身につける練習)などです。(B)は、調整授業時数制度の「裁量的な時間」として行うことが考えられています。すべての教科をやる必要はなく、一部の教科だけでも特別の教育課程にできます。なお、いわゆる「居場所」としての活動は、引き続き教育課程の外の取組とされます。 P371

授業時数は標準より少なく設定できる

不登校の背景はさまざまなので、国が一律に時数を決めるのではなく、校長が子どもの実態に合わせて適切な範囲で時数を決められるようにする方向です。計画の段階から標準授業時数を下回る時数を設定でき、その中での頑張りを積極的に評価できるようにする方向です。時数は、不登校の期間や今の出欠の状況、学ぶ意欲や必要な支援をふまえ、本人・保護者の意向も聞いて決めます。状態は変わりやすいので、途中で時数や内容を調整できることが前提です。どこまで柔軟にできるかは、学びの多様化学校などの取組もふまえ「運用の手引き」も含めて引き続き検討するとされています。 P371P374

子ども自身も関わる「個別の指導計画」

この特例では、先生が計画を作るだけでなく、子ども自身が目標の設定などに関わり、学びを積み重ねて意欲や自己肯定感を取り戻すことを重視します。計画は、子どもにとっては「自分の学習」を、先生にとっては「伴走の過程」を見える化するものと位置づけられ、名前も今後整理されます。計画に入れる項目は、「学びにおいて意識したい視点」、教育内容(順序を含む)、目標やねらい、指導方法(期間・教材を含む)、授業時数、振り返り、フィードバックです。教科の内容は1コマごとではなく「単元などの内容のまとまり」ごとに書くことで、先生の負担を抑え、引き継ぎもしやすくします。 P372P373P374

小さなステップで「学びのサイクル」を回す(振り返り・フィードバック・見直し)

長い見通しを持ちにくい子どもが多いため、短い区切りで振り返り、小さな達成感を積み重ねることが大切とされます。振り返りはできるだけ子ども自身の言葉で行い、フィードバックは日ごろ指導している教師や指導員が中心となって、頑張りを受け止め励ます言葉として計画に書きます(「評価」そのものに抵抗感をもつ子もいるため、自己肯定感を高める視点を特に大事にします)。指導員が書いた場合も、最後は担任等の教師が確認します。目標を達成したときは時数や教科を増やせないか、負担が大きすぎるときは時数を減らしたりペースを緩めたりできないかを考え、計画を柔軟に見直します。 P375P377

どこで・誰が教える? 支援センターと免許のない指導員

主な実施場所は、校内教育支援センターと、教育委員会等が管理・運営する校外教育支援センターです。全てのセンターで行うわけではなく、教育委員会が拠点となる学校を決めることなども考えられます。本来は教科の免許状をもつ教師が教えるのが望ましいものの、それを必須にすると制度がほとんど使えなくなるため、教師が中心的な役割を担うことを条件に、一定の要件を満たす指導員も、担任等の管理の下で密に連携して指導できるようにする案です。要件の例は、計画や評価を最終的に学校の責任で行うこと、教師が定期的に子どもと対面で面談すること、指導員が研修を受けることなどです。現行も、学校と十分に連携し、学習計画・内容が在籍校の教育課程に照らして適切と判断できるなど、一定の要件を満たせば、免許のない指導員による指導も出席扱いや成績評価の対象にできますが、次期の特例は計画づくりや評価を通じて教育の質をより強く確保しようとするものです。 P368P382P383

支援の記録を一つにまとめる「2階シート(仮称)」

計画づくりの前に、学級担任をはじめとする関係者が「児童生徒理解・支援シート」なども参考に、子どもの思いや様子を丁寧につかみます。現在は、不登校・障害・日本語指導など支援ごとに別々の書類が作られ、内容が重なるなどの指摘があります。そこで国が、複数の特例の計画などを一つの電子ファイルでまとめて使える参考様式「2階シート(仮称)」を示し、全員共通のシートと特例ごとの個別シートで構成する案です。計画は担任を含む関係者でクラウド等により共有することも含めて、具体的な運用は「運用の手引き」で示す方向です。 P376P377

高校は当面対象外/令和10年度から先行実施

対象は当面、義務教育段階(小学校、中学校〈中等教育学校前期課程を含む〉、義務教育学校、特別支援学校の小学部・中学部)です。高校は、学校設定科目による学び直しや、単位制の柔軟化など通常の教育課程の仕組みで対応できると考えられるため、運用の成果を見て将来必要なら検討します。始める時期は学習指導要領の全面実施を待たず、調整授業時数制度と一緒に令和10年度からの先行実施期間から取り組めるようにする方向で、それに間に合うよう国が「運用の手引き」を作ります。総則にも、現行の一般的な記述や学びの多様化学校の記述に加えて、この特別の教育課程を編成するときの基本的な配慮事項を新たに書き加える方向です。 P97P369P384

特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程

才能ある小中学生が、一部の教科に代えて高度な学びに取り組める教育課程を新設する方向

まずは通常の授業で支援、それでも足りない子が対象(2階建て)

特定分野に特異な才能のある子ども(本文では「特才児童生徒」)の全員を対象にするのではありません。まず、調整授業時数制度で生まれる「裁量的な時間」の活用なども含めて、みんなと一緒に学ぶ通常の教育課程(1階)での支援を考え、それだけでは十分に支援できない子を特別の教育課程(2階)の対象にする案です。目的は、学習や生活での困りごとを減らすことと、「好き」を育み「得意」を伸ばす才能の伸長の両方をバランスよく支えることです。特才の子は、学習のレベルが合わず教室で苦痛を感じたり、人間関係がうまくいかず不登校になったりすることもある、困難を抱えやすい存在でもあるとされています。 P386P387P389

一部の教科(相当教科等)を受けずに、高度な「対象活動」に取り組める

才能に応じた高度な内容の学習を「対象活動」と呼び、その代わりに受けなくてよくなる教科等を「相当教科等」と呼びます。対象活動を行う場合、各教科等や総合的な学習の時間の一部または全部の内容と授業時数を行わないことができるようにする案です(教科が特定できる場合、教科をまたぐため総合で扱う場合、両方を組み合わせる場合のパターンがあります)。まずは算数・数学や理科など、教科に関わる認知的な面に着目して始める方向です。実施できるのは、①受けない教科で身につける力をおおむね身につけられる(すでに身についている場合を含む)と判断でき、②学習上・生活上の困難を減らす点から対象活動の方が効果的だと総合的に判断できる場合で、本人・保護者の意向を丁寧に確かめます。入試対策を助長しない運用が前提です。 P390P391

飛び級ではない:在籍学年のまま、ほかの時間は学級で一緒に学ぶ

この制度は、上の学年や学校に移る「完全早修」(飛び級・飛び入学など)ではありません。本来の学年に在籍したまま、通常の教育課程での「拡充」(より深く幅広い学び)を重視しつつ、上の学校種の内容を部分的に学ぶ「部分早修」も取り入れるものです。対象活動以外の時間は、ほかの子どもたちと一緒に通常の教育課程で学ぶことが前提で、在籍校を離れる時間が多くなりすぎないようにします。学級では、特才の子を含めた一人一人の違いを認め合う雰囲気づくりや、認知面以外の個性・特性への配慮も必要とされています。 P387P391P393

相当教科等の評価:教科担任が、いつもの評価規準で観点別評価・評定をする

対象活動だけを評価するのではなく、受けなかった教科(相当教科等)全体について観点別評価・評定を行うことを前提とする案です。評価しないと高校入試などで不利になるおそれがあるためです。評価規準は、在籍する学級でのその教科の既存の評価規準をそのまま使う案です。評価材料には、対象活動でのレポートや作品、実施機関からの情報、事前のアセスメントの材料などを使えます(例:教科で四則演算を学ぶ代わりに対象活動で微分などを学んだ場合、四則演算に関わる力を見取ることも可能)。判断が難しいときは、学級での単元末・学期末の評価課題を課すことも考えられます。対象活動そのものに別の評定は不要ですが、担任から計画の「学習状況の記録」欄などにフィードバックのコメントを書くことが勧められています。 P397P398

指導要録・調査書:特例を使ったことは本体に書かない

通級指導や日本語指導では要録の総合所見欄に指導の内容などを書きますが、この特例では、入試対策や単なる早修を助長しないよう、要録の本体には特別の教育課程を編成したことを書かず、個別の指導計画の写しを別紙として添付することで記載に代える案です。別紙の内容を調査書で使うべきではないことも「運用の手引き」等で明確にする方向です。一方で、大学等のプログラム参加など対象活動として取り組んだ学習活動そのものは、ボランティア活動などと同じように、必要に応じて総合所見欄に書いても差し支えありません。国から高校などに対して、入試での扱いについて一定の要請をすることも検討します。 P398

対象の決め方:才能を「診断」したり「ラベル付け」したりしない

知能指数などの数値基準で才能を定義し、当てはまる子だけを特才として扱うことはしない方向です。ラベル付けによる過度な競争や、同級生から異質な存在と見られることを避けるためです。特別の教育課程の対象にすることは「特異な才能がある」と診断することではなく、本人の意向をふまえ、困難や才能の実態に合った支援を提供するのが適切だと判断すること、と位置づけられます。判断の流れは、①日常の見取りに加え、必要に応じて面談やWISC等の心理検査(必須ではない)で困りごとを整理し、②まず通常の教育課程での工夫を考えたうえで、希望する実現可能な対象活動があるか、学習上・生活上の困難が減るかなどを総合的に判断し、教育委員会と学校で調整する、というものです。対象と判断しても実施が義務になるわけではありません。 P388P399

指導計画は本人も関わって作り、クラウドで共有する

対象活動を行うときは指導計画を作ります。国は最低限入れる内容を示し、各学校が項目を追加したり様式を決めたりできるようにする案です。計画は本人・保護者の意向をふまえ、本人の関与を重視して、活動の内容だけでなく目標や、学習改善につなげる形成的な評価のプロセスも書きます。通常の学級での学習指導での支援や留意点も、必要に応じて書くことが大切とされます。計画は紙も可としつつ、学級担任・教科担任・養護教諭・スクールカウンセラーなどが見たり一緒に作業したりできるよう、電子媒体でのクラウド共有を原則とする案です。大学等の実施機関とは、保護者の同意を前提に、日時・場所・移動方法などの調整を共有します。 P395

どんな活動? どこで学ぶ?

対象活動の例は、上の学校種の内容の部分的な早修、大学教員等の支援を得た発展的な「マイ探究」、大学の科目の受講、大学・研究機関・民間等のプログラムやコンテストへの参加とその事前指導などです。実施方法は、相当教科等の時間に高校等へ移動して授業を受ける、在籍校の空き教室などでオンラインで大学や高校の講義を受ける・来校した大学教員の授業を受ける、大学・研究機関・博物館・図書館などへ移動して学ぶ、などが考えられています。夏休みなどの休業日に行うプログラムを組み合わせたものも対象にする方向です。 P391

オンラインの立ち会い・校外活動の安全・出席の扱い

在籍校でオンラインを積極的に使うことが想定されますが、小・中学生だけで高度なオンライン学習を進めるのは簡単ではないため、教員や学習指導員、連携機関のスタッフなどが立ち会って支援することもあり得ます。大学や研究機関で学ぶ場合は、危険な環境で学んだり、大学生と配慮なく同じ環境で学んだりしないよう、必要に応じた保護者の同伴も含めた安全管理と、指導者への倫理面の啓発が必要です。校外へ移動する場合は移動時間も含めて対象活動とし、全体として出席扱いが基本で、最終的には各教育委員会が判断します。相当教科等以外の時間にやむを得ず行う場合も、欠ける授業の影響を最小限にすることを前提に同様の扱いが基本です。 P393

教える側:大学・高校・研究機関・博物館・民間団体など

在籍校以外の機関(実施機関)が対象活動を行う場合は、①その分野の一定の専門性がある、②発達段階や特才の子の特性を理解し、困難を減らせる活動ができる、③在籍校と学習内容や様子を適切に連携できる(評価や卒業認定のため)、の3つを基本の要件とする案です。想定される主体は、高校等(SSH等)、大学・短大・大学院・高専、公的研究機関、博物館、一定の専門性と実績のある公益的な法人の民間団体などです。指導者は、高校なら当該教科の免許状保有者、大学なら教授・准教授・講師・助教等、博物館なら学芸員等とされ、性暴力防止を含む子どもの安心・安全の留意事項は「運用の手引き」で詳しく示す予定です。 P392P393

学校だけで抱えない:大学等による相談支援体制

才能や困難に合った活動を考えるには専門性が必要で、国内の事例もまだ少ないため、学校の知見だけで計画を作るのは難しいとされています。そこで、知見のある複数の大学等による全国対象の相談支援プラットフォームの構築や、中期的には都道府県教育委員会(総合教育センター等)への相談支援担当の設置などを検討します。相談支援は、対象とするかどうかの判断や、学校と適切な実施機関をつなぐことにも役立てます。計画作成の負担を軽くし質を高めるため、相談支援で生成AIを補助的に活用することも検討します。 P388P396

高校は当面対象外/令和10年度から先行実施・少しずつ事例を増やす

対象は当面、義務教育段階(小学校、中学校〈中等教育学校前期課程を含む〉、義務教育学校、特別支援学校の小学部・中学部)です。高校は、現行でも大学の科目等履修などの学校外学修を最大36単位まで自校の単位として認められ、次期は必履修科目の履修免除の仕組みも検討されているため、通常の教育課程で対応できると考えられ、成果を見て必要なら検討します。直ちに全ての学校に求めるのではなく、まず一定数の事例をつくり、改善しながら少しずつ増やしていく方針です。学習指導要領の全面実施を待たず、令和10年度からの先行実施期間から取り組めるようにする方向で、国が「運用の手引き」を作ります。不登校などほかの特例と重なる子のために、計画をまとめる「2階シート(仮称)」も国が示します。 P387P388P396P400

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