脳・心理・行動
記憶・睡眠・思い込み。脳の話が読めると強い

睡眠・集中・SNSと心の健康・習慣づくり。実験→結果→解釈の流れは、長文の定番の組み立てです。
脳は、約860億個と推定される神経細胞(ニューロン)が電気と化学の信号をやり取りすることで働く器官です。記憶は大きく、短い時間だけ保つ短期記憶と、長く残る長期記憶に分けて説明されます。睡眠中には、日中に得た情報が整理され定着しやすくなると考えられており、睡眠不足が集中力や判断力を下げることも広く知られています。また、脳は経験によって配線を変える性質があり、これを神経可塑性(plasticity)と呼びます。人の判断は、いつも合理的とは限りません。思い込みに引っ張られる確証バイアスや、最初に見た数字に影響される係留(アンカリング)など、認知バイアスと呼ばれる偏りが知られています。ダニエル・カーネマンが広めた「速い思考と遅い思考」という整理も、よく引き合いに出されます。一方で、「脳は10%しか使われていない」といった話は俗説です。また、心理学の一部の実験結果が再現できなかった問題もあり、研究結果は慎重に読む姿勢が求められます。入試では、こうした用語の意味に加え、「なぜそう言えるのか」という根拠の読み取りが問われます。
脳や心理の話は誰にとっても身近で、しかも研究結果を根拠に論を進めやすいため、長文の素材として重宝されます。「実験でこう分かった」「ただし一般化には注意が必要だ」という科学的な文章の型が学べる点も理由のひとつです。さらに、スマホ依存、ストレス、学習の効率、睡眠不足など現代の課題ともつながるので、自由英作文や小論文のお題にもなりやすい分野です。専門用語は多そうに見えて、実は繰り返し登場する基本語が中心なので、慣れれば得点源にできます。
長文読解:実験結果を紹介し、その解釈と限界を述べる論説文が中心です。「研究によると〜だが、〜とは限らない」という展開をつかめると、内容一致や要約の設問に強くなります。筆者が結論をどこまで言い切っているかにも注意しましょう。
リスニング:講義形式や研究者へのインタビューで出やすい話題です。睡眠と記憶、ストレスへの対処などを題材に、実験の手順と結果を順に聞き取る力が試されます。数字や順序をメモしながら聞くと安定します。
自由英作文・小論文:「スマホは集中力を奪うか」「失敗から学ぶには」など、身近な行動を題材にした意見論述が考えられます。理由と具体例を添えて書く練習に向いています。賛否を決めてから書き始めましょう。
| # | 英語 | 意味 | # | 英語 | 意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | cognition | 13 | motivation | ||
| 2 | perception | 14 | reward | ||
| 3 | stimulus | 15 | instinct | ||
| 4 | consolidate | 16 | addiction | ||
| 5 | plasticity | 17 | empathy | ||
| 6 | neuron | 18 | unconscious | ||
| 7 | bias | 19 | deprive | ||
| 8 | impulse | 20 | habit | ||
| 9 | anxiety | 21 | trait | ||
| 10 | resilience | 22 | mindset | ||
| 11 | attention | 23 | retain | ||
| 12 | distract | 24 | procrastinate |
| # | 日本語 | 英語 | # | 日本語 | 英語 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 定着させる、固める | 13 | 依存、中毒 | ||
| 2 | 注意、集中 | 14 | 保持する、覚えている | ||
| 3 | 無意識の | 15 | 神経細胞、ニューロン | ||
| 4 | 認知、知的な働き | 16 | やる気、動機づけ | ||
| 5 | 衝動 | 17 | 習慣、癖 | ||
| 6 | 本能、直感 | 18 | 刺激 | ||
| 7 | ものの考え方 | 19 | 回復力、立ち直る力 | ||
| 8 | 可塑性(変化する性質) | 20 | 共感 | ||
| 9 | 気を散らす | 21 | 先延ばしにする | ||
| 10 | 奪う(deprive A of B) | 22 | 偏り、先入観 | ||
| 11 | 知覚、受け止め方 | 23 | 報酬、ごほうび | ||
| 12 | 不安 | 24 | 特性、性質 |

必要なら形を変えよう(複数形・過去形など)。下の和訳がヒント。
英作文・スピーキングでそのまま使える表現です。このテーマについて、表現を使った英文を書こう。
・常識への疑い:「意志が強ければ誘惑に勝てる」は一見もっともだが、実は環境づくりのほうが重要だ、と常識を覆して主張を示す展開です。
・実験→結果→限界:実験の内容、得られた結果、そして「対象が限られる」といった限界の順に述べます。However のあとに、筆者の慎重な見方が出やすいです。
・問題→原因→対策:ストレスや睡眠不足などの問題を示し、脳のしくみから原因を説明して、生活習慣の改善という解決策で締める型です。
・個人差の指摘:「効果がある」と述べた後に「ただし人によって差がある」と補います。安易な一般化を避けるのが、科学的な文章の作法です。
| 論点 | 賛成側の理由 | 反対側の理由 |
|---|---|---|
| スマホは脳に悪いか | ||
| 才能は生まれか育ちか | ||
| マルチタスクは有効か |
3・4 単語24
- cognition 認知、知的な働き
- perception 知覚、受け止め方
- stimulus 刺激
- consolidate 定着させる、固める
- plasticity 可塑性(変化する性質)
- neuron 神経細胞、ニューロン
- bias 偏り、先入観
- impulse 衝動
- anxiety 不安
- resilience 回復力、立ち直る力
- attention 注意、集中
- distract 気を散らす
- motivation やる気、動機づけ
- reward 報酬、ごほうび
- instinct 本能、直感
- addiction 依存、中毒
- empathy 共感
- unconscious 無意識の
- deprive 奪う(deprive A of B)
- habit 習慣、癖
- trait 特性、性質
- mindset ものの考え方
- retain 保持する、覚えている
- procrastinate 先延ばしにする
5 穴埋め
- cognition
- reward
- retain
- empathy
- stimulus
- plasticity
- mindset
- Resilience
- perception
- unconscious
- neuron
- addiction
6 和訳
- 睡眠は、脳が新しい記憶を定着させるのを助けます。
- 恐怖は、危険を避けるのに役立つ本能です。
- 良い習慣は、簡単なものほど続けやすいです。
- 疲れていると、集中するのは難しいものです。
8 論点の例
スマホは脳に悪いか
賛成:通知や短い動画が注意を細切れにし、集中力や深く考える力を妨げるおそれがあります。寝る前の使用が睡眠の質を下げることも心配されているという主張です。
反対:使い方しだいで学びや交流の道具にもなります。影響には個人差が大きく、原因と結果が逆の可能性もあるため、「脳に悪い」と断定すべきではないという主張です。
才能は生まれか育ちか
賛成:性格や能力に遺伝の影響があることは、双子の研究などから示されています。得意・不得意には、生まれ持った差もあると考える立場です。
反対:脳は経験によって変化し、環境や練習の影響は大きいものです。生まれつきを強調しすぎると、努力や教育の意味を軽く見てしまうという主張です。
マルチタスクは有効か
賛成:簡単な作業や慣れた作業なら、同時にこなせることもあります。音楽を聴きながらのほうがはかどる人もおり、場面を選べば時間の節約になるという主張です。
反対:複雑な作業では、切り替えるたびに効率が落ちることが多くの研究で示されています。同時にこなすより、一つずつ集中するほうが良い結果になりやすいという主張です。
脳トレは効果的か
賛成:練習したゲームの成績は確かに上がるので、記憶力や処理速度の維持に役立つ可能性があります。楽しみながら頭を使う習慣がつくのも利点だという主張です。
反対:練習した課題以外の力にまで効果が広がるかは、はっきりしていません。運動や睡眠のほうが確かな効果があるとして、過大な期待を戒める主張です。
感情は理性の敵か
賛成:怒りや不安は、冷静な判断をゆがめることがあります。大事な決断ほど、いったん感情から距離を置いて考えるべきだという見方です。
反対:感情は、危険を察知したり、何が大切かを判断したりする助けにもなります。感情が働かないと決断そのものが難しくなるという研究もあり、両者は協力関係にあるという主張です。
心理実験は信用できるか
賛成:よく設計された実験は、直感に頼らずに人の行動を調べる有力な方法です。多くの知見は繰り返し確認されており、事実に基づく議論の土台になるという主張です。
反対:参加者が大学生に偏るなどの限界があり、再現できなかった結果も報告されています。一つの研究だけで結論を出すのは危険だと考える立場です。
9 英作文の採点基準(10点)
- 内容(立場が明確・問いに答えている)3点
- 理由2つが具体的で、立場を支えている 3点
- 構成(P→R→R→P、つなぎ言葉)2点
- 英語の正確さ・語数(80〜100語)2点
先生・自習のヒント
脳・心理系の動画は、実験の紹介から日常への応用へと進む型が多めです。観る前に「どんな実験が出てくるか」を1分予想し、日本語字幕で「実験→結果→限界」の流れをつかみましょう。英語字幕では however や for example を含む表現を3つメモ。実験を説明する30秒をまねたら、最後に「自分の生活でどう使うか」を英語で1〜3文書きます。
関連トーク(TED HACKS で観られます)
- 2つの言葉を話す脳は、なにがすごい?(TED-Ed・5:04)
- 話す言葉が変わると、世界の見え方も変わる?(TED・14:13)
- 「まだできない」が、人を伸ばす(TED・10:25)
- 記憶はどうつくられ、どう失われるのか(TED-Ed・4:20)
予想長文
- Willpower and Surroundings(294語)
- Memory Is Not a Recording(451語)