まずはここから:学習指導要領のキホン(最優先)
① 指導案の「背骨」は学習指導要領
英語科の指導案は、文部科学省の中学校学習指導要領(平成29年告示)・高等学校学習指導要領(平成30年告示)「外国語」の考え方に沿って書くのが大前提。研究授業では「この目標は指導要領のどこと対応していますか?」と必ず聞かれます。単元の目標を書くときは、指導要領の「英語の目標」(五つの領域別の目標)と対応づけておきましょう。
② 4技能5領域をおさえる
現行の指導要領では英語は「聞くこと」「読むこと」「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」の5領域。特に「話すこと」が[やり取り]と[発表]に分かれた点が重要です。本時の言語活動がどの領域を主に扱うのか、指導案の中で意識的に示しましょう。
③ 「言語活動を通して」がキーワード
文法や語彙の知識を教えること自体がゴールではなく、実際に英語を使う「言語活動」を通して資質・能力を育てるのが指導要領の立場。「説明→練習→活動」で終わらず、「目的・場面・状況」のあるコミュニケーション活動を本時の中心に据えると、指導案の説得力が一気に上がります。
④ 授業は英語で行うことが基本
中学・高校とも「授業は英語で行うことを基本とする」とされています。指導案では、教師の発話例(Teacher Talk)を英語で書いておくと具体性が出ます。ただし生徒の実態に応じて日本語での補助も認められているので、「文法説明は日本語で端的に行う」など、使い分けの方針を「指導観」に書いておくと丁寧です。
⑤ 指導と評価の一体化
「教えたことを、その時間のどこで・どうやって見取るか」をセットで書くのが現在のスタンダード。展開表の「評価」欄には、観点(知技/思判表/態度)+方法(行動観察・ワークシート・発表・振り返りシート等)を書きます。1時間にすべての観点を詰め込む必要はありません。「本時は思判表を重点的に見る」でOK。
目標の書き方(CAN-DO形式)
⑥ 目標は「〜することができる」で書く
本時の目標はCAN-DO形式(〜することができる)が基本。生徒を主語にして、行動が観察できる形で書きます。
| △ 弱い例 | ◎ 良い例 |
|---|---|
| 比較級を理解させる。 | 比較級を用いて、身近なものを比べながら自分の好みを伝え合うことができる。 |
| 本文の内容を読み取らせる。 | 本文から筆者の主張と理由を読み取り、自分の意見を一文で書くことができる。 |
⑦ 「目的・場面・状況」を入れる
言語活動には誰に・何のために・どんな状況でを設定しましょう。「ALTの先生に日本の行事をおすすめする」「留学生に学校を案内する」「SNSで海外の友達に返信する」など。この設定があるだけで、単なるパターンプラクティスが本物のコミュニケーション活動に変わります。
⑧ 単元目標と本時目標をつなげる
一般案では「単元の目標 → 単元の指導計画 → 本時の目標」が一本の線でつながっていることが命。本時が単元の何時間目で、前時までに何ができていて、本時で何を積み上げ、次時に何へつながるのか。「単元の中の本時の位置づけ」を明確にすると、参観者からの評価がぐっと上がります。
評価規準(3観点)のテンプレ
⑨ 3観点の書き分けテンプレート
| 観点 | 書き出しの型(例) |
|---|---|
| 知識・技能 | 「〜の特徴やきまりを理解している」「〜を用いて…する技能を身に付けている」 |
| 思考・判断・表現 | 「(目的・場面・状況)に応じて、〜について、事実や自分の考え・気持ちなどを伝え合っている/整理して書いている」 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 「(目的・場面・状況)に応じて、〜しようとしている」「見通しをもって粘り強く取り組み、学習を振り返ろうとしている」 |
「思判表」と「態度」は文末だけ変えた同じ文になりがちですが、態度には粘り強さ・自己調整(振り返り・工夫)の要素を入れると差別化できます。
⑩ 評価方法もセットで書く
評価規準には評価方法を添えます。定番は:行動観察/ワークシート・ノート分析/発表(パフォーマンス)/振り返りシート/小テスト。パフォーマンス評価をするなら、簡単なルーブリック(A:目標を超える/B:おおむね満足/C:努力を要する+Cへの手立て)を載せると本格的です。
本時の展開(導入・展開・まとめ)のコツ
⑪ 50分の黄金比
| 段階 | 目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 導入 | 5〜10分 | あいさつ・Small Talk・帯活動・前時の復習・本時のめあて提示 |
| 展開 | 30〜35分 | 新出事項との出合い→気づき→練習→言語活動(メインディッシュ) |
| まとめ | 5〜10分 | 共有・フィードバック・振り返り(本時のめあてに戻る)・次時予告 |
研究授業で一番見られるのは「言語活動に何分使ったか」。説明が長くなりすぎないよう、展開表の時間配分でチェックしましょう。
⑫ 導入の鉄板ネタ
・Small Talk:教師の身近な話題を新出表現をさりげなく混ぜて話す→生徒に問いかけ
・picture describing:教科書の写真を見せて Who? Where? What? と英語でやり取り
・帯活動:1分チャット、ビンゴ、単語しりとり、音読タイムなど毎回のルーティン
・クイズ・ランキング:比較級なら「日本で一番○○なもの当てクイズ」など、ターゲット文法が自然に出る仕掛けに
⑬ 「めあて」と「振り返り」を対応させる
導入で示す本時のめあて(例:「比べる言い方を使って、おすすめを伝え合おう」)と、まとめの振り返り(「今日、比べる言い方を使って伝えられたか」)を対応させると、1時間の構造が締まります。振り返りは「できた/できない」だけでなく「どんな表現が使えたか」「次はどうしたいか」を書かせると態度の評価資料にもなります。
⑭ 展開表の「留意点」欄で差をつける
留意点欄には「机間指導を行う」だけでなく、つまずく生徒への具体的な手立てを書きます。例:「表現が思いつかない生徒には黒板の Useful Expressions を参照させる」「早く終わったペアには追加の質問カードを渡す」。個別最適な学びへの配慮が伝わり、指導案の質が一段上がります。
言語活動アイデア集
⑮ すぐ使える言語活動(やり取り系)
・インタビュー活動:Find someone who...形式でクラスを歩いて質問
・情報ギャップ:AとBで違う情報カードを持ち、質問し合って完成させる
・ディスカッション・ミニディベート(高校):Which is better, A or B? を理由つきで
・1分間チャット→30秒→15秒:同じ話題で繰り返すと流暢さが伸びる(4/3/2活動)
⑯ すぐ使える言語活動(発表・書く系)
・Show & Tell/My Favorite紹介:実物や写真を見せてスピーチ
・リテリング:教科書本文をキーワードやイラストだけを頼りに自分の言葉で再生
・ポスター・スライド作成→発表:ICTと相性抜群
・ライティングのプロセス化:マッピング→下書き→ペアで読み合い→推敲、と段階を踏む
⑰ ICT活用(1人1台端末)の定番
・録音提出:音読・スピーチを録音して提出(何度も撮り直せるので苦手な子も安心)
・共同編集:スライドやドキュメントをグループで同時編集
・アンケート機能で導入クイズ→即グラフ化して英語で結果を語る
・デジタルポートフォリオ:CAN-DOの振り返りを蓄積
指導案には「何のためにICTを使うのか」(試行回数を増やす・共有を速くする等)を一言添えると◎。
教材観・生徒観・指導観の書き方
⑱ 三つの「観」は三段ロケット
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 教材観 | この単元・題材の価値。扱う言語材料と題材内容が生徒にとってなぜ学ぶ意味があるか。 |
| 生徒観 | 生徒の実態(既習事項・意欲・得意不得意)。※個人が特定される書き方はNG。肯定的な面と課題をバランスよく。 |
| 指導観 | 教材観×生徒観を受けて「だから本単元ではこう指導する」。三つの中で一番大事。手立てを具体的に。 |
「教材はこういう価値がある→生徒はこういう実態→だからこう指導する」と論理がつながっているかが読まれるポイントです。
⑲ 板書計画は「授業の設計図」
板書計画には、日付・めあて・新出表現(ターゲットセンテンス)・Useful Expressions・活動の手順・まとめの位置をレイアウトで示します。1時間終わったときに黒板を見れば授業の流れが分かるのが理想。ICTスクリーンと黒板の役割分担(残すものは黒板、流すものはスクリーン)も書けると現代的です。
英語版指導案で使える表現集
⑳ 見出し・定番用語の英訳
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 学習指導案 | Lesson Plan / Teaching Plan |
| 単元名 | Unit / Topic |
| 本時の目標 | Aims of This Lesson / Objectives |
| 評価規準 | Evaluation Criteria / Assessment Criteria |
| 知識・技能 | Knowledge and Skills |
| 思考・判断・表現 | Thinking, Judgment and Expression |
| 主体的に学習に取り組む態度 | Attitude toward Learning Independently |
| 本時の展開 | Teaching Procedure |
| 導入/展開/まとめ | Introduction / Development (Main Activities) / Consolidation |
| 指導上の留意点 | Teacher's Support / Points to Consider |
| 机間指導 | monitoring (walking around and helping students) |
| 音読 | reading aloud |
| ペアで/グループで | in pairs / in groups |
㉑ Procedure欄で使える動詞・言い回し
・Greet the students. / Have a small talk about ...
・Review the previous lesson. / Introduce the target sentence.
・Have students practice ... in pairs. / Let students share their ideas.
・Monitor and give feedback. / Elicit answers from students.
・Students will be able to ...(目標の定番) / Make sure that every student ...
・Wrap up the lesson and have students reflect on today's goal.
研究授業・教育実習 直前チェック
㉒ 提出前チェックリスト10
□ 本時の目標はCAN-DO形式で、1時間で達成可能な大きさか
□ 目標・展開・評価が一直線につながっているか(目標にない活動、評価されない目標がないか)
□ 言語活動に「目的・場面・状況」があるか
□ 時間配分の合計が授業時間ぴったりか(意外と多いミス!)
□ 言語活動の時間が十分確保されているか(説明ばかりになっていないか)
□ つまずく生徒への手立てが書いてあるか
□ 評価の観点と方法が具体的か(「態度:観察」だけになっていないか)
□ 学校指定の書式・用語(「ねらい」か「目標」か等)に合わせたか
□ 誤字脱字・英語のスペルミスはないか(Teacher Talkの英文も!)
□ 単元の中の本時の位置づけが分かるか
㉓ よくあるNG集
・「〜させる」のオンパレード(使役表現より生徒主体の記述に)
・活動名だけで中身が不明(「ペアワーク」→誰が何をどの英語でやるのか)
・評価欄が全部「観察」/全観点を毎時間評価しようとする
・導入のゲームが盛り上がるだけで本時の目標とつながっていない
・板書計画がない、またはスライドを流すだけで何も残らない
・生徒観に個人が特定できるネガティブ情報を書く(絶対NG)
㉔ 略案と一般案(細案)の使い分け
| 略案 | 一般案(細案) | |
|---|---|---|
| 分量 | A4で1〜2枚 | A4で4〜8枚程度 |
| 中身 | 本時の目標+展開表+評価が中心 | 単元の目標・評価規準・教材観・生徒観・指導観・単元計画・本時案・板書計画まで |
| 場面 | 日常の参観、校内の相互参観など | 研究授業・教育実習の査定授業・公開授業など |
迷ったら、依頼元(指導教員・研究主任)に「略案でよいか」を必ず確認しましょう。学校によって呼び方(細案・正案・本案)や書式が違います。
㉕ もっと知りたいときは(一次情報)
・文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編」
・文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 外国語編・英語編」
・国立教育政策研究所「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料(外国語)」
・各都道府県の教育センターが公開している指導案データベース
いずれも検索すればPDFで読めます。迷ったら必ず一次情報(文科省・国研)にあたるのが鉄則です。